「失われた30年」の処方箋は変革人材 経産省DSS Ver2.0「ビジネスアーキテクト」再定義 経済産業省調査官・山本光彦 × LTS CSO・山本政樹」セミナーレポートのサムネイル
プロセス変革・業務改革

「失われた30年」の処方箋は変革人材 経産省DSS Ver2.0「ビジネスアーキテクト」再定義 経済産業省調査官・山本光彦 × LTS CSO・山本政樹」セミナーレポート

AIやデジタル技術の急速な進化により、企業を取り巻く競争環境は激変しています。一方、「失われたXX年」と呼ばれる長期停滞が続き、少なくない企業が変革とDXの機会を逸してきました。経済産業省は4月に「デジタルスキル標準 Ver2.0」(以下DSS Ver2.0)を公表し、企業変革の中核を担う「ビジネスアーキテクト」の人材像を再定義しました。
こうした中、LTSは 経済産業省デジタル人材政策室調査官の山本光彦氏を招き、LTS 常務執行役員CSO経営企画本部長・山本政樹とのメディア向けセミナー「失われた30年の処方箋~改善から変革へ~『デジタルスキル標準」(DSS)を政策と実務からひも解く』」を開催しました。AI時代の企業競争力を左右する新たな人材像として注目が集まるビジネスアーキテクト。なぜ必要とされるのか―セミナーの模様をレポートします。 

山本 光彦(経済産業省商務情報政策局情報技術利用促進課デジタル人材政策室調査官)

経済産業省商務情報政策局情報技術利用促進課デジタル人材政策室調査官。大手飲料メーカーにて、デジタル戦略の立案・推進に従事。2025年経済産業省に入省。入省後はデジタル人材育成政策に携わり、デジタル人材育成の指針となるデジタルスキル標準の企画・推進を担当。(2026年2月時点)

山本 政樹(LTS 常務執行役員 CSO 経営企画本部長)

アクセンチュア、フリーコンサルタントを経てLTSに入社。システム開発案件におけるプロセス設計や現場展開、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)の導入など、ビジネスプロセス変革案件を中心に手掛け、現在はビジネスプロセスマネジメント及びビジネスアナリシスの手法や人材育成に関する啓発を中心に活動している。(2025年4月時点)  ⇒プロフィールの詳細はこちら

企業変革には不可欠な人材


「不確実性が高まり、経営環境も大きく変化している。変革に正解はなく、仮説検証型の問題解決、試行を重ねて軌道修正するアプローチに代わってきている。ウォーターフォール的な方法だけでは変革実現は難しい

山本光彦氏

山本氏はDSS Ver2.0の背景にあるビジネス環境の変化をこう説明しました。続けて、AI、生成AIの進化により起こる今後の変化として、「人とシステムとの関係が主従から対等へ」「働き方は事業の運営から成長・改革へ」の2点を挙げました。

こうした認識の下、公表されたDSS Ver2.0の特徴の一つは、旧DSSのビジネスアーキテクトを「ビジネスアーキテクト」「ビジネスアナリスト」「プロダクトマネジャー」の3種類のロール(役割)に再分類した点です。旧DSSでは、ビジネスアーキテクトに多くの職能が押し込まれた“スーパーマン的”な人材となっているためです。再分類することで、育成体系を効率化し、将来の国家試験化もできるようになります。

DXをテクノロジー視点だけではなく、ビジネス視点からも担う「ビジネスアーキテクト/変革人材」が再定義されたことで、ビジネスアーキテクトは単なる人材論ではなく、企業の変革スピードやDX投資の成果を左右する経営資源として位置づけられたのです。

山本氏は「ビジネスアーキテクトについて企業の関心は高く、認知もされてきているが、求められるスキルが幅広く企業がカスタマイズに苦労している。どういう人材を、どう育てればよいのかといった問い合わせがある。スーパーマン的な人材像から、実践的な人材像に変えたいという課題認識があった」と説明。「ビジネスアーキテクトのロールを3つに再分類することが、DSS Ver2.0の大きな意図。海外ではすでにある人材類型であり、日本でも育成に取り組みやすくしていきたい。(ITパスポートのような)国家試験はまだ先だが、今後DSSにどう反映させるか検討する」と述べました。

最後に山本氏は「DXの本質はデジタル化だけではなく変革だ。そのためにビジネスアーキテクトが必要不可欠になる」と強調しました。

変革人材不在による“失われたXX年”

続いて、LTSの山本政樹が「経産省デジタルスキル標準改訂の現場から」と題してDSS改訂作業の詳細を説明しました。山本政樹は経済産業省「Society5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会」の「ビジネスアーキテクチャ人材の育成に関するタスクフォース」主査を務めています。

山本政樹

山本政樹は「DSS Ver2.0でビジネスアーキテクトがビジネス寄りの人材に定義されたことが大きな進化」とした上で、その役割を「経営から示される戦略や業務の現場で発生する問題の解決策を、具体的なサービスやビジネスプロセスおよびデジタルプロダクトの姿に落とし込み、変革の取り組みの目的と実現したい姿を明確にすること」 「変革に関わるすべての関係者のコミュニケーションハブとなり、成果創出まで取り組みを推進する」と説明しました。

また、ビジネスアーキテクトは「企業からも圧倒的に足りないとの声が上がっている。潜在的なニーズがあり熱量が高まっていると感じている」との感触を示しました。

山本政樹によると、欧米など世界的にはビジネスアーキテクトという役割に20~30年のノウハウの蓄積があり、企業を超えたコミュニティが多く存在しています。また、イギリス労働年金省など官公庁でも活躍、特にコミュニケーション能力が求められるため女性の進出が目立つといいます。

一方、日本では「ビジネス変革を担う人材の認知が進んでこなかった。そこが日本の弱い点」と指摘。私見と断った上で、“失われたXX年”の遠因について、バブル崩壊による投資余力不足、改善文化の短所である強い現場という神話、コミュニケーション能力を専門性として認知しない組織風土の3点を挙げました=下スライド=。

また、「日本企業が得意とする“改善”は素晴らしいものであるものの、現代のようなビジネス環境の非連続的変化に対応するには限界がある」とも指摘しました。

最後に山本政樹は「日本でも企業変革、ビジネスアーキテクトへの熱量はそれなりにあると感じている。育成とスキルアップの活動も進んでいる。ただ、どう育てるかの共通認識はまだない。必要性と価値を経営層や協働するエンジニアにも認めてもらい、アイデンティティを確立する必要がある。育成・学習体系をつくり出していきたい。DSS Ver2.0をきっかけに2026年を日本のビジネスアーキテクト元年にしたい」と結びました。

質疑応答 社内だけで育成できるか

セミナーでは会場からの質問もありました。特にビジネスアーキテクトの育成については先例がないだけに「個社で育成することができるか。名乗ったところで、経験値が必要と思うのだが、いまの終身雇用の中で、意味のある人材が育つか疑問がある」との意見がありました。

山本政樹は「ビジネスアーキテクトは、取り組むべき課題を実践しないと育たない。組織の中でも育成は一定程度可能だろう。だが、誰が知見を教えるのか、日本にはコーチがいない。座学には限界がある」ことが課題だとした上で、「海外は人材流動性が高く、ビジネスアーキテクトのコミュニティがコーチングや知見共有に機能しており、コミュニティが大切だと考えている。お互いの学びあいの意識、情報交換の場、つながりをどう育てるか問われる。また、海外ではコミュニティが一つの転職市場になっており、人材市場にどうアプローチするかもテーマになる」と述べました。

山本氏も「本当に変革しようと思っている経営層は徐々に増えているが、まだまだ少ないとは思う。多くの経営者は『未来を既存のビジネスの延長線』で考えがちだが、AIの進化など環境変化は目覚ましいものがあり、半年後も見通せない。いま企業変革に着手しなければ大きな後れを取る。変革とそれを担うビジネスアーキテクトの重要性を打ち出し、いまこそ変革しないとならないというメッセージを出していきたい」と述べました。

また、「ビジネスアーキテクトの必要性は理解したが、いたとしても今の企業の中でどう使うか、使い道がないという現状があるのではないか」との質問もありました。これに対し山本氏は「その点は、課題として強く認識している。第一歩として経営者に変革の必要性を理解してもらうことが大切だ。その上でビジネスアーキテクトが担う役割を理解してもらうよう努めたいと考えている」と答えました。


ビジネスアーキテクトは企業変革と成長に欠かせない人材だと、LTSは考えています。すでに大手企業各社の変革担当者を集めたビジネスアーキテクト勉強会の開催や、各社のビジネスアーキテクト育成を支援しています。引き続き関係機関とも連携し政策と実務の橋渡し、認知の拡大と育成、普及に取り組んでまいりたいと考えています。

プレスリリース:「デジタルスキル標準 Ver2.0」に対応、LTS「ビジネスアーキテクチャ人材育成サービス」を提供開始
https://lt-s.jp/news/pressrelease/2026-04-20
プレスリリース:国内大手9社が企業変革に向けて議論、第2回ビジネスアーキテクト勉強会を開催しました(LTS主催)~石原産業、オムロングループ(2社)、関西エアポート、シスメックス、SCREENビジネスエキスパート、住友ゴム工業、第一稀元素化学工業、MonotaROが参加~
https://lt-s.jp/news/pressrelease/2026-4-10
プレスリリース:国内大手 7 社のデジタル変革人材リーダーが議論、ビジネスアーキテクト勉強会を開催しました(LTS 主催)~アドバンテスト・大林組・オリックス銀行・中外製薬・東京ガス・トヨタ自動車・リコーが参加~
https://lt-s.jp/news/pressrelease/2026-01-09
プレスリリース:LTS、静岡県職員向け「変革推進人材」育成 DX研修を提供
https://lt-s.jp/news/pressrelease/2026-03-31
・プレスリリース:LTS、東京ガス株式会社にビジネスアナリスト人材の育成および要件定義の伴走支援を実施
https://lt-s.jp/news/pressrelease/2026-03-04