インタビューに答えた方々
大学時代に保育系NPOで日本初の障害児保育園を立ち上げた経験をきっかけに、「社会を変えようと挑戦する人の伴走者」になるべく、コンサルタントとしてのキャリアをスタート。入社後は複数業界のBPM関連PJに多数従事。その他、幅広い案件を経験している。(2021年7月時点)
SEとして10年ほどシステム開発に従事した後、LTSに入社。IT導入PJにおけるユーザー側タスクの支援、RPA等のデジタル活用の案件化から要件定義・設計・開発・安定運用までを一気通貫で支援する実行支援型のコンサルティングを主に担当。(2021年7月時点)
SIerにてシステム設計/開発に従事した後、株式会社IQ3を経て、LTSに入社。大手自動車部品会社にて要件定義・設計・開発・運用、大手飲料メーカーにてシステム展開支援、大手食品会社にてeLearning作成、大手自動車会社にて業務改善等に携わっている。(2021年7月時点)
芽吹くような活動にしたい、芽(めばえ)活動のはじまり
―――今日お集りの皆さんは、社会課題解決のための検討会や各種活動を実施していたと伺っています。活動を検討・組成し、動き始めた経緯を教えてください。
熊坂:
事の発端は2016年、当時在籍していた社員の一人が「芽(めばえ)活動なるものをやりたいです、メンバー募集」というのをGoogle+(当時の社内SNS)に投稿したところからです。 社会に芽を出させる活動とか、私たち自身も芽吹いていくとか、一歩踏み出すみたいなことができたらいいよね、そういう活動を継続的にやっていきたい、という意思のあるメンバーが集まりました。
日野浦:
そのメンバー募集をした社員は2014年新卒社員の一人で、この世代が特に社会課題に目を向けていて。彼らがLTSで仕事をする中で「もっと直接的に社会に貢献したい」という想いを持っていて、当時の部門長に相談すると「それならまず社内で何かやっちゃいなよ」と背中を押してくれました。
そこで、活動の名前を決める際に「芽吹くような活動にしたい」から「芽活動」と名付けられて開始したのが原点であり、きっかけです。そこで集まったうちの数名が、今日集まっている4人です。
熊坂:
LTSが社会に貢献していくとか、今のお客様やビジネスの環境だけではなく「新たに社会に芽を生み出す」となったときに「LTSらしい活動って何だろう?」と考えました。 未来に何かを残すという意味であれば対象は子どもにしたい、その子どもたちに対してLTSが何か価値を提供できないだろうか。
子どもが自分たちの考えを言葉で表現でき、相互の理解が進むことで問題解決につながる。そういったやりとりが生きる力になると考えて、子どもたちがそのために必要な何かを身につけられるようサポートすることが、LTSらしい社会への貢献の仕方じゃないか?そういった検討をしていましたね。
子どもに対して何かできることをしたい、では子どもに何か提供できるLTSのノウハウって何だろう?と考えたときに、出てきたアイデアが「子ども版CPS※」でした。
渡部:
おなかの空いた子に魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教える……みたいな。情報過多の世の中で、自分で考える力を持てるようにするってどういうことなんだろう?と考えた結果がCPSでした。
ちょうどそのころに見た、「小さな哲学者」という映画があって。自分たちが思っているよりも子どもって子どもじゃない。分かっていることも多く、いろいなことをよく考えている。だから、子ども扱いするよりも何かを教える場を作りたい、という考えがありました。
学校などで「子ども版CPS」を実施できないか?と考えていて、行き詰まっていたところ、社長の樺島に「LTSの中でやればいい」と言われたのがスタートです。
熊坂:
そうですね。一番身近な子どもはLTS社員の子どもなので「社員の子どもを集めるならFamily Dayをやろう!」という流れが、LTS初のFamily Dayを実施するきっかけだったと思います。 Family Dayという形にすれば、結果的に社員同士の交流もできるし、LTSの社員の子どもだからCPSやりやすいかも……という期待もあったような気がしますね。
評判だったFamily Day の「こどもCPS」
―――私も子どもを連れてFamily Day参加しました。「こどもCPS」をやってみてどんな感じでしたか?
日野浦:
子どもCPS、想定以上だったんですよ。想定以上に参加したお子さんたち中心で議論が起きて、想定以上に良い場になりました。
熊坂:
小学校4、5年生くらいの子が3人参加して、初対面で子ども同士で話すのも初めてだったかもしれないのに、いじめの話とか学校のクラスのこととか結構議論になったんですよね。ある意味お膳立てされて「なにか言わなきゃいけない」っていう雰囲気もあったかもしれないですけど、先ほどかんなさんが仰った通り子どもはたくさんのことを考えていて、むしろ小学校高学年なんて大人で本当に可能性があるんだな、と。
子どもたちが自分の意思を表明したり言語化したりして、魚を釣る方法を覚えていくことはすごく可能性のある活動だし、私たちも多くの刺激を受ける場だったなと思います。
塚越:
私は子どもCPSをやっている場所とは別のフロアで、中継を見ていました。中継は映像のみで音声がなく、それでも「子どもたちがしゃべっているなぁ」と思いながら見ていました。
すごいですよね、初対面なのに、どうやって話してみようという気にさせたんだろう。結構恥ずかしがって話したがらない年頃なのに。どういう雰囲気づくりをしたのか、気になっていました。
日野浦:
子どもCPSのファシリテートは、LTS社内でもやっていたCPSセッションでおなじみの、ベテラン山本政樹さんがやっていました。政樹さんは本当に誰に対してもフラット、あのまま、誰に対してもあのまんまで、子ども扱いしなかったから、それがよかったのかもしれないですね。
塚越:
でも、子どものファシリテーションが一番難しいと言っていましたね。
Family Dayの反響 会社にとって、社員にとって
―――Family Dayそのものの結果はどうでしたか?
日野浦:
Family Dayとしてやったことが、すごく良かったんですよ。
熊坂:
もともとの目的は「子どもたちの可能性を開く」とか、そのために何か貢献できないか?というテーマでしたが、結果的にFamily Dayという場が、思いのほか反響よかったんです。 「これはこの先もイベントとして継続したいね」という反応が多かったです。
日野浦:
参加したお子さん向けにアンケートを取ったところ、
「来年もまた行きたいです」
「お父さん・お母さんがこんなところで働いているんだって知れて楽しかった」
みたいな、超優秀な回答が集まりました。楽しかったんでしょうね。
熊坂:
毎年、参加した社員と家族で「名刺交換」をしているのですが、これが何回やっても盛り上がるんです。
日野浦:
だから、Family Dayは継続して実施することになりました。そうすると少しずつ「CSR観点ですごくいい活動」という評価をされ始めたんです。
2018年に2回目のFamily Dayを実施後、「Family Dayをやりました」というレポートを書いて、樺島さんが参加していた経営者の集まりに寄稿したんですよ。 それで樺島さんが「LTSではCSR活動の一環としてFamily Dayを実施しています」みたいに紹介していて「あれ、会社公式の取り組みになってる?」って初めて分かりました(笑)。
熊坂:
気が付いたら公式化されていましたよね(笑)。
日野浦:
良い活動でも、会社として実績の無いことを正式にやるのって、すごくリスクやハードルがあります。その活動の関係者だけでなく、会社全体のことも考えないといけない。一方で、こうやって想いある人が個別の活動として始めたことが、意義のある活動として会社にサポートされ進んでいく。そんな始まり方もあるんだなぁと思いましたね。
熊坂:
ちなみに、最初のFamily Dayでは会社公式のサポートはなく、予算的なところでいうと樺島さんや高麗さん(現財経部 部長、樺島とは大学の先輩後輩の仲)のポケットマネーでやってました。その後、会社で予算化されました。
日野浦:
Family Dayは通常、新宿の本社オフィスで開催していますが、静岡に住んでいる社員も多く参加するので、その際の交通費などをカバーしています。
熊坂:
必ず毎年静岡の社員が、ご家族と参加していました。最初は社員本人の交通費補助のみでしたが、その後はご家族の分もという話になりました。
日野浦:
そうしてFamily Dayは、その後も継続されました。
Family Day運営と、もともと考えていた芽活動は少しずつ切り離されて、Family Dayは会社として実施するイベントになりました。 だから、子どもCPSは初回の一度しかやってないですね。
同じ想いを持ちながら、活動を継続していく
―――その後、芽活動はどうなったんですか?
日野浦:
Family Dayはすごく良かったので、Family Dayとして残しました。改めて社会課題への貢献に立ち戻ると、芽活動として次にやることはって何だろう?という話になりました。
熊坂:
どういう活動をすべきか、参加しているメンバーはそれぞれに葛藤があったのではないかと思います。 思いのほか、Family Dayの反響が良かったがゆえに、当初の社会課題解決とFamily Dayのニーズは別の方向に向いてしまった。Family Dayは会社として継続するが実施主体は誰が担うのか、やはり芽活動として実施するのか。 一方で、本来目指していたものがありつつ、活動を進める中で変わっていく部分もありました。
塚越:
私自身も、Family Dayはそれとして残したいと思いつつ、今後どうしていくのがいいかを一度かんなさんと一緒に、忰田さん(本記事インタビュワー)にもお話を伺った事があったと思います。いろいろな人に話を聞くと、それぞれに想い描くFamily Dayの形が違ってきているなと感じました。
一方で、会社としては参加したご家族に喜んでもらうのが一番だよね、というのは共通していたと思います。今のFamily Day運営メンバーにはそれをしっかり引き継いでいて、活動としても成り立っているのでいいかなと思っています。
個人的には、何かサービスとしてやってみようとするならば、学ぶことにいろいろな障壁があって、満足に機会を得られない子たちにこそ、CPSみたいな考え方を教えてあげられたらいいなと考えていましたが、それはそれで別の活動として続けられたらいいなと思っています。
熊坂:
Family Dayは、参加者の年齢層が年を重ねるごとに小学生から中学生になったりして、実施する時期はどうしたらいいでしょうか?といった話をしていました。参加者に意見をいただくこともありました。
渡部:
何回かセッションを重ねて発表するとか、そういう形式も考えましたね。やれるかな?みたいな話をすると、最近の子どもはそんな暇じゃないっていう話になって。
塚越:
Family Dayの運営側に子どもたちに入ってもらう、みたいな話もしていましたよね。
渡部:
Family Dayは参加する子どもたちが、何かを学べる場にしないとけないという意識があって、コンテンツ検討は結構悩みました。
熊坂:
そうですね。毎回Family Dayの直前1カ月は怒涛の勢いで準備するので、そこをどう乗り切るか?どうしたら楽になるんだろうね?と話していました。そこは今も続いている課題です。
日野浦:
結構こういう活動って、始めるのは大変とはいえ勢いで進められますが、続けるのは結構大変なんですよね。
熊坂:
最初のエネルギーは瞬間的に出たとしても、それを毎年継続し、ある程度人が変わっても、想いの部分は持ち続ける。そして、関与するメンバーによって徐々に想いも変化して、いい意味で変わりながら活動を続けていくことって、すごく組織の質や力が問われるなと感じます。
(資料4)過去のFamily Dayの様子
…後編へ続く
ライター