大手メーカーに入社後、新規事業開発部にて、製品の提案および設計を担当。その後、LTSに入社。基幹システムヘルプデスクにて販売・購買における業務安定化、品質・生産性向上に寄与。現在は、製造BOM構築に向けた構想策定に奮闘中。(2021年11月)
インタビュー(前編の続き)
自分の穴を誰かが埋めてくれる、という安心感のあった休職中
舩木:
職場のメンバーからの反応はどうでしたか。
時短勤務にしたい、育休を取りたい、と言ったときの周りの反応は。
及川:
大きな変化はないですが、女性はもちろん男性も取っていいんだ!という印象を、周りに与えられていたらいいなとは思います。これからそういう機会を迎える方も多いと思いますので、そういう認識を持ってもらえたらいいですね。
当時のメンバーの中には、育休を取得された女性もいらっしゃいましたが、その後復職されました。そういう…休暇を取ってもいいんだという風潮がメンバーに浸透したらいいな、と自分は思います。
山本:
応援してくれる仲間がたくさんいたので、ありがたかったですね。
業務の方は…滞るところは滞ったと思います。私がボールをもっていしまっているものについては、リスケさせてもらったりしたので、周囲のメンバーはもちろん会社全体にも迷惑をかけしてしまっていたと思います。
ただ、私が一定期間休むことで、逆に良かったこともあったのかな、とも思っています。
自分がいなければ、誰かがその“仕事の真空”を埋めてくれることになるので、結果的にデリゲーションが進んだり、役割分担の見直しが進んだり、業務体制を活性化する機会にはなったりしたと思います。
そういう意味では、中期的にはポジティブな面もあるのかなと思います。
舩木:
周りの反応で言うと、わたしは同じ人事部なので、まさに「周りのメンバー」です(笑)。
山本:
そうなんですよね。正直ちょっとしゃべりにくいですよ(笑)
舩木:
ははは(笑)。
人事部という単位で言うとネガティブな反応は無かったと記憶しています。2回目の時はもちろん育休取得されますよね、という気持ちだったと思います、みんな。
山本:
今更ですが…自分が休んでいる間に、サポートしてくださったすべての皆さんに感謝しています。
本当にありがとうございました!
舩木:
1回目はくるみんの話もあって、山本さんがとってくれると有難いと思っている人も多かったんじゃないですかね。
あるとしたら、不安という気持ちだけで…。山本さんに対して何か、ということは無かったですよ。
山本:
そう言っていただけると…
あとは、自分の働き方という面での影響もありました。
育休を取る前まではあくまでもワークが中心でライフがおまけ、というバランスでした。育休を経て、10年スパンくらいの時間軸で、ワークもライフもトータルでどうバランスをとっていくのか、というスタイルに変えましたね。良くも悪くも、わかりやすく仕事一本からは、変わっちゃったかなと思います。
仕事を中心に考えながらも、人生のいろんな局面で中心とするものを、他のものに持っていくという、そういう振り子みたいなキャリアの作り方っていうのは、一つ考え方として悪くないんじゃないのかな、と思っています。
あとは仕事とは直接関係ないですが、親を筆頭に周囲の人々のありがたさを改めて実感しました。
自分のこれまでの人生、自分で考えて、自分で決めて、自分でやってきたと思ってきましたけど、まぁ、そうとは言えないかも、みたいな反省です。自分の力だけでやれてきたことなんてほとんどなくて、本当にいろんな人に感謝しないといけないな、と。
そう思うと、謙虚にさせられた、というか(笑)。人としてちょっと大人になれたのかもしれません。
舩木:
育児を通して、いろんな側面で変化があったんですね。
山本:
そうですね。
ちなみに、LTSのミッションは「可能性を解き放つ」ですよね。この「可能性」という言葉には、十数年接してきていますが、子育てを通してようやくわかってきたような気がします。
無条件で相手の可能性を信じるというのはこういうことなのか…と。育休が直接関係ありますかと言われたら関係ないかもしれませんが、もし「人の可能性を信じる」ということの意味が少し変わったのであれば、それは人生においては大きな変化だったんじゃないかな、という気はしますね。
育休は取る/取らないの二択ではない
舩木:
LTSの男性社員で、育休を取得したかったけどできなかった人っていましたか?いなかったと記憶していますが…。
山本:
うーん、どうでしょう。何となく取ってみたいけど、仕事のことを考えると難しいかな、というような思いをもっていた人はいたかもしれないですね。ぜひともとりたい、と思って、育休取得に向けて上司や周りに相談したけれども休暇を取れなかった、ということはないと思います。
育休って、取る/取らないの二択ではないと思うので、少しでも取りたいと思ったときに、ちょっとでも取れるようになるといいと思うんですけどね。LTSでは、かなり柔軟に対応しているんじゃないでしょうか。
舩木:
そのために会社ができることって何ですかね。
どんなことがあったら取りたいって言いやすいんですかね。
山本:
育休を「取りたい」という意志表示をしやすくすることが大切だと思います。
自分の周りにいる男性社員の奥さんが出産予定だと知ったら、「おめでとう!じゃあ育休はいつ取るの?」とこちらから育休をとる前提で聞くようにはしています。結果的には、「いや、取らないです」って言われることもあるんですけど(笑)。
「取るの?」とYes or Noで意志を聞かれちゃうと「取ります」と答えるには少しハードルが高いかもしれないので、上司も人事もあくまでも育休は取るものだという前提でコミュニケーションができると、いいんじゃないかと思います。
とはいえ、育休を取るにはたしかにちょっと勇気は必要かもしれません。
やっぱり仕事上での責任やキャリアとか、不安はゼロではないですよね。穴を開けてしまうというような感じがするじゃないですか。その間、どうしても仕事を止めてしまうんでね。
だからこそ、休むことで得られる良さだけでなく、安心して休んでもらえるような配慮や措置は必要ですね。育休から戻ってきた時に、またしっかりと役割責任を果たせるような機会を保証する。
及川:
あとは、なるべく早く上司に伝えることができたらいいですね。業務調整は、早い段階からするほうが良いと思うので。
山本:
そうですよね。
いつ休むか、どれくらい休むか、ここは赤ちゃんの都合ではなく自分たち(家族と職場)の都合で決められますから。予定日の半年前くらいから休む準備ははじめられる、半年間あったら絶対に準備できると思うんですよね、仕事の都合も。
出産日のギリギリになってから「育休どうしよう?」と悩むんじゃなくて、奥さんの妊娠が分かった時からどうしようかと考え始めたら、だいぶ変わるんじゃないですかね。
ライフイベントをきっかけに働き方を変えることができる
舩木:
いろんなケースを作って、自分に合う方法を考えられるのはいいですよね。
取らなきゃいけないものでもないし、会社として取ってくださいというものでもないし。でも、取ればよかった…と思う人は無くしたいですね。強い意思がある人は、いくらでもサポートできるんですけど、言い出せなかった、とか、本当は取りたかった、みたいな人は救えるといいなと思います。
及川:
ITコンサルって、働き方の選択肢が比較的多いと思います。スポットで業務に入ったり、柔軟なプロジェクトに入ったりとか。育休だけではなく、選択肢が広がって調整しやすくなる、それだけでもいいなと思います。
LTSには、いろんな選択肢を柔軟に受け入れてもらえる、そんな企業文化がありますよね。
舩木:
あくまで、子どもが生まれるのはきっかけ、ってことで。
それをきっかけに、時間の使い方とか変わってくるから、どういう働き方していきますか、というものの一つが育休や時短勤務であるということですよね。
男性社員からこういう話を聞いたことは無いですけど、子どものいない若手女性社員や、就活生から「仕事が忙しそうだから、子育てしながら働けないですよね?」という印象が多いなというのは感じます。
そうかもしれないけど、いろんなパターンがあるんだよ、こういう風にみんなやってるよ、というのがあれば先が広がるのかな、と個人的には思いました。
山本:
そうですね。
「取ったほうがいいのかな、取らないほうがいいのかな」と迷っている人には、まずは取ってみたら?と伝えたいです。
育休はより豊かな人生を送るための選択肢の一つ
舩木:
会社としてはいい機会ではあるので、休むことをどう推奨するのは難しいんですけど、やっぱりそういう雰囲気は作っていきたいなぁ、と思いました。
山本:
おっしゃるとおりですね。
ただ、ともすると、こういう話をする時はどうしても休む側を支援する話に偏りがちなんですよね。でも、休む側って実は恵まれている人たちじゃないですか?そもそも休む人を支えている人たちがたくさんいて、望んでもそういう状況にない人たちもまたいて…支えている側の人や、望んでも得られていない人たちに対する支援を充実させないと、よい会社とは言えないのかなと思います。
育休が「分断」を招いてしまっては悲しいので、両方の支援を同時にちゃんとやっていくというのは大事かなと思っています。
舩木:
はい。
休む側と、支える側と、そもそも休む機会に恵まれない方へのサポートも今後考えていく必要がありますね。
山本:
子育てって10年単位の話になりますが、その間の夫婦の役割分担のカタチって結構重いテーマだと思うんですよ。女性の活躍や出産後の仕事への復帰状況、キャリアの重ね方なんかを見ていると、いろんな国と比べて日本は偏っていて、まだまだ「男性にとって働きやすい社会」だな、と思います。
今後、女性にとって働きやすい社会に近づけていくためには、たぶん男性の家庭内での役割や仕事を相当増やしていかないといけないと思います。でも、それって会社には直接返ってこないですよね(笑)。LTSの男性社員が沢山育休を取っても、会社にはあまりメリットがないかもしれない。でも、そういうことを推進する会社であるということは、悪いことではないのかなと思います。
まずはその方の奥様がより豊かな人生を送っていくために、LTSの男性社員がしっかり休んでいく。そして育休を通じて男性社員の意識が変わり、その後の育児への関わり方を変えていく。
結果としてその夫婦や家庭が幸せになっていく。そうなれば、また仕事も充実して…という循環ができるとすてきだな、と思います。
舩木:
そうですね。
どういう事例があるかを、社内の皆さんが知らないと、選択肢としても思い浮かばないと思うので、山本さんや及川さんの事例を、そもそも社員が知ることっていうのが社員の人生の選択肢を広げることになるんだなと思いました。
山本:
はい。
そのうえで、育休の先の話になりますが…可能性の象徴である子どもたちをどうやって社会で守り育んでいくのか、というところは会社として絶対に取り組むべきソーシャル・イシューだと思っています。LTSが創っていくべきサステナビリティは、子どもたちが輝ける社会そのものであると。
育休の推進に止まらず、LTSとして子どもたちの未来を拓いていきたいと思います。
おわりに(インタビュワーコメント)
選択肢が多様にある現代において、「自分の人生をどう計画し、歩んでいくか」は1人1人が考えるべき重要なテーマです。今回は、育児中の男性社員2名に話を聞きました。今後も様々な社員、働き方を紹介する予定です。働き方や生き方には正解がなく、自分次第です。様々な事例を共有することが、1つの選択肢を知り今後について考えるきっかけになっていれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ライター
自動車部品メーカーにて、グローバルで統一された品質管理の仕組みの構築・定着化を支援。産休・育休を経て、CLOVER Lightの立ち上げ、記事の企画・執筆を務める。現在、社内システム開発PJに携わりながら、アジャイル開発スクラムを勉強中。Scrum Alliance認定スクラムマスター(CSM)、アドバンスド認定スクラムマスター(A-CSM)、Outsystems Delivery Specialist保有。(2023年12月時点)