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リーダーシップ

みんなの根底にあるものを言葉に、そして行動へ(後編) ミッション・ビジョンを考える

2021年、LTSはミッションとビジョンをアップデートしました。LTSのミッション・ビジョンがどのような考えの元に作られているかを、アップデートに携わった代表の樺島弘明と執行役員の山本政樹の対談を通してご紹介します。 
樺島 弘明(LTS 代表取締役社長CEO)

ING生命保険株式会社(現エヌエヌ生命保険株式会社)後、株式会社IQ3を経て、株式会社ラーニング・テクノロジー・コンサルティングで営業担当ゼネラルマネジャーを務める。2002年3月にLTS設立に参画し取締役に就任。同年12月より現職。(2021年6月時点)  ⇒プロフィールの詳細はこちら

山本 政樹(LTS 執行役員)

アクセンチュア、フリーコンサルタントを経てLTSに入社。ビジネスプロセス変革案件を手掛け、ビジネスプロセスマネジメント及びビジネスアナリシスの手法や人材育成に関する啓蒙活動に注力している。近年、組織能力「ビジネスアジリティ」の研究家としても活動している。(2021年6月時点)  ⇒プロフィールの詳細はこちら

みんなに参加してもらうことを大切に

山本
原案作りは経営層を中心に進めつつも、議論は社内に広く展開しました。そういう意味では全員巻き込んでいきましたね。

樺島
もちろん。

山本
原案作りは、ある程度社歴が長く、LTSのさまざまな出来事を経験してきたメンバーで行いました。ミッション・ビジョンには10年先にも通用する普遍的な価値が盛り込まれている必要があります。一方で、会社を取り巻く環境や組織のステージは、2~3年でどんどん変わっていくわけです。そのような表面的な変化の中でも、根底で変わってはいけないこと、着実に受け継いでいくべきことがあり、ミッション・ビジョンの議論ではそれが何なのかを見出していく必要があるわけです。このような議論には、自社の歴史や過去の変化を経験してきた“年の功”が活きてきます。ですので、経営層を中心に進めたわけです。もっとも“年の功”と言っても、LTSの経営層は30代~40代なので、一般企業で考えたらまだまだ若者なんですけどね。

樺島
はは、そうですね。

山本
社員の皆さんに議論に参加してもらうセッションでは、いろんな学びやフィードバックがありました。経営層の考えた当初のビジョン案については「分かりにくい」という指摘が多数あり、議論を通じてより理解しやすいセンテンスにまとめることができたと考えています。ただ、社員との議論を通じてもミッション・ビジョン案の根底の考え方が覆ることはなく、表現方法は違っても根底にある価値観には、みなさんさほど相違がないんだとの実感を持ちました。もちろん、1回の場だけでは腹落ちしないこともあったと思いますが、前述の読書会のようなさまざまなコミュニケーションを重ねることで補うことができたと思っています。

(写真1)2020年2月に行われたLTS全体会議での山本

「自律」「自立」と「自由」の考え方

樺島
印象的な議論とかありましたか?

山本
数年前にLTSグループに入った会社の幹部の方との議論でのことです。その方は、理想のリーダーシップの姿とは「自分が責任は取るので、みんな自由にやってください」というものだと思っていたそうです。しかし、LTSのミッション・ビジョン案を見たときにLTSが考えるリーダーシップとは「みんな自由にやってください、という部分は同じなのだけれども、同時にやったことの責任も自分たちで取ってください、という考え方なんだ」と感じたそうです。まさにそうで、わたしたちが考える自律とは、自分自身の自由や興味関心を満たすということと、その結果に対する責任はセットです。もちろん対外的には会社が社員一人一人の活動に責任を負いますし、さまざまな支援をも行うけれど、本当の「自律」には一人一人が行為の責任を自ら負っていくことが求められます。

樺島
良い議論ですね。ミッションにある「自由で活き活きとした」の「自由」は、自分で決めて行動して結果も引き受けるという意味を込めているんです。そのためには、個人が精神的に「自律」し、経済的に「自立」していないといけません。当然、自分で物事を選択するための自分なりの判断軸や規律を持ってないといけません。つまり、2つの「自律」「自立」と「自由」はセットなんです。

(写真2)2021年1月に行われたLTS全体会議でアップデートしたミッションについて説明する樺島

山本
LTSの中で議論をしていた時は、こういった点はあまり気にしていませんでした。みんな同じ文化の中にいながら議論をしていたので、良くも悪くもそういった点に気付かなかったのかなと思いますね。グループ会社の方々と話すと、全く異なる視点が出てきて新鮮です。

アウトプットを考えるプロセスが大事

樺島
ミッション・ビジョンのアップデートの過程では、内容をより良いものにすることはもちろんですが、議論のプロセスにも気を使いました。時間がかかっても、社員のみなさんそれぞれに、自分の歴史や経験を振り返って、自身のこれからのビジョンを描いてほしかったんです。それを通して、確認したLTSへの共感や愛情を、会社全体のミッション・ビジョンにも反映してほしいと思っていました。ですから議論は急ぐことなく、全体会議やZoomなど、様々なセッションの場を設けました。その一つ一つがとても大切な場でした。

この「場を大切にしたい」と思った背景には、過去の取り組みの反省があります。2008年に「みつばをよつばへ 」(※LTSの社員の行動の根幹にある概念として「誰かを幸せにしたい」という想いを最小の言葉で表現したもの)というスローガンを作った時に、出来上がりだけわたしが発表して、議論のプロセスにあまり重きを置かなかったんですよね。当時、ワークショップを開催しようとした際に、大規模プロジェクトが火を噴いてしまって、主要メンバーがそちらの対応に掛かり切りになってしまいました。結果、十分な議論ができないまま、出来上がりだけわたしが発表したんですが、本当にそのプロセスで良かったのか今でも悔いが残っています。

(資料1)2008年に行われたLTSのブランディング活動の資料より抜粋

山本
今回はみなさんに参加してもらい議論を進めることができましたね。多くの人は、これまでうすうす考えていたことがクリアに言語化された、と感じているのではないでしょうか。LTSは若いメンバーが多く、彼らが会社の文化形成の中心です。その意味で、ミッション・ビジョンのセンテンスには彼らに響く言葉になるよう意識しました。彼らがミッション・ビジョンを受け取った時に、モチベーションが上がるような、仕事に対して前向きな意識を持てるようになるような、言葉や表現を選んだつもりです。

若手とのコミュニケーションは比較的スムーズにいった一方で、これらのメンバーをまとめるリーダー層との議論は少し難しさを伴いました。ミッション・ビジョンは、日々の業務で直面するさまざまなケースに当てはめると“きれいごと”に思えてしまう部分があります。例えば組織の在り方としては「社員が自らの関心事に応じて自由に行動できる会社」がいい。けれど、現実的に考えると「本当にみんなが自由に行動したら、業績は維持できるのだろうか、組織の規律は維持できるのだろうか」といった疑問に引っ張られます。結果的に「ルールに従うことも大切」といった表現も入れた方が良いというようなどっちつかずの議論になってしまうのです。しかし、ビジョンが指し示すものははるか未来にある理想像です。今すぐにそのような組織にはなれないかもしれない、それでも従業員一人一人が意識を高めて、皆が自律的な行動ができるようになった先では、そのような組織になれるはずだと信じなければなりません。そして、その理想像に近づくために、たとえ小さな変化であったとしても今できることを考えていく必要があります。このようなすぐにつながりにくい、足元の現実と遠い未来に自分たちが実現したい理想像とを結びつけながら考えていくことは、決して簡単ではないですね。

樺島
そうですよね。いろいろ考えながら、これもまた15年後とかにやるのかな…と想いを馳せましたよ。

(写真3)リモート対談中の樺島と山本

議論に参加する人たちが自分の中で考え哲学していく

山本
多くの人とコミュニケーションをとってきましたが、ミッション・ビジョンが社内にしっかり浸透したかと言われれば、まだ課題はあると思っています。具体的にはミドルマネージャーから上の層とのコミュニケーションが少ないと感じています。ワークショップを開催しても、会社をもっと知りたいと思っている若手層の参加が多く、忙しい管理職からの参加は相対的に低かったです。この層は普段からコミュニケーション量も多いですし、「説明を聞かなくても分かっているよ」というところはあると思いますが、せっかくの機会なのでもっと話せればよかったと思っています。また、ミッション・ビジョンは一度わかったような気がしても、本当の腹落ちにはもっと多くの時間と言葉が必要だと思っています。この点においてもっとコミュニケーションの質を上げたり、量を増やしたりしないといけないですし、グループ会社とのコミュニケーションも増やしていく必要があります。

樺島
そうですねえ。わたしも同じく課題だと考えています。

ミッション・ビジョンアップデートの作業も、今後行われる予定の20周年イベントも、プロセスや、費やす時間、参加する人たちがどれだけ自分の中で考え哲学していくか、というところを大事にしていきたいですね。結果として時間はかかるかもしれませんが、結果良いアウトプットが出たら良いと思っています。その方が、携わった人たちがある程度腹落ちしているので、次のフェーズが進めやすくなります。

ミッション・ビジョンを基にした行動や判断を積み重ねる

樺島
LTSのミッション・ビジョンや組織プリンシプルを創っていくこと、あるいは20周年活動でもあるバリューの見直しなど、LTSにおけるすべての組織作りでは、「自律・自立した人間である」というのが前提にあり、その中で好きにやっていいよ、というのが共通認識です。この考え方はLTS内に浸透していると思っています。うちは、そういう会社ですよね。

山本
そうですね。大切なことはミッション・ビジョンのセンテンスそのものではなくて、「望ましい行動は何か」、「ある決断を迫られたときに、どう対応するか」という、個々の局面での判断でだと思っています。そういうことに力を入れている会社はどこでも、ありとあらゆる場面を想起して、自分たちの望ましい判断ってどういった方向ってなんだろう、という議論がなされていると思います。ミッション・ビジョンのセンテンスを覚える・覚えないとかではなく、その中身をしっかり知ってほしいです。想いを知ってほしい。

樺島
ミッション・ビジョンが短くなったから、暗記してねとか空で言ってねとか、そういうことではないんですよ。どっちがミッションでどっちがビジョンだっけ?みたいなこともあると思いますけど、そこを間違えていたからといって大したことではないと思います。

結局、行動が全てです。行動は常に言葉に勝る。1個1個の判断行動が、LTSの文化を創りますし、ミッション・ビジョンを実現していきます。LTSが思う11の大切なこと(価値観)である「LTS Way」も同じで、きちんと行動で示すことができているか。浸透度はそれを覚えているかどうかではなく、どれだけそれを基にした判断や行動を積み上げることができるか、だと思っています。充分に浸透しきっている「みつばをよつばへ」をミッションにしたらどうか、という意見もありました。でも、これはもはや、ミッション・ビジョン・バリューを包み込む包装紙みたいな感じだと思っています。

山本
最近、わたしは社外の方に向けた講演では「わたしたちが目指しているのは、お客様企業の変革をわたしたちが主導するのではなく、お客様企業の組織の中に変革のための意思と能力を育て、お客様企業が自社の力で自信を変革していく力を得ることです」と伝えています。わたしたちの目指している仕事や組織の在り方については、事例を増やし議論の場を増やしていきたいと思っています。

色々語りましたが、ミッション・ビジョンを書くのって恥ずかしいんですよ。普段のコンサルティング業務で作る論理的な文書とはまったく違います。もっと感性に訴える詩とか物語を書くような感覚でしょうか。そんな恥ずかしさを振り切って書き上げたミッション・ビジョンですから、もっと多くの人に知ってほしいですね。樺島さんは、最後に何か伝えたいことはありますか?

樺島
あれ、もう最後なんですか?

ミッション・ビジョン。これがある状態で日々生きていくことの素晴らしさがあります。これがあるうえで、生きていく人生や事業活動のほうが素晴らしいと、わたしは経験上思います。この考え方も、社内には結構浸透したと思っているんですよ。ミッション・ビジョンをアップデートするときに「そもそも必要なのか」とか「なんでそんなところに力を入れるのか」といった意見が無かったんです。以前のミッション・ビジョン策定の際は、そういった反応もあったんですが。ミッション・ビジョンがあることで、仕事をすることの良さや素晴らしさを感じることができる。それをみんなが分かっているというこの会社の状況は、LTSがまたひとつ成熟したのかなと感じます。嬉しいですね。


ライター

大山 あゆみ(LTS コンサルタント)

自動車部品メーカーにて、グローバルで統一された品質管理の仕組みの構築・定着化を支援。産休・育休を経て、CLOVER Lightの立ち上げ、記事の企画・執筆を務める。現在、社内システム開発PJに携わりながら、アジャイル開発スクラムを勉強中。Scrum Alliance認定スクラムマスター(CSM)、アドバンスド認定スクラムマスター(A-CSM)、Outsystems Delivery Specialist保有。(2023年12月時点)