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プロセス変革・業務改革

「ビジネスアナリストを拡張する」「コラボと継続的改善を促進する」ために~2023 BAアワード LTSの2人が受賞しました~

優れたビジネスアナリシス(BA)活動を表彰する「2023 BAアワード」で、いずれもLTSビジネスアナリストの大井悠さんが特別賞を、坂口沙織さんが団体賞を受賞しました。大井さんはビジネスアナリスト・コミュニティを繋ぎBAの裾野を拡大したこと、坂口さんはコロナ禍で社内プロジェクト管理システムを短期開発したことが評価されました。2月の「2023 BAアワード& IIBA日本支部フォーラム」での表彰の様子を交えながら2人の活動を紹介します。

IIBA(International Institute of Business Analysis)は国際的、中立的にビジネスアナリストの啓発活動を行う非営利団体です。ビジネスアナリシスを「ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズにチェンジを引き起こすことを可能にする専門活動である」としています。https://japan.iiba.org/about-ba

大井 悠(LTS ビジネスアナリスト/マネージャー)

ビジネスアナリシス領域に強みを持ち、多数の業務プロセスに関わるプロジェクトに従事。自社の業務変革の企画・遂行にも従事している。(2021年6月時点)  ⇒プロフィールの詳細はこちら

坂口 沙織(LTS コンサルタント)

基幹システム導入PJを中心に、IT導入PJにおけるユーザー側タスクの支援に一貫して携わるビジネスアナリスト。構想策定から導入後の運用安定化支援まで、システム導入のライフサイクル全てに関わる。Scrum Alliance認定スクラムマスター(CSM)。(2021年6月時点)

大井悠「BA CONNECT活動報告」

授賞理由:BAコミュニティの間を繋ぐことで BAの裾野を拡大し、各業界の活動事例を相互シェアし各社の課題解決を行っている。

今回受賞に至った「BA CONNECT」は、複数のBAコミュニティをつなぐ交流の場として2年前から開催しています。私はBAコミュニティの一つ「ビジネスアナリストをはじめよう」を運営しており、コミュニティ運営者という立場で2023年開催のBA CONNECTの運営に携わりました。

可能性とやりがいの一方で

DXの文脈はもちろん、技術や価値観が多様化する社会において、異なる専門性をつなぐビジネスアナリストという仕事はこれまで以上に重要性が高まる仕事であり、可能性とやりがいを感じています。一方でキャリアとしての認知度は依然として低く、「ビジネスアナリストです」と自己紹介すると「なんですかそれ?」という反応が多いのも実状です。仕事の専門性が認知されていないことで、従事されている方が専門性を高める機会を得にくいことに危機感を感じています。

「ビジネスアナリストをはじめよう」設立のきっかけは、BAを紹介するイベントを開催したことでした。反響を多くいただき、想像よりビジネスアナリストのキャリアに関心があることが分かりました。そこで、専門性を持った人が集まることで学び合う、キャリアを高め合うことができるのではないかと考えました。

ロールを再認識、再記述する

BA CONNECTはコミュニティが集まる、年1回のオンラインイベントです。私が運営しているコミュニティではBAのキャリアをテーマとしていますが、他のコミュニティでは自己研鑽や交流など別の活動テーマを掲げており、イベントでは普段交わらないメンバー同士が出会います。つながることが目的なので、堅い場ではなく各コミュニティ紹介、事例紹介、フリートークといった交流をメインとしています。

BA CONNECTで得られた学びは2つあります。一つは、BAというキーワードの下、幅広い交流ができたこと。学生から海外の人、BAを名乗っていない人までバックグラウンドが違う人が集まることで、新たな知識や視点を得られ、仕事の幅が広がりました。

二つ目、特に大きかったのは、BAというロールを再認識、再記述する場になったことです。BAと名乗る人は少数でコンサルタント、情報システムメンバーと自認する人もいます。そうするとBAとしての自己認識の形成が二の次になります。しかし、BAとして話をすることで自身の考えるBA像が拡張する、世界が広がる感覚が得られました。一言でBAといってもいろいろな働き方をしている人がいます。きっと私以外の参加者の方もBAとしての自己認知を高め、BA像を広げる機会になったのではないでしょうか。

BA CONNECT では24年の参加者、主催者を募集しています。

坂口沙織「プロジェクトにおけるBA適用」

授賞理由:コロナ禍で出社が難しい状況下で早急にデジタル化を進める必要があったため、リモート×アジャイル×ローコードというキーワードで短期間開発・導入を行った。

LTSはビジネス・プロセス・マネジメントに強みを持っています。ですから、2016年に入社した私にとっても、BAは身近な存在としてありました。また2018年、お客様の基幹システム刷新プロジェクトの終盤にアサインされた時、プロジェクトをより良く進める手法として、アジャイル開発に出会いました。

受賞した社内システム「Mio」構築に声をかけられたのは2021年のこと。私が入社した頃、約100名ほどだったLTSの社員数は、当時400~500名に成長していました。社員数の拡大に伴い案件数も増大し、当初Excelベースで行っていたお客様向けのプロジェクト活動にまつわる各種の手続きの実施状況を管理することが困難になっていました。また、当時はコロナ真っ只中。緊急事態宣言下で出社も困難な中でしたがこの基盤を整備することが急務になっており、なんとか取り組みを進める必要がありました。

タスクの背景にある考えを深掘りする

プロジェクトは、ローコード開発ツールであるOutSystemsを用いての自社開発であり、開発手法としてはアジャイル開発の代表的フレームワークであるスクラムを採用しました。プロジェクトメンバーは東京と静岡に分かれていて、完全リモートで進めました。「BABOK®ガイド アジャイル拡張版」を参考に活動を振り返ってみると、成功の要因となったのは、「アジャイル・ビジネスアナリシスのための7つの原則」のうち、特に「例を使って真実を得る」「コラボレーションと継続的改善を促進する」の2点を効果的に行うことができたからだと考えています。

「例を使って―」に関しては、オンラインホワイトボードツール「Miro」を使いデータモデル、業務フローなど実現イメージを共有し、ソリューション案に対する合意形成を迅速に実施しました。また、ドキュメント作成負荷も最小限にすることができました。スプリントレビューでは、できたところから確認し、運用での懸念点を洗い出すことで、例外的な処理パターンを早期に発見することができました。

スプリント アジャイル開発のフレームワーク、スクラムチームが一定の作業を行う工程の反復単位、短く区切られた期間。スプリントレビューは、スプリントの完了時に成果を発表し、フィードバックを得ること。

「コラボレーション―」では、スプリントごとに振り返り、アジャイル勉強会の開催、タスクの背景にある考えなどを話し合い、経験を共有することでメンバーの知識を強化できました。機能要求の背景にある業務課題や想定利用シーンまでを共有することで、開発チーム側からも提案を受けることができました。

崖を乗り越えるカギになるのは

こちらは有名なイラストですね。日々、ユーザー側の支援に取り組む中で、顧客に必要なものにたどり着くことは本当に難しいと感じています。大きな理由は「作ってもらう側と作る側の間には崖がある」こと。ビジネスアナリストとアジャイルが、この崖を乗り越えるカギになると感じています。


ライター

Tetsu(LTS マーケティング&セールス部 マネージャー)

新聞記者、月刊誌編集者を経て2024年1月にLTS入社。北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニットを修了し、同大でサイエンス・ライティング講師を経験。著書、共著、編著に「頭脳対決! 棋士vs.コンピュータ」(新潮文庫)など。SF好き。お勧めは「星を継ぐもの」「宇宙の戦士」「ハーモニー」など。(2024年1月時点)