「大学と地方の可能性を解き放とう」―。LTSは、中国・四国地方の大学で研究されている未来技術のタネを事業化、社会実装するため、研究者と経営人材をマッチングする「PALETTE」事業に取り組んでいます。6月には徳島大学と東京・港区のLTS本社で事業紹介ピッチやチームアップワークを開催しました。どんな研究が世に出ようとしているのでしょうか。LTSのCO事業本部・Social & Public事業部、福元涼子と小早川敦がレポートします。

大手エネルギー会社と再開発コンサル・設計事務所を経て2021年にLTSに参画。S&P事業部のアントレプレナーシップ教育コンテンツ作成をサポートしたことをきっかけに、2024年にS&P事業部に異動。PALETTE事業のほか、デジタル・イノベーション人材育成プログラム(静岡県事業)の事務局や、PANORAMA事業(広島県)の事務局などを担当。(2025年6月時点)

2022年にLTS入社。基幹システム刷新プロジェクトやDX推進プロジェクトにてデータマネジメント定着支援に従事したのち、2023年よりS&P事業部に参画。地方にイノベーション起こすためのエコシステム形成事業に従事。地元広島を中心とした中四国の大学組織のスタートアップエコシステム形成に関するPJに参画しており、大学シーズの社会実装につながる環境づくりを支援している。
30件がマッチングに向け進行中
LTSは2024年9月から「PALETTE」の愛称で、中国・四国地方の大学研究者と経営人材のマッチング事業を進めています。PALETTEには「人と技術が混ざりあい、生まれた色で新たな未来を描く」という想いを込めています。
※PALETTEサイトページ:https://palette-lts.com/
すでに第一弾として、従来に比べ約1000倍の情報密度と、約90%の消費電力削減を実現する半導体メモリを開発した広島大学発のスタートアップ、株式会社マテリアルゲート(広島県東広島市)の事例が生まれています。
PALETTEには現在、約50人の研究者、約80人の経営人材が集い、約30のマッチングが成立しています。今回、徳島では経営人材と大学発スタートアップが出会うことを目的に「THE PITCH in 徳島」を、またLTS本社では対面のワーキングを通して研究者が経営人材と知り合いパートナーを見つけてもらう目的で「Innovation Canvas Lab」を開催しました。
パッションと可能性を伝えるピッチ

徳島大学で開かれた「THE PITCH in 徳島」では、徳島大学発スタートアップである4社が、経営人材へ事業紹介ピッチを行いました。経営人材を含む42人の参加者が集まり、次の4社がピッチを行いました。

各社からは、それぞれの革新的な技術や、業容拡大中の事業について10分程度のプレゼンが行われた後、活発な質疑応答が交わされました。

ピッチに続いて、「ぶっちゃけクロストーク」「ラウンドテーブル」も行われました。「ぶっちゃけクロストーク」では、他の場ではなかなか話す機会のない、事業開始当初の苦労話や課題感について、4社の本音が語られました。「ラウンドテーブル」では各社のブースを設け、実機体験や技術説明ツールを使って、各社と参加者が、深く詳細の内容に入り込んだ議論を展開しました。

来賓として参加いただいた徳島県経済産業部産業創生・大学連携課の松永和也課長補佐からは「社会課題を解決するスタートアップの成長を支援することで、徳島県にも新しい産業を生み出すところにつなげたい。皆様とスタートアップエコシステムを形成していきたいという思いです」、また四国経済産業局新事業推進課の安田健総括補佐からは「今日を機会に、今後も(徳島大学発スタートアップを)応援いただきたい。われわれ、みなさんと一緒に応援しながらこの地域をはじめ日本全体でスタートアップがどんどん生まれ成長すればよいと思う」とのコメントを頂きました。
参加者からは「ゲノム編集のおもしろさが伝わってきた」「普段聞くことができない専門技術や内部のご苦労などもお聞きでき、非常に貴重な機会となりました」「社長のパッション、思いに感銘を受けた」といった感想があがりました。
技術と経営、人柄を知る対面イベント
東京・港区のLTS本社で行われた「1Day 対面イベント Innovation Canvas Lab」には岡山大学、広島大学、愛媛大学、鳥取大学、島根大学の研究者5人と起業経験者、大手企業での新規事業経験者など14人の経営人材が集まりました。
経営人材の候補者は首都圏在住が多く、地方大学の研究者と対面での関係構築を図るため、本事業では初めて首都圏でイベントを開催しました。事業化を目指す研究テーマは以下の通りです。


Innovation Canvas Labでは、研究者と経営人材がグループごとに事業化する際の課題や、具体化するためのステップを検討。5時間にわたるワークショップや意見交換、アイデア出しを行いました。参加者からは「研究を事業化するステップが分かった」「研究者の人柄が素敵で安心感があった。研究シーズや応用の広さも面白い」「新たな事業戦略を考えられた」「技術理解が深まり改めて魅力的だなと思った」といった感想がありました。

これまでのマッチング支援を通じて、単にスキルや経験だけでなく、研究者と経営人材が想いやビジョン、価値観を共有することの重要性を強く実感してきました。今回の2回のイベントは、そうした関係性を築くための場として企画されたものであり、我々が目指す「よりよい関係性でのマッチング支援」を体現する取り組みとなりました。
PALETTE事業は、LTSの経営理念「可能性を解き放つ」を具現化するプロジェクトです。研究の可能性を拡げる事業化、そして事業化の可能性を拡げる経営人材との出会いを支えるマッチングと伴走支援を通じて、世界を変える一歩を支援していると実感しています。今回のイベントで得た学びを次に活かしながら、LTSならではの支援をさらに進化させ、大学発スタートアップ創出とその先の社会変革に貢献してまいります。
「PALETTE」は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「大学発スタートアップにおける経営人材確保支援事業(MPM、Management Personnel Matching program)」に採択された事業です。未来技術を発掘し、経営人材とのマッチングを進め、スタートアップ事業の創出・成長、地方のスタートアップ創出モデル構築を目指しています。