業務プロセス分析と再構築、DXと変革で地方企業を元気に―。LTSは6月、システム開発・導入などを手掛ける渡敬情報システム株式会社(秋田県横手市、以下渡敬情報システム)に、「変革人財育成研修」を提供しました。「DXで秋田の創生」を目指す渡敬情報システム常務取締役の藤原弘樹さんと、LTSの担当者2人が対談し、なぜ人財育成に着手したのか、研修によってどんな効果が出たのか伺いました。(本文敬称略)
渡敬情報システム株式会社について

渡敬情報システム株式会社
本社:秋田県横手市横手町大関越92
URL:https://www.wisco-wp.jp/

1987年親会社の株式会社渡敬に入社。入社当時はOAディーラー営業として活動。その後1991年に渡敬情報システム株式会社の分離独立と同時に移籍し、システム営業を経て2006年、同社及び渡敬の取締役として経営に関わる。以降は、大手パッケージメーカーと協業し全国の中小企業のシステム導入や業務改善の支援実務に多くかかわる。近年は、同業である全国の事務機器ディーラーのシステム導入や業務改革支援も数多く経験。その経験を基に現在は、グループ会社のDX推進ビジネスの担当役員として活動している。

2012年にLTSに入社。様々な企業の業務改革、業務分析・設計やIT構想・要求整理、基幹系システム刷新等、企業経営改善・改革に関る上流から下流まで幅広いプロジェクトに参画。また、事業環境調査や、新規事業企画/計画の策定案件等の戦略コンサルティング領域も経験。近年はマネジメントとして事業運営の他、これまでのノウハウを活用した人材育成事業の強化・推進に従事。(2025年5月時点)

1993年にオリックスに入社。主に法人金融分野において、東京・秋田・広島・栃木のマーケットで金融サービス・事業再生・再生可能エネルギー・M&Aの実務を幅広く経験。2015年から2018年まで業務改革室長としてBPR・IT・セキュリティ等を統括。2018年から2020年までオリックスグループのホテル・旅館の運営事業を統括。2022年にLTSに移籍し、ビジネスプロデューサーとして法人開拓や新規ビジネスの創出を担う。(2025年6月時点)
社員みんなが課題を「自分ごと」に
飯島:
研修には渡敬情報システム各部門の代表者26名が参加され、座学とディスカッションでビジネスプロセスマネジメント(BPM)などについて学んでいただき、実践としてビジネス構造を俯瞰するビジネスプロセスマップを作成してもらいました。そもそも研修の目的は、社員に「変革志向」を持ってもらうこと、でしたね。
藤原:
渡敬情報システムは秋田県内の中小企業を中心に、システム開発・導入支援をしています。ソリューション提供のみならず、顧客のビジネスプロセスを正確に把握し、課題の根本にアプローチ、解決、変革するまでの支援が理想と考えていて、そのための人財育成をLTSに相談しました。

飯島:
すでに顧客への「デジタル化経営支援」も手掛けているところ、顧客課題の根本を解決、変革を支援するに当たって取り組む必要があるのはどんな点だったのでしょうか。
藤原:
直接顧客と接する社員は、現場仕事に追われがちで、なかなか顧客課題の根本までを認識できない、また課題を「自分ごと」と捉えることが難しいということがあります。これを打破するためには、まずは渡敬情報システム自身が変革を実践し、社員に実感を持ってもらうことが有効だと考えました。そのための第一歩として研修を行い、ノウハウ取得を試みたわけです。

「ビジネスプロセスマップ」で課題を見える化
水谷:
社員の皆様にもそうした問題意識があってか、参加者全員が前のめりで研修に参加いただく姿が印象的でした。事前に配布した「ビジネスプロセスの教科書」も、読み込まれていました。
藤原:
率直に言うと、少し難しい内容ではありました。ただ、水谷さんが研修で内容を解説してくださったので、事前学習プラス研修で理解を深めることができました。
水谷:
2日間の研修では、初日は座学をメインに「ビジネスプロセス」「プロセスマップ」の基礎知識を習得いただき、2日目は「ビジネスプロセスマップ作成」の演習で、業務可視化・課題抽出を実践していただきました。
マップは、ビジネスモデルの中の業務プロセスを、地図のように可視化するものです。実際に渡敬情報システムの業務をモデルに、作成する手順やポイントをお伝えしながら、受講者主体でディスカッションし作成していただきました。

藤原:
マップを作成することで、煩雑な業務を可視化・整理し、見えなかった課題が浮き彫りになりました。またディスカッションでは頭の中が整理され、本当に目からうろこが落ちる思いでした。研修終了後も部門ごとに、研修参加者がリードしてマップを作成しています。フレームワーク自体が分かりやすいので、誰も取り残されることなく、全員が意欲を持って取り組むことができています。

AI活用、評価制度も進化
水谷:
さっそく研修を活かしていただき、非常にうれしいです。今回の取り組みを経て、実際に業務で変化した部分はありますか。
藤原:
研修をきっかけに、業務プロセス内でのAI活用を検討しています。業務プロセス・タスクが整理されたことで、AIで代替可能な業務を特定することができたからです。
飯島:
早速、そのような変革が実践されているのですね。そのスピードには驚きです。
藤原:
研修からわずか数週間で、社内での取り組みが進んでいます。また業務そのものの改革だけではなく、「評価基準の明確化」といったメリットも実感しています。マップを作成することで、各部門でのコアとなる業務、評価比重を高くするべき業務も見えてきて、評価制度の策定にもつながっているのです。
こうした成功体験を積み重ね、定量的な成果を出すことで、顧客の支援体制の確立、変革に貢献したいと考えています。

水谷:
一石二鳥の取り組みですね。補足すると、マップを作成する意義として「全社員の目線を合わせる」ということも挙げられます。ディスカッションでも、社員ひとりひとりが認識している業務プロセス・タスクの粒度に相違があったはずです。ビジネスプロセスを統一することで、社員間にある粒度ギャップを解消し、企業全体の成長を促すことができます。
藤原:
はい。同じ業務を担当していても、社員によって作成するマップに相違があったことには驚きました。マップは、ただ一つの「正解の形」を導くだけでなく、全社員の共通認識を持つための「統一言語」になりそうです。
水谷:
そうですね。各部門での取り組みは進んだものの、経営陣への説得に失敗したり、「抵抗勢力」が登場したりして難航し、全社部門横断での変革には至らないケースがあります。「統一言語」ができたことにより、全社的な取り組みにつながると思います。

秋田の「変革パートナー」に
飯島:
渡敬情報システムは今後、顧客にBPMを軸にDX・変革支援を提供されていくと思います。秋田では、こうした取り組みは進んでいますか。
藤原:
率直に、認知はまだそれほどではないでしょう。秋田県の調査(※)では、デジタル技術の導入や運用に当たって障害となったものとして、「導入費用負担」「従業員のスキル」などが多く挙げられています。秋田県も「事業者の活用度合いに応じた支援を実施することで、デジタル技術活用による県内産業の生産性の向上や競争力強化を図っていく」としています。

今回得た知見を武器に、渡敬情報システムが先頭に立って顧客の根本的な課題解決に貢献し、秋田の「変革パートナー」になりたいですね。
水谷:
LTSとしても、渡敬情報システムの変革フェーズに合わせて伴走し、これからも支援したいと思います。今回は、現状業務の「課題発掘」が要でしたが、次のフェーズでは、企業としての品質確保やサービスの評価制度が肝要になります。LTSも人財育成を通して秋田のDXに貢献できたら嬉しいです。
エディター・ライター

2023年にLTSへ入社後、LTSリンクのエージェントサービスにて出向社員として営業業務に従事。現在はLTSのマーケティングチームに所属し、CLOVERの企画・執筆や企業SNSの運用・管理を行っている。趣味はクラリネット演奏、読書。(2025年4月現在)