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オウンドメディア継続の秘訣 実際やってみて分かったこと

LTSグループのオウンドメディア「CLOVER Light」は2024年6月で運営3周年を迎えました。
運営に協力頂いた多くの皆さま、ありがとうございます。この3年で記事は倍増、メディアに出て頂いた人のつながりも順調に拡大しています。そして最近は「どうやって運営しているんですか?」といった質問も受けるので、運営継続の背景をまとめてみました。

継続のポイント、3つ

先に、メディア運営継続に必要だったことを3つ挙げておきます。これからオウンドメディアを立ち上げる!という方はここだけでも目を通してみてほしいです。

無理をしない、制限やノルマを設けないこと

(我々が運営しているのがBtoBのオウンドメディアであり「集客=即リード・売り上げではない」ことも背景にはありますが)毎週掲載・記事は内製・学びのある内容、の3つをルールとして運営しつつ、毎週掲載はできないこともある、とある意味開き直って運営をしていました。企業メディアのコンテンツは一般的なメディアと違って「ストック資産」なので、ストックが増えていればタイムリーさはさほど重要ではないからです。

変化に気付き意見を柔軟に受け入れること

こちらも一般メディアとの違いで、企業メディアはそもそも目的の多義性が高いという性質があります。「こういう記事以外はNG」という判断はせず、あえて入り口を広くして「こういうネタでもいいですか?」「これも記事になるのでは」といった意見を広めに受け取り続けることで、社内外の変化に気付き変化を受け入れることができた、と思います。

「いい会社」であること

これ、実は必須条件ではないかと思っています。企業のオウンドメディアを継続するのに必須のことは「社内の理解と協力があること」で、その前提として「協力し合える社員のいる企業であること」があります。他の企業のマーケ・広報担当者と話すと「社員の協力を得ることが難しい」という課題を聞くことがありましたが、LTSではその点で困ったことがなかったので、実は「いい関係性のある会社であること」が重要だと再認識しました。


上記「継続のポイント」の背景として「どういう運営をしてきたか」を以下にまとめています。

LTSグループのオウンドメディア「CLOVER Light」運営方針

3年前の2021年、オウンドメディア開設にあたって、いくつか参考に”オウンドメディア本”を読んでみました。そこで多く語られていたことは「継続して運営するのが難しい」ということ。メディア運営は業務の一環として行われるものの、本気でやるなら数多くの業務の一部…という感覚ではやりきれないのかもしれません。

ですので、我々の運営方針は「無理しないで続けること」としました。

たまに更新が止まってもいい、企画案が出なければ編集会議をスキップすることもある。急にたくさんの記事を載せることもある、、それでも「止めない」こと、そして業務でありつつも「楽しく続ける」こと。

継続していたから得られたものがある。…これは最後に書きたいと思います。

コンテンツは資産、ノウハウも資産

運営体制は基本的に内製です。2023年にリニューアルした際のサイト再構築とデザイン以外は、LTSグループの社員が企画、取材、記事制作をして、外注無しで運営しています。内製に強いこだわりがある訳ではないのですが、業務の中でのメディア運営は楽しい時間でもあるため、外注するなら別業務を切り出すだろうと思います。これを外注するなんてもったいない。

また「コンテンツは資産」という言葉があります。一度書いた・作ったコンテンツは、資産として限り残り続けて価値を生む、という考え方です。Webなので場所も取りませんし、多種・多量に作っておいても損はありません。

と同時に「ノウハウも資産」だと考えています。サイトの方針検討、今載せるべきテーマの選定、記事の企画~編集、掲載やアイキャッチの制作まで、ノウハウを内部に残すほうが、より資産として蓄積されます。ノウハウという資産を大事に育てていくためにも、多くの社員に記事制作のプロセスを体験してもらう方がよいと考えました。

記事のテーマに制限は設けない

「自社のオウンドメディアとしてCLOVER Lightが社員が認知されるには最低でも1年はかかるだろう」と、当初は考えていました。
LTSのようなIT/コンサル業では社員はお客様・プロジェクト単位で仕事をするため、自社への帰属意識があったとしても、自社の動向をしっかり追い続けるには限界があります。業務上見ることが必須のコンテンツでもないため、自社内でも認知が拡大するには時間がかかると思ってましたし、さほど急ぐつもりもありませんでした。

ですが、リモートワーク主体だった2021年という背景もあったかもしれません、半年くらいで「こんな記事を載せたい」という声が社内から出てくるようになりました。社員からのニーズは様々で、自部門のサービスを紹介したい、社内イベントを取り上げてほしい、自分たちのお客様にインタビューして記事にしたい、、など。

もともと、メディアの方向性は一点に定めず「学びの共有」や「階層を超える」ことを主テーマとしていたため、どんな記事テーマでもいったんは検討し「読んで学びを得られるものならOK」という基準で記事化を進めました。この方針は現在も変わっていません。

社内各所で情報収集、アイデアを企画に

オウンドメディア運営のための定例の場は、週に1時間のMTGがあるだけです。各記事の企画案からライティング~掲載までのステータスをJiraで管理しており、その進捗や課題を確認・検討する場としています。

それ以外に、社内の人事・採用・IR・コンサル部門など各部との定期的な情報共有の場を作っており、そこではオウンドメディアに閉じず様々な外部発信につながる情報を収集、提案しています。ここでのコミュニケーションが企画案につながることが多いです。社内といえど、各部・各機能によってミッションが異なり、同じ目標を持っている仲間ではあっても見ている視界に差があるため、違う角度からの意見・質問は様々なアイデアに繋がります。

時に、社外の方ともコミュニケーションをすることもあり、そんな中でメディア運営全体の全体のプロセスを楽しく過ごすこと、アイデアが形になるプロセスを共有することが、社内外の認知につながる循環になっていると思います。

やってみるまで、やってみてわかったこと

予定を前倒して立ち上げたオウンドメディア

ではここで、あらためてオウンドメディアを始めることにした2021年に遡ってみます。

オウンドメディアの開設は、もともと将来的なマーケティング活動の計画に組み込んでいました。コンサルティング事業とビジネスコラムなどテキストメディアの相性はよいですし、もともとLTSのコーポレートサイト内に「LTSコラム」というコラムページの記事資産もありました。「いずれやろう…」だった予定を数年前倒したのは、新型コロナウイルスによるリモートワークの拡大でした。

思い立ったら始める、スモールスタート

21年の3月当時、LTSグループ内の新規事業検討でWebメディアでの集客やWebサービス運営を試行していたことがあり、そのチームにはWebメディアをスタートできる環境と人員が揃っていました。そのチームに自分も関与していたため、「今なら超低コスト&スモールスタートで始められるのでは…?」と考えはじめ……また同時に、LTSはグループ企業を増やしている最中でもありました。子会社が増える中でグルーブ全体へのメッセージ発信の手段も必要になっていたのです。

「よし、やろう!」と決めて周囲に企画を共有しました。別の目的で作りかけていたブログサイトを流用し、サイトの名前やロゴは「社内外に定着しそうならどこかでリニューアルすればいいだろう」と短時間・少人数で決定。
記事の制作体制、ルール、トンマナなども運営しつつ決めていく前提でいくつかの記事制作を試行し、公開の準備を進めました。そして、意思決定から約2カ月でサイトを公開しました。
広報/マーケティング等の定常業務との並行だったので「可能な範囲でなるべく早く」を目指しました。

この勢いがなければ、当初予定通りのスケジュールで時間をかけてメディア立ち上げを進めていたかもしれません。時間がかかり過ぎると自分と周囲の意思を持続させにくくなるので、今となってはこの勢いで立ち上げて良かったと思っています。

テーマや基準は変化し続ける

3年も経つと「どういう記事を載せるか?」「主に誰が見ることを想定しておくか…?」など、運営の前提や基準も変化してきます。専業メディアなら基本的な運営や記事掲載の基準を簡単には変えないと思いますが、ここはオウンドメディアなので企業の状況や市場の動向によって柔軟に見直してきました。

会社の事業拡大や運営メンバーの入れ替わりなどで、取り扱えるテーマや範囲が変わるため、時勢や体制に合わせて基準を柔軟に見直しています。この2024年6月からも新メンバーが入ったので、また新しいテイストの記事が載ってくるかもしれません。基準の順守よりも運営の柔軟さを重視したほうが全般の改善につながると思っています。

ニュース、プレスリリースとの住み分け

オウンドメディアは企業広報という一面も持っているため、コーポレートサイトに載せるニュースや外部メディア向けのプレスリリース、投資家向けのIR発信などとの線引きも必要になってきます。これらの情報発信方法は、それぞれ発信する目的やターゲットが異なるため、ひとつの題材であっても、プレスリリースに載せる内容、IRニュースの内容、オウンドメディアの記事、は内容に応じて変えています。

ただしこれも「無理をしないで続けること」を最上位の運営方針としているため、最も手間がかからず一定の効果が見込める方法を採用しています。なので内容によっては、手間をかけずに似たような内容を複数媒体に載せる場合もあります。

オウンドメディア運営が業務上のボトルネックにならないために「今、この状況ではどうすべきか?」を常に問い柔軟に運営する姿勢が大事なのかもしれません。

継続の成果は、組織全体の発信意識の向上

オウンドメディア運営は、企業やプロダクトの発信力向上にとても有用な手段だと考えています。

広報・マーケティングのチームにとっては、ルーチンになりがちなBtoBマーケ/広報業務で、好きなようにクリエイティブができる場所を創れて、企画と構成力、発信する能力を底上げできます。チームで意見を出し合って運営していくと、アイデアの循環も生まれます。

そして、もっと大きな効果は組織全体への効用です。
「CLOVERに掲載しましょう」の言葉をきっかけにした、情報の環流を起こすことができました。LTSのようなBtoBでバックオフィス業務の改善・IT導入をもともと主体としていたコンサルティング中心の企業では、ほとんどのプロジェクト情報は秘匿扱いで、学びの共有が困難でした。しかし、2020年あたりから社内でナレッジマネジメントのチームが組成され、学びの共有が活性化し、それをさらに盛り上げるように外部向けのオウンドメディアも開設しました。

それまで、閉じられていた経験や学びを共有する場、そのためのノウハウ、能力が蓄積されたこと、それらの活動を継続することで、共有して公開する文化が活性化したこと、発信意識の向上が最大の成果だったと思います。

LTSはまだまだ発信力の伸びしろがある企業ですので、今後もオウンドメディアや様々な方法を通じて学びを共有していきたいです。

忰田 雄也(LTS マーケティング&セールス部 部長代行)

SE・テクニカルライターを経て、LTS入社。ERP導入や業務改革におけるユーザー向け広報・教育企画および業務文書改善など組織コミュニケーションに関連するコンサルティングに従事。2017年よりLTSコンサルティング事業のマーケティングを担当。2021年より本サイト「CLOVER Light」の立ち上げ~運営・編集長を務める。(2024年1月時点)