LTSでは2018年に「ビジネスアーキテクト」をテーマとした記事を掲載し、日本でのビジネスアーキテクトの必要性を問うていますが、当時の知名度は皆無と言って等しい状態でした。今回は改めて、ビジネスアーキテクトの役割や求められるスキルセット、育成の方法について簡単に解説したいと思います。
ビジネスアーキテクトとは
デジタルスキル標準では、以下のような人材をビジネスアーキテクトと定義しています。
DXの取り組みにおいて、ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(=目的)を設定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協力関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する人材
ビジネスアーキテクトは、企業が戦略を実行し、変革を進めるための計画を立て推進をする専門職です。具体的には、企業の業務、KPI、情報システム、情報、組織といった構成要素を可視化し、長期的なビジョンを達成するためにどこをどのように変えなければならないかを特定します。そして、必要な変革プロジェクトを識別し、各プロジェクトが目標に対して適切に進んでいるかを管理します。
デジタルスキル標準は、日本のDX推進の遅れを背景に策定されたため「DX・デジタル」を切り口に人材を定義していますが、ビジネスアーキテクトは新しくできたDX推進の専門職ではありません。海外では2010年前後から、ビジネスアーキテクチャ設計と管理を担う専門職として普及している役割です。
ビジネスアーキテクトの役割
ビジネスアーキテクトの主な役割として、以下の3つが挙げられます。
①全体最適での変革活動計画 | 企業全体の視点から活動の優先順位を設定し、部門横断的に計画を立てます。 |
②個々の変革活動の投資管理 | 各変革活動が戦略目標にどの程度貢献しているかを評価し、投資の妥当性を検証します。 |
③ソリューションの適切な選定 | 問題解決のために最適なソリューションを選定し、その実行を支援します。 |
ビジネスアーキテクトは、戦略の実行を管理し、プロジェクトが適切に進行するように全体を俯瞰する立場にあります。そのため、経営直轄のチームに所属することが多く、事業部門横断的に調整を行うことが求められます。
ビジネスアーキテクトに求められるスキルセット
デジタルスキル標準では、ビジネスアーキテクトが担う責任を以下のように設定しています。
新しい事業、製品・サービスの目的を見出し、新しく定義した目的の実現方法を策定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けた プロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する
上記を考慮すると、ビジネスアーキテクトには幅広いスキルセットが求められますが、中でも重要と思われる5つを挙げます。
①戦略的思考力 | 企業の長期的なビジョンを理解し、それに基づいた戦略を策定する能力。 |
②プロジェクト管理スキル | 複雑なプロジェクトを計画・実行し、目標達成に向けてチームをリードする能力。 |
③コミュニケーション能力 | 経営層や技術部門と効果的にコミュニケーションを取り、情報を共有する能力。 |
④ITリテラシー | 最新のIT技術やデジタルトレンドを理解し、それをビジネスに活用する能力。 |
⑤問題解決能力 | 複雑なビジネス課題を分析し、効果的な解決策を見つけ出す能力。 |
ビジネスアーキテクトは、企業変革を成功に導く重要な役割を担っています。高度なスキルセットと豊富な経験を持つことで、企業の競争力を大きく向上させることができます。
ビジネスアーキテクトの重要性と人材の育て方
ビジネス環境の変化が激しくなる今日、企業には日常的に変革活動を推進していくことが求められます。日本企業のビジネスアーキテクトを含めた変革人材は全般的に不足しており、これからのビジネス環境においてその役割はますます重要になるでしょう。
とはいえ、このような変革人材を自社のみで育成することは難しいため、社外研修や教育ツールを利用することが効果的ですが、まずは自社内で必要とされる変革人材ポートフォリオを考える事から始めていただければと思います。
LTSでは、企業変革を成功に導く人材(ビジネスアナリスト、デジタル人材等)の育成支援を行っていますので、気になる方はお気軽にお問合せください。
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おまけ(ビジネスアナリスト、ITアーキテクト、エンタープライズアーキテクトとは何が違うのか)
ビジネスアーキテクトの話を聞くと、ビジネスアナリスト、ITアーキテクト、エンタープライズアーキテクトとは何が違うのかと疑問を持つかもしれません。簡単にそれぞれの違いを説明します。
①ビジネスアナリスト | ビジネスアナリストの上位職にビジネスアーキテクトがあります。ビジネスアーキテクトが組織全体の変革を指揮し、全体的な戦略を策定するのに対し、ビジネスアナリストは個別プロジェクトの実行を担い、プロジェクトベースで特定の業務課題を解決します。 |
②ITアーキテクト | ITアーキテクトは技術視点からシステム全体の設計と最適化を行い、ビジネスアーキテクトからの要求を受け取り、ITシステムを構築する役割を担います。 |
③エンタープライズアーキテクト | ビジネスとITの両方の視点を持ち、企業全体のアーキテクチャを設計します。ざっくり言うと、ビジネスアーキテクチャ+ITアーキテクチャです。 |
以下の記事で詳細を解説していますので、気になる方は是非ご一読ください。