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お客様が評価しているサービス品質とは システム開発は接客業④

このコラムは、株式会社エル・ティー・エスのLTSコラムとして2015年2月から連載を開始した記事を移設したものです。

ライター

山本 政樹(LTS 執行役員)

アクセンチュア、フリーコンサルタントを経てLTSに入社。ビジネスプロセス変革案件を手掛け、ビジネスプロセスマネジメント及びビジネスアナリシスの手法や人材育成に関する啓蒙活動に注力している。近年、組織能力「ビジネスアジリティ」の研究家としても活動している。(2021年6月時点)  ⇒プロフィールの詳細はこちら

前回は「顧客満足」って何だろう?についてお伝えしました。
顧客満足とは「顧客の事前期待に対して、実績評価が大きい」状態、ということでしたね。お客様はサービスを受けながら色々なポイントを評価しています。今回は、サービスに対してお客様が評価しているポイント=品質について掘り下げていきましょう。

初回コラムのおさらいになりますが、お客様はサービスを受けたとき成果品質プロセス品質を評価しています。例えばレストランの場合、お客様が評価する成果品質は“美味しい食事”です。それに対しプロセス品質は“店員の接客や店内の清潔さといった食事以外の部分であり、お客様は成果品質とプロセス品質どちらもチェックしています。それらの評価が事前期待よりも高ければ「このお店は良かった!また来よう!」と満足してリピート客になって頂けるわけです。

成果品質とプロセス品質のふたつに分解しましたが、この状態だと「サービスの品質を向上させよう!」と思っても具体的な施策を考えづらいですよね。「成果品質を高めるためにより美味しい料理をだそう!」「プロセス品質を高めるためにもっと丁寧に接客しよう!」では漠然としています。実際にどのように行動を変えたら良いのかまでは見えてきません。そこで、サービス品質を高める努力を具体的に検討するために、サービス品質をもう少し細かく分解してみました。

また、これら6つの品質の相関図は以下の通りです。

初めてサービスを受ける時、誰しも期待と不安の入り混じった状態です。例として、寿司屋に入ろうとしているお客様の心境を見ていきましょう。

(なかなか雰囲気の良さそうな店だな・・・特に調べてこなかったけど入ってみるか)暖簾をくぐって店の中に入ると「いらっしゃいませ!」と感じの良い挨拶。(外観で予想した通り、店内の雰囲気も良い。まずは合格ラインだな。)』

サービスを受ける際に一番最初のチェックポイントになるのが「好印象」です。接客態度の感じは良いか、店全体に清潔感があるかどうか等をお客様は瞬間で評価しています。

初めて入ったお店なので勝手もわからないため、とりあえず「お任せで」と注文しました。すると板前さんが「どのようにしましょうか。もしご予算あればそれに合わせますよ。」と言ってくれました。(良かった、予想より金額が高かったらどうしようかとドキドキしてたんだよな・・・)少しホッとしながら予算を伝えました。それから「何か苦手な食材はありますか?」と確認されたので「魚卵が苦手です」と答えると「では白身魚に変えましょうか、今日あるのは・・・」と快く別の素材を提案してくれました。その後もさりげなく好みの酒について聞いてくれたり、こちらの食事のペースを見て次の品を出してくれたりするので(居心地の良いお店だな)とリラックスしてきました。)

お客様が何を期待していて、何に不安を頂いているのかをキャッチするアンテナの役目をする品質が「共感性」です。共感性を発揮して察知した期待(苦手な食材は変えてほしい)に応えるような対応をすることが「柔軟性」であり、不安(予想より金額が高かったらどうしよう)を取り除く対応をすることが「安心感」を与えることになります。なお、オーダーを間違えない「正確性」や、ファーストドリンクを待たせない、その後のお酒もお客様のグラスを見てテンポ良く出す「迅速性」はベースの当り前品質としてあるためこれらの品質が期待を下回らないこともポイントになってきます。

食事が終わって会計も済ませたころには(ここは気の利くお店だし、当たりだったな!)とすっかり満足していました。お店を出るときには一緒に外まで出て見送ってくれ、(ぜひともまた来よう!)とさらに満足度がアップしました。

最後は「好印象」で締めくくられた、という状態ですね。このような流れで最終的にお客様に満足頂けると、めでたくリピート客になって頂けるというわけです。

ちなみに寿司屋の実例で、まったく逆のパターンもありました。私の知人が都内の超有名店を予約し期待に胸をふくらませて行ったところ、店員に愛想は無く、自分たちで好きなものをオーダーすることもできず、板前から出された寿司をテンポよく食べることを要求されたそうです。

また、隣にいた別の客に話しかけたところ「食事中の人に話しかけるのは行儀が悪い」と怒られてしまう始末。途中からは板前から怒られないように緊張しながら食事をすることになり「まったくリラックスできなかった。もう二度と行かない。」と、怒りを通り越して呆れた表情で報告をしてくれました。

顧客満足は基本的に成果品質とプロセス品質の掛け合わせで成立しますが、寿司屋など、特定の“職人”に紐づくブランドで成り立っている業態は極端に成果品質に寄っている場合があります(私語厳禁の強面店主が切り盛りする有名なラーメン店もありますね)。それらは職人が尊敬されるという特殊な業種では成立しますが、その他の業種で高品質なサービスを幅広く展開していくことを目的としている場合は、成果品質のみを追求して顧客満足を得ることは難しいと言えます。

自分たちのお客様がこれまでに出てきた6つの品質の中で特にどの点を評価しているのか。成果品質寄り?プロセス品質寄り?どちらもバランス良く?これらをまずは分析してみることが、品質向上の鍵になります。

いよいよ次回からシステム開発の顧客満足に関するお話をします。システム開発におけるプロセス品質は何なのか?について一緒に考えていきましょう。