LTSでは2018年に「ビジネスアナリスト」をテーマとした記事を掲載し、ビジネスアナリストの必要性を問うていますが、当時の知名度は皆無と言って等しい状態でした。
近年、デジタル変革へ乗り出す企業が増加する中で「ビジネスアナリスト」の認知度が徐々に上がってきています。今回は改めて、ビジネスアナリストの役割やスキル、重要性について簡単に解説します。
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ビジネスアナリストとは
ビジネスアナリストとは、ビジネスアナリシス(業務分析)の専門家のことを示します。
アメリカをはじめ欧米では一般的な専門職の1つであり、近年では、日本国内でも職種としての認知度が徐々に高くなってきてきました。国際的かつ中立的立場でビジネスアナリシスの啓蒙を行う非営利団体「IIBA(International Institute of Business Analysis)」では、ビジネスアナリシスを以下と定義しています。
ビジネスアナリシスは、ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズに変革を引き起こすことを可能にする専門活動である。
つまり、ビジネスアナリストの業務はビジネス課題を解決するため、関係者のビジネス上のニーズを引き出し、それらを要求として取りまとめを行うことだといえます。ただし、最大の特徴は各所と円滑に柔軟にコミュニケーションをとるソフトスキルにあります。要求の取りまとめを行うには、さまざまなステークホルダーのコミュニケーションハブとなってビジネスの変革を推進することが必要であり、幅広い層の意図を組んで要求を切り出すには、自社のビジネスの仕組みや展望を理解し、経営層から現場レベルまで俯瞰してビジネスを眺める視点が求められます。
ビジネスアナリストに求められるスキルセット
最新版のBABOKによるとビジネスアナリストのコンピテンシは大きく6つのエリアに分類されます(資料1)。
6つのエリアのうち、ソフトスキル(桃色)とハードスキル(緑色)の2つに分類され、ソフトスキルの方が求められる能力として比重がやや重いのが特徴です。
ソフトスキル(桃色) | 状況に応じて適切な行動・思考を出来る能力。 基本的には実業務を遂行する中で経験則的に形成され、スキル習得には、原理や理論を座学で学ぶOff-JTと、現場経験から学ぶOJTのバランスが重要となる。 |
テクニカルスキル(緑色) | 業務・方法論・ツールなどの基礎知識。 コミュニケーションを円滑に行うために重要であり、そのための知識を持っていることは欠かせない。 |
これらのスキルは、一朝一夕で養われるものではありません。それなりの経験年数を割き、現場での経験と、BABOK※1、BPMN※2のような体系化された専門知識を学ぶ必要があります。
これからビジネスアナリストにチャレンジする方、また経験が浅いビジネスアナリストには、まずは知識を身に付けていくことをお薦めします。ソフトスキルは経験の中からじっくり養われるものである為、習得には実践と時間を要しますが、それに比べて知識は努力次第で短期的に一定レベルまで習熟することができるからです。そして知識は理解速度を上げ、アウトプットの品質に直結します。知識を持っていることは、ビジネスアナリストにとって強力な武器となるのです。
ビジネスアナリストの関連資格
前提としてビジネスアナリストになるためには、資格の取得が必須というわけではありません。ただ前述の通り、知識はアウトプットの品質向上に直結するため、体系立てた知識を積極的に身に付けるのが、若手には特に効果的です。
ビジネスアナリスシスに関するベーシックな資格は以下です。下記はマインドセットや大局的なメソドロジーをまとめた知識体系であるため、学習することでビジネスアナリストとしての考え方を養うことに繋げられます。
ECBA (Entry Certificate in Business Analysis) | IIBAが提供するビジネスアナリシスのエントリー資格。 BABOKに従って、ビジネスアナリシスに取り組む方法について、基礎的な知識と理解を有していることを証明する。 |
CCBA (Certification of Capability in Business Analysis) | IIBAが提供するECBAの上位資格。 ビジネスアナリストとしての中級レベルのスキルと経験を証明する。 2~3年の実務経験者が対象となる。 |
CBAP (Certified Business Analysis Professional) | IIBAが提供するCCBAの上位資格。 ビジネスアナリシスの分野での高度な専門知識と経験を証明する。 7500時間以上の実務経験者が対象。 |
PMI-PBA (PMI Professional in Business Analysis) | PMI※3が提供するCCBAに近いグレードの資格。 プロジェクトマネジメントとビジネスアナリシスの両方の専門性を証明する。 |
一方でビジネスアナリシスのことだけが分かっていれば仕事ができるか、というとそうではありません。実際の現場で求められる知識やスキルも同時に必要になってくるため、ビジネスアナリスト関連の資格を持つ方は、周辺領域でも学習されている方が多い傾向にあります。付随する領域は多岐にわたり、一例として下記があげられます。ほかにもアジャイル関連やBPM関連などさまざまですが、今後の自身の目指すキャリアや参画するプロジェクトの傾向に合わせて、何を学ぶのか選択してみてください。
プロジェクトマネジメント領域 | CAPMやPMPなど |
ソリューション知識関連 | SAP、Oracle、SFDCといったソリューションの認定コンサル試験など |
これからビジネスアナリストを学ぶ、ということであればまずはECBAから学び始めると良いでしょう。ただし、プロジェクトワークのイメージが付かないまま進めてしまうとインプットがいささか難しいため、CAPMの資格取得とまではいかずとも、「そもそもプロジェクトとはどういったことをするのか」を理解した上で学習してみてください。
ビジネスアナリストの重要性
ビジネスプロセスとは一度作ったら終わりではなく、継続的に維持管理していかなければならないものであり、ビジネスアナリストはビジネスを理解し、寄り添いながらプロジェクトを推進する役割です。つまり、DXプロジェクトの業務変革において、ビジネスアナリストは必要不可欠な存在であり、その真価は自社にいてこそ発揮されるといえます。そして今後はコンサルティング会社に頼った業務変革を進めるだけでなく、より変化に柔軟な対応ができる組織となることが求められます。今後も技術発展は加速し続け、その度の業務変革とその対応への重要性が更に高まるからです。
より変化に柔軟な対応ができる組織となるためにも、組織の業務変革に迅速に対応できるビジネスアナリストの社内配置を、ぜひ積極的に検討してください。
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