コンサル×データサイエンスの視点から読み解く AIでビジネス課題を解決する企業の裏側(後編)~事例から見る、本社がリードするデータ活用組織のつくりかた~

DXLTS

この記事は、LTSのコンサルタント兼データサイエンティストの2名による対談記事です。「企業のデータ活用に興味がある」「自社でデータ活用をはじめたいが何から着手すれば良いか分からない」「自社のデータ分析やAI活用を推進していきたい」と考えている方におすすめです。

※1 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/r02_05_houkoku.pdf

※2 データサイエンティスト:データから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出すプロフェッショナルのこと(データサイエンティスト協会より)

坂内 匠(LTS マネージャー)
CRM領域にて、顧客事業所の業務改善や計画策定支援を担当。マーケティング領域の支援、製造データ・業務データ分析から顧客現場の変革を推進する支援にPMとして携わる。その他、市場調査や中長期戦略のレポーティングにも携わる。統計士、データ解析士の資格を持つ。

大坪 亮太(LTS マネージャー)
大手自動車部品メーカーの経営企画部門に入社後、中計策定などに携わる。またデータ分析手法を導入し、売上予測・自動車販売予測などを実施。LTS入社後は、データ分析PJに参画。主に、金融・商社向けPJを担当し、PMとしてメンバーを率いる。

データを活用した経営がDXの機運の高まりとともに注目される

プロジェクトが全社規模へ変化

坂内:
数年前はPoCのプロジェクトが中心で、そのオーナは現場の部長や室長で、自分の見える範囲の業務課題を解決するPoCが多かった印象です。最近だと、最初から経営マターになっているのが違いかなと思います。

大坪:
プロジェクト規模が変わってきましたよね。全社課題として認識されるようになったのかもしれないですね。

坂内:
そうですね。AIだけというよりも、DXなどの大きい流れとも合流して、データを活用した経営という考えが経営者の中にも出てきて、だったらAIもやらなきゃ、という流れだと思います。

大坪:
そうですね。

坂内:
数年前は、データ分析のためのインプットになるデータが企業の中に少ないという問題もありました。データが無くて解決ができないとなったら、それなら別の課題に行こうか、という感じでした。そこは変わっていないんですよね。

大坪:
変わっていないですが、そこで諦めるのではなく、「では、データの収集や管理から一緒にやりましょう」といってプロジェクトが始まることも多いですね。データ分析できる人の中でも、データマネジメントとか、データ分析の前段のレベルの人でさえ、数年前は世の中にそんなにいなかったと思います。なので、そこまで手が回らないというのもあったかもしれないですね。

坂内:
そうですね。正直、データマネジメントのところも、数年で分かる人が増えたかと言われるとそのような感覚は無いんですよね…。

データ分析に対応できる人材の社内育成

大坪:
DXとかデータを活用したビジネスの在り方を考えるにあたり、各企業内でのデータマネジメントも含めたデータ分析ができる人材の教育は進んではいるんですけどね。外部の人材でも、データ分析の専門家や、データサイエンティストも、様々なプロジェクト経験を積みながらデータマネジメントの必要性を理解していくと思うので、経験でスキルを伸ばしていく人もいると思いますね。いろんな種類の人がいると思います。

大坪:
また、今多いのは内製化のところですよね。AIを作る人を内製化したいのではなく、データ分析にある程度の知見を持っていて、その一定の知識を部門や事業会社に置いておきたいというニーズがあるようで、データ分析のための底上げの教育をしたいという声が増えた印象です。

坂内:
AIやデータ分析ができる人材の育成、結構みなさん諦めずにやっているイメージですね。AIといっても、とても幅広いので、全員がAIのアルゴリズムを書ける必要はなく、基本的な統計、統計の評価指標の考え方、回帰分析、統計のありがちな解釈の間違いなど、基礎的な知識として持っていないと、AIの出力を基にしたコミュニケーションはそもそも成り立たない、というのがあるんですよね。なので、その辺は結構頑張って教育研修をされている企業からは、今でも引き合いがありますね。継続的に実施されているようです。

大坪:
そうですね。その育成のための研修も、難しすぎるとダメなんですけど、底上げのための最低限持っておくべき知識というのは、データ分析を会社の中でどこまで使うのかに限らず、ビジネスの中での一つの必要スキルとして持っておきたいという、そういうニーズがあるような気がします。データサイエンティストなどは外部委託すると、その中身がブラックボックスになってしまうんですよね。ある程度、データに詳しい人にはその中身について話ができるようにしておきたい、という想いも企業側にはあると思います。

本社主導でデータ活用組織をつくる事例①

坂内:
LTSでは多くの企業を対象に、データ活用組織を作るためのお手伝いをしています。企業内のデータに着目して、アセスメントによって企業の目的に応じた、最適なデータ利活用の企画立案から実行までを支援しています。そのいくつかの事例をお話ししたいと思います。まず、企業の情報システム部などが主導してデータ活用を進めている例です。

大坪:
本社のIT部門の中にデータ分析組織があり、グループ企業内の各子会社や事業会社が持っているビジネス課題に対して、データ分析の分野からどんなお手伝いができるかということを検討する役割を担っています。我々のいるデータサイエンティストチームも、そこに所属しています。また、同企業内にこれとは別軸で、課題解決のコンサルティングを担うコンサルティングチームもLTSから入っています。社内の様々なプロジェクトは、そのコンサルティングチームによって立ち上がり、我々データサイエンティストチームも参画していきます。

坂内:
LTSは全体の中でも、現場寄りの課題解決を支援していますよね。

大坪:
まず、データ分析組織はこういった組織ですよ、という情報をその企業グループのイントラ上で発信しています。そこに来た、各会社からの依頼に対応していきます。

大坪:
来た課題に対しては対応しながらも、例えば、事業会社から来た課題に対して、先方の想いも汲んで少し深堀してみると、他にもデータ分析で解決できそうな課題が見つかることもあるので、それをベースにこちらから逆に提案することもあります。まだデータ分析チームができて2年くらいなので、まずはしっかり事例を溜めていって、社内的にアピールをして認知度を上げていきたいと思っています。

大坪:
今ある課題としては、課題が出ないということの他に、データ分析ができるチームがいるという認知自体があまり広がっていないので、その認知度を上げる必要があるかなと考えています。

坂内:
うちは、その企業をご支援して何年になるんですかね。

大坪:
3年くらいやっていると思います。

坂内:
その中で見えた変化などありましたか?

大坪:
プロジェクトに対する予算規模は変わったと思います。もともとメンバーは、わたし一人だったんです。その企業にあったデータを分析して、グループ内に発信していくというのが、最初のねらいでした。グループの個々の事業会社が持っている課題に対してアプローチしていく、ではなく、あくまで今自分たちが持っているデータを分析したらどんなバリューが出せるか、という観点で始まったんです。

大坪:
そういったことを繰り返しながら、いろんな子会社とコミュニケーションをとっていくにあたって、時代の流れやDX推進みたいなところを本社も気にするようになった結果、そのプロジェクトに予算が付くようになり、メンバーも増え、プロジェクトの規模も、グループ全体に対するデータ利活用を支援するという形になりました。流れが変わったのは2年前くらいだと思います。DXの取り組みとしては、世間一般からは少し遅かったかもしれないですけど…。

坂内:
世間より早いと思いますよ。遅いところは、まだ始まってもいないですよ。

本社主導でデータ活用組織をつくる事例②

大坪:
関連して、別の企業でも同様の取り組みをしていました。そのプロジェクトでは2018年くらいにデータ分析チームが立ち上がりました。当時のお客様の本社方針としては、各グループ会社に対して、データ分析でソリューションを提供していく、ということでした。様々な種類のグループ会社があったので、そこに入って分析をやっていました。

大坪:
今は方針が変わって、データ分析の企画立案は事業会社それぞれに任せられていて、そこに対してデータサイエンティストの知見やサポートが必要であれば、本社から派遣します、という形になっています。データ分析チームもそれに伴い、一度は解体されましたが、再編成されました。一般論としては語れないですが、最初のやり方(本社から入っていきサポートする)が良い方法ではなかったという反省かもしれないですね。

坂内:
本社から入ることの難しさがありますよね。

大坪:
やっぱり各ビジネスが分かっていない本社の人たちと現場とが、データ分析で何をやるのかという考えが合わなかったんだと思います。なので、しっかり業務のコンサルティングができる人、現場のビジネスや業務をある程度勉強して理解した上で、コンサルティング部分から一緒にやっていくやり方のほうが、現場の反感も買わず推進しやすい体制なのかなと思いますね。

大坪:
もちろん現場で人を育てたいという意識はありつつも、すぐには難しいので本社機能でコンサルティング機能を持ち、各現場とデータ活用を進めていくというのが直近の動きだと思います。

大坪:
両社ともデータセンスがある人が社内に不足しているので、挙がってくる課題の質に問題があります。それは、データ分析でなくても解決できるな…というものがあったりするので。そこが、先ほど言った全社的な底上げというものにつながるんですよね。データセンスやデータリテラシーを上げていくことができれば、そこから出てくる課題もクリティカルなデータ分析で改善できそうなものになり、よりよく進み・回るかなと思います。なので、個々のプロジェクトも進めつつ、全社的な底上げを進めることが今後の方針の一つだと思います。

本社主導の横断型か、現場がパワーアップするボトムアップ型か、それ以外か

坂内:
本社主導でデータ活用を進めている企業は、意外と存在するんですよ。LTSが以前ご支援した大手メーカーもそうでした。そこにはデータ分析チームがいて、研究員なので技術レベルが皆さんかなり高いんですよね。彼らが各現場の方とコミュニケーションとりながら、AIを使ってどういう品質改善ができるのかというプロジェクトを多数動かしていました。我々はそこに対するプロジェクトのご支援と、研究員の人たちに技術を教えるというスキトラをやっていました。

坂内:
企業におけるデータ分析チームの持ち方をテーマに、以前LTSのチーム内で議論をしたことがありました。そういう本社が主導してデータ分析チームを派遣するタイプと、初歩的なところから現場で研修していくタイプと2タイプあるんです。条件次第かな、と考えています。現場の力が強い会社という社風的なものもあれば、目指しているデータ分析のレベル感にもよります。AIは必ず使わなければならないということではありません。データをBIツール※3に入れて可視化するだけでも、大体の業務課題が改善されることも多いんです。であれば、現場の方にこのツールの使い方を覚えてもらうことがボトムアップとしては早いです。

※3 BIツール:ビジネスインテリジェンスツールの略で、企業に蓄積されたデータを収集・分析し、迅速な意思決定を助けるのためのツールのこと。

大坪:
まだ始めていないけど、今後そういう取り組みをやりたいという企業さんに対して、本社横断型か、ボトムアップ型か、どっちがいいのかという話ですね。

坂内:
どちらかを試してみて、間違えることは良いことだと思うんですよね。でも、良くないのは間違って引き返せないパターンです。例えば、企業の中に大きな組織体を作って、人員をたくさん入れて、大掛かりなITインフラを入れてやってみたけど、いざ始まると現場からの反感があり動かない…というのがレガシーになってしまい良くないパターンですね。

坂内:
そこを避けるという意味だと、AIの歴史がたどってきたように、まずはできる範囲でPoCをやっていき、自分たちに適しているのはどちらか?を検討できたらいいですね。あとは、今は二極化の話をしていましたが、また違った組織の持ち方も当然あると思うので、まずは小さく失敗しながら模索していくというのがいいんじゃないんかなと思いますね。

大坪:
そうですね。一般論的になってしまうかもしれないですが、スモールスタートで社内の動きや社風や予算などの制限を鑑みながら、小さな部分から始めて、自社にはどのようなデータ利活用の進め方があっているのかを模索していくというやり方が一番いいかなと思います。

大坪:
この会社はこのタイプが合う、というのは一概には言えないですね。言えたら分かりやすいかもしれないですが…実際失敗している企業も成功している企業も、共通点がないんですよね。失敗を重ねて、だんだん大きくするのが一番確実ですね。


執筆者

ayumi.oyama
ayumi.oyama

CLOVER編集部員。育休復帰後、CLOVERの立ち上げ・運営に携わる。
主に、記事の企画立案・取材・執筆を担当。仕事と娘2人の育児で毎日がにぎやか。
地元は九州。通訳、翻訳、心理学の勉強を細々と続けている。

編集者

yuya.kaseda
yuya.kaseda

CLOVERの編集・全体監修~メディア企画・運営全般。
SE、テクニカルライターを経てLTSでコンサルタントを経験、現在はLTSのマーケティングGリーダー。
スライド式QWERTY物理キーボード愛好家。