ビジネス側と開発者が意思疎通するための工夫 アジャイル宣言の背後にある原則②のサムネイル
デジタルテクノロジー

ビジネス側と開発者が意思疎通するための工夫 アジャイル宣言の背後にある原則②

基幹システム関連のプロジェクトと言えば、アジャイルよりもウォーターフォール型が現在でも主流です。
しかし、長期間・大規模なシステム導入のプロセスを終えてから開始される、システム運用フェーズはどうでしょうか?
ユーザーの希望や業務の実態に合わせて、少しずつシステムを改修する、複数の追加要件から優先順位を付けて実装~レビューにまわしていく…
「これってかなりアジャイルなアプローチなのでは?」
実際のシステム運用プロジェクトの中で、アジャイルアプローチの適用を挑戦したコンサルタントの経験をもとに、アジャイルによる業務のアップデートのやり方をレポートします。

こんにちは、株式会社エル・ティー・エスでITコンサルタントをしている坂口沙織です。「アジャイル・アプローチへの挑戦」第2回目の投稿です。

とあるお客様企業にERPを導入するプロジェクトに関わっていた経験をもとに「アジャイルソフトウェア開発宣言」と「アジャイル宣言の背後にある原則」に沿って、プロジェクトでアジャイルアプローチを可能にしている要素、アジャイルアプローチのメリット、デメリットなど気づいたことを共有していきたいと思います。

「アジャイルソフトウェア開発宣言」「アジャイル宣言の背後にある原則」って何?という方は第1回でご紹介していますのでそちらを参照してください。

原則その4「ビジネス側の人と開発者は、プロジェクトを通して日々一緒に働かなければなりません」とはどういうことか

今回はアジャイル宣言の背後にある原則その4「ビジネス側の人と開発者は、プロジェクトを通して日々一緒に働かなければなりません」について、プロジェクトでの事例を共有します。書きやすいところから、ということでいきなりその4から入ります。ご容赦ください。

通常のプロジェクトでも、もちろん重視される点ですが、アジャイルでは特に綿密なコミュニケーションが重要な成功要因となります。日々変更される優先順位を伝えたり、小さなものでもリスクや懸念事項を関係者間で共有したりする必要があるからです。

その点で、今回のプロジェクトは有利な特徴がありました。それはユーザサイド・ベンダーサイド双方にLTSがいるということです。ベンダーサイドにはERPおよび周辺システムの開発ベンダーを束ねる立場としてLTSがおり、企画構想、要件定義、開発管理などを担当しています。

一方、ユーザサイドにはカウンターであるシステム企画部門と主要なユーザーである財務部部門の支援としてLTSメンバーがおり、企画構想、要件定義、ユーザテスト、システム運用、ヘルプデスクなどを担当しています。私、坂口はこのユーザサイドを担当していました。

ユーザサイドでは業務要件を言語化することが難しかったり、納品されたシステムの品質を確認する方法がわからなかったりといった部分をLTSメンバーがサポートしています。一方、ベンダーサイドでは開発ベンダーに不足しがちな業務視点でのシステム設計、テストをサポートしています。業務とシステムの橋渡し役が両サイドにいることで、両者の意思疎通を円滑にしているのです。

ビジネス側と開発者が意思疎通するための工夫

「ビジネス側の人と開発者は、プロジェクトを通して日々一緒に働かなければなりません」という観点では、物理的にはベンダーサイドはLTSオフィス、ユーザサイドはお客様オフィスと拠点が分かれているものの、対面またはウェブ会議や電話、チャットでのコミュニケーションを積極的に利用し、コミュニケーションミスや認識違いの余地がないように心がけています。

また、比較的コンパクトな体制であることもアジャイルアプローチを可能にしている要因だと感じています。ユーザサイドのプロジェクト体制は現在カウンターのお客様として業務革新・システム企画室3名、財務部2名、LTS+他社メンバー6名の11名体制です。優先順位の入れ替えやスケジュールの変更が発生した場合もこのメンバー間で共有すればよく、大掛かりな承認プロセスを踏む必要がないため日々かなり細かく調整をかけることが可能となっています。

第2回はプロジェクトの前提となる体制、私の立ち位置の説明も含めてしまいましたが、今後アジャイルアプローチのメリット・デメリットをお話しする上でも事前に説明しておきたい内容でしたのでご紹介しました。

次回はアジャイル宣言の背後にある原則その3「動くソフトウェアを、2-3週間から2-3ヶ月というできるだけ短い時間間隔でリリースします」について紹介します。お楽しみに。


ライター

坂口 沙織(LTS コンサルタント)

基幹システム導入PJを中心に、IT導入PJにおけるユーザー側タスクの支援に一貫して携わるビジネスアナリスト。構想策定から導入後の運用安定化支援まで、システム導入のライフサイクル全てに関わる。Scrum Alliance認定スクラムマスター(CSM)。(2021年6月時点)