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リーダーシップ

LTSの企業理念はここから生まれた① 変化に適応できる組織作りに役立つ7冊

この記事では、LTSの組織作りに影響を与えた本について、LTS 執行役員山本政樹さんへインタビューした内容をご紹介します。山本さんが考える「読書」とは、本を通して見るLTSの企業理念の根底にある考え方とは。全4回です。
山本 政樹(LTS 執行役員)

アクセンチュア、フリーコンサルタントを経てLTSに入社。ビジネスプロセス変革案件を手掛け、ビジネスプロセスマネジメント及びビジネスアナリシスの手法や人材育成に関する啓蒙活動に注力している。近年、組織能力「ビジネスアジリティ」の研究家としても活動している。(2021年6月時点)  ⇒プロフィールの詳細はこちら

LTSのミッション・ビジョンの基となる考え方

―――LTSは2020年1月に、アップデートしたミッション・ビジョンをリリースしましたよね。

そうですね。それに先立って2年くらいに渡って社内で議論を重ねました。対談でも話しましたが、その際にはさまざまな本がとても大切なインプットになりました。

―――LTSのミッションは「可能性を解き放つ~人の可能性を信じ、自由で活き活きとした人間社会を実現する~」ビジョンは「世界を拡げるプロフェッショナルカンパニー」ですね。

はい。その前提となっている世界観は「ネットワーク型」の組織です。組織に所属する人は、原則として対等であるという考え方ですね。

人がピラミッド型に上下関係でつながっていて、誰かが誰かに命令や指示をし、誰かが誰かに従うという構造ではありません。組織に所属する人が、同じ目的・目標・世界観を共有することで、結果的にそこには規律が生まれます全員が自由に動いているように見えて、実は根底に同じことを共有した自律した人たちの集団であるために、一定の秩序が保たれているというのが組織の理想だと考えています。

ネットワーク型組織は組織の姿として素晴らしいというだけでなく、今の時代の経営の必然でもあります。

昨今の経営環境は変化が速く、自社の経営を環境変化に対していち早く適応させていく必要があります。この変化への組織の適応能力を「ビジネスアジリティ」と言いますが、程度の差こそあれ、ビジネスアジリティの高い組織はネットワーク型の組織形態をとっています。自律性が高く、個々人がネットワークでつながる組織は、判断が速く、複雑な状況に対しても柔軟に対応できるからです。

―――そのような姿でありたいという想いが、アップデートされたミッション・ビジョンにも込められているのですね。

社会全体としてもそういう世界であってほしいと思いますし、LTSもそうありたいという想いがあります。今回、紹介する本は、この考えを形作る上でベースとなったものとなります。

LTSの組織作りに影響を与えた7冊

―――ありがとうございます。では、ご紹介いただく本を教えてください。


はい。読んでいただきたい順に紹介します。
ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(フレデリック・ラルー)
ビジョナリー・カンパニー ZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる』(ジム・コリンズ)
適応力のマネジメント―アダプティブ・エンタープライズ (Harvard business school press)』(スティーブ・ヘッケル)
凄い製品開発 テスラがトヨタに勝てない理由』(ジム・M・モーガン)
最難関のリーダーシップ ― 変革をやり遂げる意志とスキル』(ロナルド・A・ハイフェッツ)
なぜ人と組織は変われないのか ― ハーバード流 自己変革の理論と実践』(ロバート・キーガン)
学習する組織――システム思考で未来を創造する』(ピーター・M・センゲ)

―――なぜこのような順番で読むのが良いのでしょうか。

本来これらはどんな順番で読んでもかまいません。自分自身もこの順番で読んだわけではありません。ただ、振り返ってみて、今これらの本を読書会で共有していくなら、どのような順番にするだろうか、という点で考えてみました。

前半の三冊『ティール組織』『ビジョナリー・カンパニー ZERO』『適応力のマネジメント』は、経営としてどのような組織づくりをするのかという観点の本になります。ここでまず、現在の社会で目指すべき組織の在り方を経営目線で知ることができます。

その上で『凄い製品開発』は視点をより現場に移して、ネットワーク型組織における従業員の働き方のイメージを得ることができます

そして、その後の二冊『最難関のリーダーシップ』『なぜ人と組織は変われないのか』はそのような組織における個人の在り方に焦点を当てています。前半で読んだ本に書かれている組織を実現するためには、個人がどのような振る舞い、自分自身の内面を見つめていかなくてはならないのか、という点に焦点をあてています。

そして最後の『学習する組織』は全体のまとめのような位置づけになります。私としては、このような順番で読むことでLTSの目指す組織の在り方を効率的に理解できるのではないかと考えました。

『ティール組織』でネットワーク型組織の究極の姿を知る

既成概念を覆すほどの衝撃

―――まずは、ティール組織でしょうか。

はい。“ネットワーク型の組織とは?”を端的に理解するために、初めに読んでほしいです。この本では、いわゆる“上司のいない会社”を描いています。それは、すべての人が対等であり、管理するものとされるものという構造がない姿です。

このような究極のネットワーク組織をこの本では“ティール組織”と表現していますが、ティール組織の姿を豊富な実例を交えて解説した本となります。読むと驚くというか、既成概念を根底から覆されるような感覚を味わえると思います。

―――例えばどのようなところでしょうか。

今、お話ししたようにティール組織には上司がいません。よって何か行動する際に上司に伺いをたてる必要はありません。予算もなく、個人は自由に必要なコストを使うことができます。個人が為すべきと思ったことを、自由に行うことができるのです。もちろん、行動するときには周囲の関係者とは連携しなければなりませんが、それは組織がフラットで、全員が対等な関係の中での協調となります。

人は、組織内の部門などといった括りに制約されることなく、必然性がある人と1対1の関係性を持って繋がっています。一言でティール組織といってもいろいろな運営形態があるのですが、特徴的な部分をかいつまんで言うとそのような感じになります。

―――分かりやすいですね。今お話を伺っただけでも、凄い組織だなと感じます。

この本は、そういうネットワーク型の組織の姿を描いています。分厚くて読みやすい本ではないと思いますが、事例と解説が豊富でイメージはしやすいですね。

気を付けてほしいのは、これはかなり極端な姿であるということです。私自身、この本に書かれた姿が必ずしも正解だと思っていません。正直、著者の主張には少し偏りがあると思いますし、矛盾も感じるところがあります。

多くの人がこの本に惹かれる理由

―――それでも、この『ティール組織』を読んでほしいのはなぜですか。

描かれている像が極端であるが故に、そして文章の表現もエッジが効いているので、まず自分たちが普段当たり前だと思っているものと対極な姿を知ることができます。その振れ幅を作ることができるという意味では、一連の本を読む中でまず初めに読んでみてもらえるといいかなと思います。

読んだときに、自分の頭の中や心の中に巻き起こるものが何なのかを、人と共有して見てもらえると面白いですよね。様々な意見が出ると思います。

―――先ほどもおっしゃったように、結構分厚い本ですね。約600ページあります。

気を付けてほしいのは、この本にはボリュームを減らして、要点だけをわかりやすくまとめた解説書がたくさん出ています。しかし、それでは核心に触れることはできないと思うので、しっかり原作を読んでほしいです。

この本は一時期大ブームになり、誰でも参加できる読書会がたくさん開催されていました。なぜ、そんなにも多くの人が惹かれたのか、この世界観を議論したいと思ったのか、それを考えてみることにまず一つ大きな意義がある気がします。

このティール組織で極端なネットワーク組織の姿を知った上で、次に読むのは『ビジョナリー・カンパニーシリーズ』をお勧めします。

…つづく


ライター

大山 あゆみ(LTS コンサルタント)

自動車部品メーカーにて、グローバルで統一された品質管理の仕組みの構築・定着化を支援。産休・育休を経て、CLOVER Lightの立ち上げ、記事の企画・執筆を務める。現在、社内システム開発PJに携わりながら、アジャイル開発スクラムを勉強中。Scrum Alliance認定スクラムマスター(CSM)、アドバンスド認定スクラムマスター(A-CSM)、Outsystems Delivery Specialist保有。(2023年12月時点)