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工場生産管理と基幹システムの連携をRPAで標準化 RPAベンダーに必要なこと

メッキ加工に強みをもつ東新工業様向けにITSO社が担ったRPA導入プロジェクトについて、インタビューしました。導入効果(ROI)から、パートナーとなり得るRPAベンダーを選ぶためのコツまで深く掘り下げます。

本記事は「CS Clip」で公開されている事例「生産管理システムのRPA導入プロジェクト」について、クライアント(東新工業様)インタビューを行った記事になります。


小松 隆(東新工業株式会社 総務課部長)

グループ会社である東新エンジニアリング株式会社より出向し、東新工業株式会社の4拠点の基幹システムやネットワークなど各種システムの管理や改善など、社内の情報システム全般を一手に担っている。(2022年11月時点)

深野 靖浩(株式会社ITSO 代表取締役)

ワークスアプリケーションズ社でERPシステム【COMPANY】の開発職に従事、ITコンサルタントとしてEYアドバイザリー社勤務時にRPAに触れる。株式会社ITSOを立ち上げ、RPAを中心に様々なITプロジェクトに従事。大規模システム開発の知見をRPAに取り入れ品質の高い支援を行う。(2022年11月時点)


東新工業株式会社について

創業 1966年8月 フープ材部分めっきのリーディングカンパニー
(ハイスペックなスポットめっきの量産化を行っている)

東新工業株式会社
本社横浜工場
〒236-0004 横浜市金沢区福浦2丁目10番13号
http://www.toshin-ind.co.jp/index.shtml


株式会社ITSOについて

RPAを主軸としたBPRコンサル支援を提供している。外資コンサルファーム出身者が中心となり設立した企業であるため、トップダウンのコンサルから、現場主導のボトプアップコンサルの両方を得意としている数少ない企業である。

株式会社ITSO
〒150-0013東京都渋谷区恵比寿1丁目19番19号
恵比寿ビジネスタワー 6F
https://itso-inc.com/


事業拡大に伴う他拠点向けRPA導入プロジェクト

―――今回のRPA導入プロジェクトの概要を教えてください

深瀬
深瀬

今回のお客様である東新工業様は、メッキ加工(フープメッキ)で非常に高い技術を有している企業様です。メッキとは例えばスマホのコネクタや自動車部品などで用いられており、会社としても非常に売上が伸びている中で、拠点の拡大にシステム面でも対応する必要がありました。

そのような背景で、プロジェクトは2019年にスタートしました。
本社の基幹システムと、工場の生産管理(Access/Excel)のデータを連携する機能を持ったRPAが既に導入されていたのですが、これをリファクタリングし他の工場にも展開するというミッションでした。

小松
小松

元々横浜工場だけ連携RPAを導入していたので、好間工場(福島県)からITSOさんと一緒に導入を進めて、好間、四倉(福島県)、松本(長野)へと追加導入してもらいました。

仕様書のない状態で既存RPAの調査から入ってもらったのですが、非常にスムーズに展開してくれて感謝しています。

工場ごとに異なるデータ形式や業務フローでも対応できる仕組みを作る

―――本プロジェクトのシステム開発で大変だったことや工夫があれば教えてください

小松
小松

そうですね、大きく2点あげられますね。
1点目はデータの持ち方の統一化です。
元々お客様先や社内の拠点によってデータの持ち方が統一されていなかったのです。このお客様の場合データベースはどこのカラムから取得しよう、といったように個々にやり方が異なっているケースですね。
これを簡単に対応できるようにITSOさんには苦労をしてもらいました。

深野
深野

個々の条件ごとに都度細かに設計するのは東新工業様にとっても大変なので、1つの仕組みの中のファイルをうまく置き換えて組み合わせれば機能するような共通化を実施させていただきました。システムのリファクタリングと、業務自体を改善することでこれを実現させました。

小松
小松

業務フローが社内の拠点間でも異なるというのが大きい課題でしたね。横浜はこうやっているが好間はこう、といった違いを見てもらって、最適な形をITSOさんに提案していただきました。

大きな違いとしては、受入業務は生産部門が対応していて、受注業務は管理部門が担当していました。この管理の範囲が拠点によって違っていました。

好間では半分が生産部門、半分が管理だったのに対して、横浜では全て管理部門が対応しているなどです。そうなるとデータに曖昧さが出てしまうので、自動化することで負荷をへらしつつ業務自体も統一していくように変えてもらいました。

深野
深野

そうですね、どんなことが発生しうるかをしっかり把握したうえで、可能な限り標準化を実現すれば現場の面倒も減らせますよね。可能な限り手間を省く。システムをつくるときにその考え方はかなり重要だと思っています。

(左)ITSO 深野様 (右)東進工業 小松様

経験豊富なエンジニアのサポートでRPA以外のIT課題も解決

小松
小松

2つ目は、実はプロジェクトの途中でDBをAccessからSQLサーバーへ切り替える、ということも並行して実施しました。いまの東新工業の成長スピードや規模からみると、Accessでは将来的に対応しきれないのが見えていたためです。

クエリを外だししてもらったり、選択条件を簡単にしたり、客先ごとに変更できるようにするなど、SQLサーバーに切り替えることで共通・安定化が図れました。途中で切り替えをお願いしたのもあって、これは結構大変だっただろうなと思います。

深野
深野

そうですね、ただ我々が他のベンダーと異なるのがこういう所だと思っています。 RPAエンジニアってRPA以外触れないという方も少なくないと思います。その中で弊社人材はエンジニアとして技術力の高い人材がRPA開発を行っているため、こうした例外的な対応も可能なのです。

こうした弊社のスキルと東新工業様の求めておられた姿がマッチしたのだと感じています。単にRPA開発をするベンダーではなく、課題を解決するパートナーとしての在り方と言ってもよいでしょう。

小松
小松

こういう臨機応変でスピード感のある対応には本当に助けられましたね。

年間48人月以上の削減効果。部門間のコミュニケーションも改善

―――RPAを導入することで得られた効果(ROI)について教えてください

小松
小松

導入から3年ほど経過しましたが、ITSOさんに導入いただいたRPAは社内でも非常に好評です。

投資対効果も高く、単純計算で4人月/月はカットできています。弊社は夜勤もあり24時間体制で動かしていることもあって、夜勤労働25%増の手当も加味すると実態は4人月という数値以上に効果がでていますね。

加えて数値には見えにくい部分ですが、社内の業務がより円滑になったという点は大きいです。実を言うと前述した生産部門と管理部門のコミュニケーションは従来課題がありました。データの催促や不備不足による再入力の通達などが原因ですね、以前はアナログで処理していたので、このようなやりとりは仕方がないと思っていました。

しかし今回のRPA導入でここが自動化されることで、お互いの精神衛生上もとてもよくなりましたし、本当に仕事がよく回っているなという印象を持っています。これは単純にコストでは測れないけれど、大きいメリットといえますね。

―――費用面でも大きいメリットが齎されたのは素晴らしいですね!3年経過してみて他にメリットやよかった点などあれば教えてください

小松
小松

実はこのプロジェクトをきっかけとして、UipathのライセンスもITSOさんでお願いしています。バージョンアップやオーケストレーターの設定なども全て対応してくださっているのです。
元々他のベンダーで購入していたのですが、ライセンスの販売のみで実用的なサポートは全くしてもらえず困っていたというのもあります。

一方新たにお願いしたITSOさんはしっかりと見てくれる。
パートナーとしてこれだけ信頼できる企業さんはそうそういないと思います。

正論よりも目の前の課題に真摯に向き合ってくれるベンダーを選びたい

―――ITSO様とパートナー企業として深い信頼関係を築いておられますが、良いRPAベンダーと出会うためのコツやポイントがあれば教えてください

小松
小松

このプロジェクトの発足時、実はベンダー選定にかなり苦戦していました。ITSOさんに依頼を出す前も多くのベンダーさんに声をかけていたのです。
しかしどのベンダーさんも正直パートナーとして一緒にやっていくイメージを全く持つことが出来ませんでした。

弊社の課題というのは、根本でいくと基幹システムがフィットしていないという点にあるのです。
基幹システムは様々な製品を検討しましたがどれも適しているとは言えず、現在活用しているSmileもフルカスタマイズを行い、やや無理をさせつつ運用をしています。
しかし問題があれども基幹システム(ERP)はそう簡単に入れ替えることはできません。
これが弊社の状況です。

小松
小松

しかしベンダーさんに見積を依頼すると、
「(基幹システムを含めた)この状況が悪いので先にコンサルを実施します」
「課題を整理して追加のオプションも提案します」
といった提案を沢山いただきました。

提案してくれるのはとても有難いことではありますが、我々も「基幹システムは簡単に変更できない」という現状のうえで相談をしているので、それを前提として課題解決に向き合ってくれるベンダーさんと出会いたかったのです。

それがITSOさんの場合は現実的に目の前の課題を解決する方法を複数プランで出してきてくれて、余計な話もなくとても明瞭かつ状況も察してくれている。
状況把握や課題解決へのスピード感が他社とは違うなとわかりました。
結果依頼をさせていただき、プロジェクト進行の中でも本当に迅速な対応をつづけてくれました。それは技術力が高いからこそ当然解決も早いし、会社の姿勢として即対応が一貫しているのです。
かれこれ3年以上のお付き合いになりますが、この信頼は損なわれることはなく、むしろどんどん増していると言っても過言ではありません。

―――自社の状況を理解したうえで、困っている課題にまっすぐ取り組む。そしてスピード感をもって対応してくれるのが大切なのですね。最後にパートナーであるITSOさんと今後こんなことを考えています、ということがあれば教えてください

小松
小松

このRPAプロジェクトが社内でも好評だったため、次のプロジェクトでも積極的にRPAを活用していこうという話になっています。
具体的には、問題があるとお話した基幹システムの刷新を検討しております。
例えばこのとき、販売や財務などパッケージで対応する部分と購買・生産など作り込みが必要なシステムが出てくると考えていますので、それらをRPAで連携をかけていくようなことを検討しています。

またその他業務改善のプロジェクトもいくつか検討中のものがあり、ここでもRPA、ITSO様を進んで活用していこうという話になっています。
いずれもこのプロジェクトでコスト・運用双方の観点で良い結果を出してくれたITSOさんがいてくれるから出ている声だと思いますので、パートナーとしていてくれて有難いといつも感謝しています。

―――1つのRPA開発プロジェクトだけではなく未来につながるITパートナーの選び方までとても学びになる素晴らしいお話でした、ありがとうございました!


ライター

CS Clip事務局()

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