ビジネスのあらゆる場面で活用できる「エニアグラム」勉強会レポート ~ 自己理解と他者理解を深め、個人や組織の成長につなげる ~

LTS働き方

この記事では、LTS社内で開催したエニアグラムファシリテーターの大島様を招いた勉強会の様子をご紹介します。いわゆる心理アセスメントの一つである「エニアグラム」ですが、他の心理アセスメントとはどのように異なるのでしょうか。

チームビルディングや成長のためにどのように活用できるか、エフェクチュエーションとのかけ合わせについて、採用領域でも注目されている…など、その議論の一部をまとめました。

はじめに エニアグラムは「自分と他者を理解するツール」

エニアグラムとは、心理学の性格類型論の一つです。性格類型論とは、原理に基づいて典型的な行動や心的特性を設定した類型に分類することで、その全体像をとらえようとすることです。

分かりやすいものには「性格診断」があり、いくつかの質問に答えて、自分の性格、強み、弱みを調べることは、誰しも一度は経験があるのではないでしょうか。

エニアグラムという言葉は、ギリシャ語で「エニア」は数字の9を、「グラム」は図形を意味します。

その語源の通り、人間の性格を9つのタイプに分け、その相互関係をエニアグラムの図形に落とし込み説明しています。無意識の中にある強い感情・情動や動機によって人間のタイプ(性格)の違いが出るとされ、それぞれの価値観や思考、物事の捉え方の違いとして現れるとともに、対人関係においてもその特徴が出ると言われています。

一般的な性格診断のような社交性がある/ない、積極性がある/ない、のような性格を形成する特性因子を数量的に把握し客観化したものではなく、性格の特徴を全体像として説明しているところが特徴的です。

エニアグラムの性格類型論は、1950年代、オスカー・イチャーゾが性格類型学としてまとめたものが元になっています。この考えを学んだチリ出身の精神医学者クラウディア・ナランホが1970年代アメリカの精神医学者や心理学者へ紹介したのをきっかけに、科学的に研究・検証する人が増えました。後にスタンフォード大学で体系化され、心理学理論として研究が重ねられ発展を続けています。日本では1989年に「日本エニアグラム学会」が設立され、エニアグラムを紹介してきました。

日本エニアグラム学会のサイトでは、簡易的にタイプを診断できるページもあるので、興味のある方はぜひ一度訪れてみてください。


「エニアグラム×エフェクチュエーション」をテーマに実施された勉強会

エニアグラムとエフェクチュエーションに興味のあるメンバーが参加

大島 直彰(株式会社関西テレビハッズ 新規事業推進室室長)
1993年関西テレビ放送に入社、主に営業・ビジネス系業務に従事。多摩大学大学院経営情報学研究科前期課程終了後、同社人事部にて人財育成プログラム開発等を行う。現在関連会社に出向してグループの新たな事業として人財育成事業を推進している。日本エフェクチュエーション協会理事・日本エニアグラム学会公認ファシリテーター。

白鳥 健太郎(LTS 執行役員  関西事業部 部長)
(株)デジタルフォルン、監査法人トーマツを経て、LTSに入社。民間企業からパブリックセクターのコンサルティングまで幅広く経験。近年は、自治体/地域の民間事業者/金融機関など様々なプレイヤーを巻き込んだ事業スキームの構築・推進に多く関与。LTS関西事業部の責任者。

鈴木 稔(LTSマネージャー)
外資系の国際物流企業を経て、コンサルティング会社でイノベーションや改善の支援に従事。現在は、神戸大学経営学研究科 研究員と「エフェクチュエーション」理論を大企業へ適用するモデルづくりを行っている。大企業の変革、新規ビジネス創出、社会課題解決を目指すプロジェクトへの適用実践中。

中村 美穂(LTS コンサルタント)
化学メーカーでの基幹システム刷新を支援。関西事業部活動の一環として、大阪オフィスの新設、大阪市の性的マイノリティの認証取得にも挑戦。その後、公共案件や社会課題解決に取り組むチームに参画。現在は、民間企業の新規サービスのシステム領域のPMOを担う。

大山 あゆみ(LTS コンサルタント)
自動車部品メーカーにて、グローバルで統一された品質管理の仕組みの構築・定着化を支援。その後、RPAを活用したコンサルティングに従事。産休・育休を経て、CLOVER Lightの立ち上げに携わり、記事の企画・執筆を務める。現在、アジャイル開発スクラムについて勉強中。Scrum Alliance認定スクラムマスター(CSM)。

大島:
私は元々、大学学部時代に経営学部金井壽宏教授ゼミに所属し、当時から特に組織心理学に興味がありました。いろんな心理学を知る中で、性格類型論的なものの方がそれぞれの性格を捉えやすい。そしてエニアグラムでは、自分の心の動きをより深く知ることができることに特に興味を惹かれました。みなさんがエニアグラムに興味を持ってくださったこと、嬉しく思います。

資料:エニアグラムは9つの点を持った円周とこれをつなぐ線からできている(大島様ご提供)

白鳥:
関西でも、鈴木さんがサービスリーダーを務めるエフェクチュエーションブートキャンプなどのLTSのサービスに携わっていたことがありました。
その領域から広がり、実は関西事業部のメンバーは、去年大島さんの「エニアグラム研修」を受講しました。なので、今回はその時に一緒に受講した中村さんにも参加していただきます。

中村:
現在は関西ではない別の部門に所属していますが、今回お声がけいただきとても嬉しいです。
鈴木さんと一緒にエフェクチュエーションブートキャンプのサービス提供にも携わっていたことがあるので、エフェクチュエーション×エニアグラムは興味深いなと思います。

鈴木:
エフェクチュエーションサービスリーダーの鈴木です。エフェクチュエーション×エニアグラムで、大島さんとはいつも興味深いお話をさせていただいています。
今回は研修を受講したメンバーの他に、CLOVERでエフェクチュエーションの記事を書いた大山さんにも声をかけました。その記事の他にも心理学に関する記事を書かれていたので、エニアグラムにも興味があるかもしれないと思いました。

大山:
お恥ずかしながらお話を頂くまでエニアグラムを存じ上げなかったのですが、エニアグラムの学会のサイトにある簡易診断を受けると、かなり当てはまっていることに驚きました。「確かに、わたしそういうところあるな」って。
エフェクチュエーションと掛け合わせて考えるのは、とても面白そうだなとわくわくします。

勉強会の様子

起業家のイノベーションとテレビ局のプロデューサーの番組制作の意外な共通点

大島:
エフェクチュエーションを知ったのは最近なのですが、自分が10年前社会人大学院時代に考えていたことにとてもあてはまる論理だなと思いました。当時テレビ局のプロデューサーのキャリア研究をしていましたが、まさに面白い番組を作るのはエフェクチュアルな思考プロセスが理想であるし、そうあるべきだと考えています。

例えば、放送する時間帯枠の視聴者が何を求めているか、同時間帯の他番組との差別化は何か、それらを決めてその目標を達成するために番組を制作するのはコーゼーション的な考えです。そのような、企画書から出てきた番組は長続きしないことが多くあります。

一方で、エフェクチュエーション的な番組制作の仕方は、とにかく自分が考える面白い番組を作りたい、そのために自分の知っているタレント・スタッフと人に当たり一緒に番組を作り上げていく。放送が始まってからも試行錯誤しながら番組内の企画が変わりながら人気番組、長寿番組になっていく。

エフェクチュエーションの論理にあった「手中の鳥」。そのステージの問いかけにはWhom I knowがありましたが、プロデューサーたちはまさにここが重要、Know How よりKnow Whom誰を知っているか、誰が何を知っているかを知っていることが大きな強みとなります。

プロデューサーと起業家は全く違う領域の人たちですが、現代日本においてイノベーションが起こりづらい少ないという話と、最近面白い番組が少なくなったという話は、関連しているのではないかと考えています。

チームビルディングでお互いを知るためのツールとして

鈴木:
エニアグラムっていうと「自分のことを知る」ことが目的だと思われがちですが、ゴールはそこではないんですよね。

大島:
そうですね、自分のことを知るだけでなく、他者との違いにも目を向けてほしいです人は人と関わっている関係性から性格が形成され、様々な経験やシチュエーションごとに必要な判断軸が形成されます。もちろん人は多様に変わっていきますが、変わり続けていったとしても、結局根っこは変わりません。他者との関係やちょっとした行動の内省の中でその根っこに気づいていくので、他者との捉え方の違いを知りつつ自分自身に気づくツールだと考えています。

大山:
ありがとうございます。鈴木さんにエニアグラムのお話を頂いた時に、たまたまアジャイル開発※1に関する勉強をしていたので、エニアグラムはアジャイル開発におけるチームビルディングに使えそうだなと感じました。
アジャイル開発は不確実な状況の中でソフトウェア開発を進めていく手法の一つですが、最初の「環境づくり」や「チームビルディング」が重要なのではないかなと考えています。
自分たちがどのような環境にいるのか、お互いのことをどれだけ知っているか、どれだけ補完し合えるのかが肝ではないかな…と。

※1 アジャイル開発:迅速かつ適応的にソフトウェア開発をおこなう、軽量な開発手法の総称のこと。

白鳥:
そうですね。チームビルディングという文脈で、プロジェクトにおけるチームの組み方や改革や変革に適した人材育成の方法などに興味があり、その分野で活用できるのではと私も考えていました。
サービスを提供する我々のチームビルディングはもちろん、お客様のタイプを知っていることでコミュニケーションが円滑化し、よりスムーズなご支援ができるのではないかなと思います。
プロジェクトマネジメントにも有効な考え方ですよね。

一方で、難しいなと考えていることは、把握している事例が無いので、「こういう人が集まっているチームは、こういう動き方をする」というデータの蓄積が必要だということです。
そのチームのアクセルの踏み方とか、進め方の特徴はあるはずなので、まずはLTS社内で試してみて事例を貯めていきたいです。
あとは、この職業はこういうタイプの人が多いとか、そういうのは個人的な興味として知りたいなと思います。

大島:
はい。まさにチームビルディングにおいては、チーム内の対立や意見の違いから生じるタックマンモデル※2の「混乱期」を経ないと「機能期」への移行はできません。
お二人のおっしゃる通り、エニアグラムはチームビルディングにも活用できるものです。
鈴木さんと一緒にやっているエフェクチュエーションブートキャンプでは、ブートキャンプのはじめの方でエニアグラムを活用したチームビルディングを実施していくプログラムとなっています

チームで活動をしていると、必ず煮詰まる期間を迎えます。その煮詰まっている時には、各メンバーへかかるストレス度合いも違いますし心理状態も当然ながら異なります。
エニアグラムはタイプ別にどれくらいのストレス度合いなのかを測る指標にすることもできタイプ別にかけられたい言葉やかけられたくない言葉も明文化されています
チームメンバーのそれぞれの違いを理解しておくことで、より良いチーム作りができるのではないかと思います。

※2 タックマンモデル:組織を進化させるには、5段階のステージを経るという理論のこと。1965年にタックマンという心理学者が提唱した。

成長するために「どこへ向かうか」「何ができるか」のヒントとして

中村:
先程大島さんからあったように、エニアグラムではかけられると嬉しい言葉や、かけられるとやる気がなくなる言葉がタイプ別に存在していて※3、それお互いに知っておくと無意識に言葉で相手を傷つけてしまうことが減るのではないかなと思います。
一生懸命になるとそういう配慮ができなくなることもありますが、客観的に自分や周りの人のタイプを知ることで、チームの成長はもちろん、個人の成長にも貢献できるなと思いました。

大山:
私も似たようなことを考えていました。
鈴木さんとエフェクチュエーション論理の基になっている「熟達した起業家」について、熟達しているとはどういう状態なのかというお話をしたことがあります。
熟達しているというと、単純に時間や経験を重ねることでその領域のプロになれるイメージですが、その「時間の重ね方」や「経験の仕方」は、人によってはただ苦痛な期間にもなり得ます。
エニアグラムの9つのタイプには、「細部にこだわることが得意」「世話を焼くことが得意」「明るく陽気な雰囲気が好き」といった特性があり、その特性にあわせて経験を積むことで無理なく成長していくことができるのではないかと考えました。

資料:キャリアの作り方・作られ方(大島様ご提供)

大島:
そうですね、タイプによって成長のアプローチは異なるので、それを理解しておくことは大事です。
エニアグラムには成長の方向という考え方がり、例えばタイプ6の人は成熟するとタイプ9に変化したり、タイプ2の人は成熟するとタイプ4に変化したり…という方向性が見られます。
これを知っていれば自分のタイプが成熟した時にどのタイプになるのか、またそのタイプの人が近くにいれば参考になりますし、自分はどんな方法で成熟することがよいのかなど、自分の成長のために活用できます。
もちろん、マネージャーの方でしたら部下の成長をどのように支えるのが良いのかのヒントにもなると思います。

白鳥:
大島さんにエニアグラムの研修をしていただき、関西事業部ではその後「あのチームではこういうマネジメントをしたらよかったのかな」「もっと組織作りに活用したいな」という反省や今後取り組みたいことを考えるようになりました。
例えば、関西事業部にはこのタイプのメンバーがいないな…とか、アジリティのある組織を作るには、どんな人たちがどんなチームを組んでいたら良いのだろうと考えたりします。
ここ数年はリモート環境になったことにより、コミュニケーションが希薄になっていて、お互いのことを知る機会も少なくなりました。そんな今だからエニアグラムを活用できるなと思います。

採用活動にも有効、就職活動をする学生一人一人の良さを見抜くツールとして

中村:
活用できる場面としては、「採用」もあるのかなと考えています。
就職活動をしている学生さんごとに、どんな社員と面談をするのがいいのか、声掛けの仕方で工夫できることがあるのではないかと思います。社内にできたてのチームがある場合で多様性という観点でメンバーを増やす場合にも、具体的にどんなメンバーが欲しいのかと検討する段階でも活用できるなと思います。

白鳥:
それはありますよね。
今採用でも心理学の要素を取り入れて、どんな仕事に向いているとか、どんなキャリアを築けそうか、といったことは把握できるのですが、イマイチ当てはまらないなと思うことが多いです。
エニアグラムくらいシンプルで、根幹をとらえるようなものはこれまで適用してこなかったので、確かに採用でエニアグラムを使うのはありなのかなと思います。

鈴木:
ブートキャンプでは「絵を描く」ことで診断するので、白鳥さんの言うような方法もあるかもしれないですね。
アイスブレイクでできそうなので、自社の採用をより良くするのはもちろん、学生さんのタイプを診断することで、学生さん自身が就職活動をよりよくするためのインプットとして活用出来たらいいですよね。

大島:
就職活動では、企業が求める人材像に対して学生さんたちが無理やり自分を合わせにいく風潮がここ数年顕著だなと感じています。
そうではなくて、学生さんの良さをしっかりと見抜いて採用することが重要ではないかなと考えています。
企業によってはこのタイプが欲しいという組織もあるかもしれませんが、ひとつのタイプに偏るよりも多様なタイプの人材がいる組織のほうが理想的ではありますよね。そのあたりでエニアグラムを活用していただけるといいかなと思います。


執筆者

ayumi.oyama
ayumi.oyama

CLOVER編集部員。育休復帰後、CLOVERの立ち上げ・運営に携わる。
主に、記事の企画立案・取材・執筆を担当。仕事と娘2人の育児で毎日がにぎやか。
地元は九州。通訳、翻訳、心理学の勉強を細々と続けている。