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地方大学の技術を社会へつなぐ リスク最小・共感最大の「緩やかなマッチング」 NEDO「大学発スタートアップにおける経営人材確保支援事業」PALETTE by LTS

都市圏と地方では大学発スタートアップの事業化に約1.5倍の格差――。地方大学の研究成果には、ビジネスにつながる可能性があります。しかし、せっかくシーズ(種)があっても、都市圏とは大きな壁があるのが現状です。これを突破するカギは、完成された経営者探しではなく、技術への「共感」から始まる「緩やかな関係」でした。LTSが受託した国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「大学発スタートアップにおける経営人材確保支援事業(MPM)」(愛称、PALETTE by LTS)を担当する尾上正幸(社会インフラ事業部/ソーシャルイノベーション推進室)が、研究者の孤独を解消し、ビジネス人材の情熱を地域へつなぐ地方発スタートアップ創出の新機軸を語ります。

ホワイトペーパー:地方大学発スタートアップにおける 経営人材確保支援モデル~「共感」と「緩やかな関係」が拓く、地方モデルの形~
プレスリリース:LTS、「大学発スタートアップにおける経営人材確保支援事業(MPM)加速枠」に採択

地方大学が抱える「1.5倍の事業化格差」という現実

―――都市圏と地方でのスタートアップ創出効率には「1.5倍の事業化格差」があるとのことです。高額報酬・フルコミット前提という都市型モデルが地方では機能しないのはなぜでしょうか。

私たちは「都市は資金で進み、地方は共感で進む」と捉えています。都市型モデルは、高い報酬でリスクを引き受けてもらう仕組みです。ところが地方のスタートアップは事業化のもっと手前の段階にあり、高い報酬を払う体力がまだありません。経営人材の側も、フルコミットとなると仕事を辞めなければならず、生活への不安が先に立ってしまいます。お金でリスクを埋め合わせるという前提そのものが、地方では成り立ちません。だからこそ共感を入口に、副業・兼業の緩やかな契約から始めて、事業の成長に合わせて少しずつ関わりを深めていく形が地方には合っていると考えています。

キーワードは「お見合い」と「友人期間」

―――PALETTE by LTSは、いきなり契約を結ぶのではなく、秘密保持契約(NDA)のみの「緩やかな関係」から始める「段階的スライド構造」が特徴ですね。いきなり「結婚」ではなく、まずは「友人(壁打ち・メンタリング)」から始めることのメリットは。

いきなり結婚のような共同創業を求めると、そもそもお見合いの席に着ける人がほとんどいなくなってしまいます。友人から始める一番のメリットは、経営人材が今の仕事を辞めずに、生活の不安なく一歩を踏み出せること。壁打ちを重ねる中で、研究者との相性や事業の手応えを確かめてから、次の関わり方を決められます。研究者側にも利点があって、NDAがあるからこそ技術の中身を安心して見せられ、壁打ちの質が上がる。お互いをよく知ってから深い契約に進むので、ミスマッチが減り、結果として本気の結婚にたどり着く確率が高まります

経営人材の再定義「あなたは『CXO』である必要はない」

―――経営人材には、完成されたCXOだけでなく、会社員や越境ワーカー、地域貢献人材などを想定していますね。

はい、その通りです。多様な「共感」を持つ人々が主役になれるモデルです。ゼロから事業を育てる段階で効くのは、肩書よりも、研究への好奇心と共感力、先が見えなくても自分で動ける力、研究者に寄り添う姿勢です。ですので、会社員の副業、Uターンで地域に貢献したい方、士業やエンジニア、プロボノの方まで、誰もが入口に立てる設計にしました。興味深いのは、共感を入口にしても質は下がらないことです。実際、2024年度に集まった方のうち、アンケート回答者の半数は起業経験者でした。共感で人を集めることと、質の高い人が集まることは、両立するのです。

高知工科大学・林教授が感じた「孤立からの脱却」

林先生は「学外の経営人材と出会うこと自体が極めて困難でした。特に四国で探すのは難しく、どう動けばいいかわからない状態が続いていました」と語っています。この言葉には、壁が2つ隠れています。「出会えない」と「動き方がわからない」です。地方では都市と違い、出会いはイベントや人脈から自然には生まれません。私たちは出会いを偶然に任せず、意図的に設計しました。全国から紹介を中心に約100名の人材プールをつくり、事務局が研究内容と人柄の相性まで見て候補者を選び、先生のもとへお連れしました。「探して選ぶ」仕事をまるごと事務局が引き受けたのです。先生は研究を続けながら、会うかどうかを判断するだけでいいわけです。四国という地理の壁は、全国プールと仲人役で無効にできました。

「翻訳機」としての介在 事務局は言葉と文化をつなぐ

―――アカデミアの「技術言語」とビジネスの「市場言語」は双方に分かりにくいとのことです。これを埋める事務局の「翻訳機能」など、第三者が介在するメリットは。

例えるなら、言葉も文化も違う二人の間に立つ、通訳兼仲人です。メリットは3つ。第一に、技術の価値を市場の言葉に、市場の要求を研究の言葉に、その場で翻訳して誤解を防げること。第二に、報酬や役割など当事者では切り出しにくい話を、中立な立場から議題にできること。第三者だから角が立ちません。第三に、入口で目的と期待値をそろえられること。研究と事業ではスピード感が違うので、このズレが後のすれ違いの最大原因です。私たちの最終目標は、二人が共通言語を身につけ、翻訳者がいらなくなることだと思っています。


「PALETTE by LTS」は2026年度、7月から事業を開始しました。本事業の趣旨に賛同いただき、経営人材候補として参加いただける人材を募集しています。詳細は「PALETTE by LTS」のウェブサイトへ。