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「共創と挑戦のコミュニティ」へ進化 静岡イノベーション拠点「SHIP」~2周年アワード「オリジン茶葉のカクテルキット」大賞~

LTSが静岡県から受託・運営しているイノベーション拠点「SHIP-Shizuoka Innovation Platform-」は開設2周年を迎えました。3月に2周年イベント「SHIPアワード2024」を開き、「県産オリジン茶葉を活用したお茶×お酒のクラフトティーカクテルキット」が大賞を受賞しました。SHIPは4月から3年目を迎えます。「共創と挑戦のコミュニティ」へ進化し、地域の皆さま、自治体とともに地域振興に取り組むオープンイノベーションのモデルケースとなることを目指します。SHIPコミュニティマネージャー、玉城陽子のイベントレポートです。
https://ship-shizuoka.jp/

玉城 陽子(SHIPコミュニティマネージャー)

Transformation Consulting事業部 コンサルタント。RPA、AI-OCR導入検証(官公庁)、ITツール導入・運用定着(製造業)、業務負荷改善・業務プロセス再設計(製造業)等を担当。近年は静岡県内の企業・官公庁向けにDX推進人材やイノベーション人材の育成プロジェクトに従事。(2025年4月現在)

静岡のお茶に新たな価値

イベントにはオンラインを含めSHIP会員ら約50人が参加しました。「SHIPアワード2024」は会員の挑戦をたたえ、更なる挑戦を後押ししようという目的で実施。10人の会員がピッチを行い、参加者の投票で受賞者を決定しました。実現できると面白い挑戦、勇気ある挑戦を始めた方へ贈る大賞のほか、「斬新な取り組みで賞」、SHIPとして応援したい方に贈る「ナイストライ(コミュマネ)賞」、「多くの人を巻き込んだで賞」「社会課題解決に取り組んだで賞」の4つの特別賞を用意しました。

アワードを受賞した(左から)中村さん、米澤さん、三浦さん、蔭山さん

SHIPアワード2024大賞と「斬新な取り組みで賞」は、「静岡県産シングルオリジン茶葉(特定の農園だけで栽培されたお茶)を活用したお茶×お酒のクラフトティーカクテルキット」を開発した株式会社dozoの三浦弘平さんが受賞しました。三浦さんはSHIPで試飲会を行い、どのようなニーズがあるかなどをテストマーケティングしました。静岡のお茶に新たな価値を生み出すビジネスと行動力が評価されました。三浦さんは「斬新な取り組みで終わらないように、販売に向けてしっかり準備したい」と今後に向けた意気込みを語りました。

大賞を受賞した「お茶×お酒のクラフトティーカクテルキット」

「社会課題に取り組んだで賞」を受賞したのは、ディープテックスタートアップ、Workauto株式会社 代表取締役の米澤誠仁さん。農業を中心とした屋外作業の自動化に取り組み、ピッチでは令和6年度に行った「自動草刈り機の開発・テスト」について発表。米澤さんが目指す「持続可能な農業の実現」という想いや苦労に共感が寄せられました。

「ナイストライ賞」は、「ドメイン知識 × AIで誰でもPMになれる時代」を目指し、IT開発におけるプロジェクトマネージャー機能を代行できるAIの開発に取り組んでいる株式会社CurioBaseの CEOで沼津高専の蔭山朱鷺さんが受賞。高専生ならではのサービスの強みを見つけ2025年の2月、学生のうちにスタートアップを起業したことが評価されました。

「多くの人を巻き込んだで賞」は、AIキャンプ® 代表の中村俊也さんに贈られました。SHIP開設時から生成AIをテーマにしたイベントを毎月開催し、これまでに26回を数えています。参加者は累計600人を超えています。

新たな挑戦を生み出す組織文化づくり

イベントでは県内の先輩起業家、わさび漬などを製造する株式会社田丸屋本店(静岡市)の望月啓行代表取締役社長と、産業用機器製造業の株式会社イシダテック(焼津市)の石田尚代表取締役社長のお二人をゲストに、トークセッションも実施しました。

県内の先輩起業家を招いてのトークセッション

望月氏は、1875年(明治8年)に創業した田丸屋本店の五代目。大学卒業後、大手食品会社を経て田丸屋本店へ入社しました。当時、全国的に有名な「わさび漬」はダウントレンドになっており以来、農業、製造、販売、飲食、観光など様々な分野で新しいわさびマーケットの開拓に取り組んでいます。石田氏は筑波大学大学院(工学)修了後、LTSに入社し、シニアコンサルタントとして企業変革に関するプロジェクトに従事。2015年12月に株式会社イシダテックに入社し、2020年には代表取締役に就任。既存事業の強みを活かしながら、ソフトウェアとハードウェアを融合した価値提供ができるよう事業変革に取り組んでいます。

LTSの東海エリアスタートアップ事業責任者、中島健太がモデレーターとなり、「挑戦」をキーワードにお話をお伺いしました。望月氏は「わさびという事業の軸が明確である中でわさびにどれだけ誇りを持ち、その可能性を信じて向き合うかが重要」、石田氏は「オーダーメイドの機器製造であることから、顧客の課題をどれだけ理解できるかが重要」と語り、新たな価値の見つけ方についてお話しいただきました。両社の事業展開はそれぞれプロダクト・アウト、マーケット・インと対極です。しかし、「仲間とともに価値を創る」ことは共通しており、「人的資源経営」とも言うべき、社長自ら社員との対話機会を作るコミュニケーションや挑戦を後押しする人財配置を行うことなど、変革し続ける土壌を作っていたことが印象的でした。

イベント終了後には参加者で記念撮影

両氏の経験や、今後の挑戦に対する想いを通じて、社員を変革に巻き込む手法や、社内から新たな挑戦の種を見つけ育てる仕組みなど、大手企業だけでなくスタートアップにも参考となる貴重なお話を伺うことができました。

SHIPは自社ビジネス拡大のきっかけになりそう

SHIPは静岡県内のデジタル化やイノベーションの創出を目的として設置された県営の交流の「場」です。LTSの専門相談員が常駐し、スタートアップをはじめとした、挑戦する皆さまの様々な困りごとに対応しています。

令和6年度は、累計会員数が前年度比1000名増の2803名、累計来場者数は1万5000人を突破し前年度比7501名増の1万5011人(いずれも令和7年度3月時点)と年々、地域に浸透していると感じています。令和6年度の会員アンケート(※1)では、NPS®(※2)で前年度比17ポイント上昇。SHIPに対して昨年度以上の高い評価をいただきました。

※1)アンケートの回答者は114人。男性77%、女性22%、未回答1%。所属組織は県内企業が4割、スタートアップ(県内外含む)が2割、ほか県外スタートアップ、金融機関、ベンチャーキャピタルなど。業種はITやコンサル、クリエイティブ、製造など多岐にわたっています。役職は一般社員が3割、経営者・役員が2割などとなっています。
※2)NPS®=Net Promoter Score。顧客ロイヤルティを測る指標で、顧客アンケート調査で「商品やサービスを親しい人にどの程度おすすめしますか」の質問から「0-10の11段階」で回答を取得し、9,10点=推奨者/7,8点=中立者/0~6点=批判者とし、推奨者割合-批判者割合で計算される。詳しくはNTTコムの業界別NPSランキングをご覧ください。https://www.nttcoms.com/service/nps/summary/

アンケートの自由記述では、「SHIPでの出会いから協業しています!実際に仕事に繋がっています」「得た知識を利用して、データ分析に活かせるようになった」「生成AIの企業内利用環境を整備するニーズを発見でき、SHIPは自社ビジネス拡大のきっかけになりそう」「 “ビジネスモデル”をちゃんと考えるようになった。ちょっとだけ『コツ』につながる糸口が見えた」「ピッチコンテスト向け資料の作成支援(→入賞、賞金獲得が多数)、VCの紹介、県内協業候補先の紹介(→共同実証へ進展)、エクイティストーリーの構築支援、静岡県との関係性強化など(に役立った)」といった声をいただきました。

今回のイベントを通して、SHIPが多くの会員の皆さまによって支えられていることを改めて実感しました。2025年度は起業を目指す学生の支援拠点としての機能も備え、現在の「交流、学習のコミュニティ」から「共創と挑戦のコミュニティ」への進化を目指し、これまで以上に皆さまの新たな挑戦を応援できる環境づくりを行ってまいります。静岡県をはじめ、自治体や地元企業と緊密に連携することで、地域と文化に根差したイノベーションの創出を図りたいと考えています。引き続き、SHIPをよろしくお願いいたします。一緒に静岡でイノベーションを起こしましょう! SHIPにてお待ちしております。