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デジタルテクノロジー

ノーコード/ローコードツールの実務実装でITを現場業務の選択肢に

現場業務のIT化がその業務の手間やコストを削減する以上に、DXに重要な意味を持つことをご存じでしょうか。現場のIT化が進むことによるメリットと方法論について、ボトムアップのDXに詳しいITコンサルタントが解説します。
吉田 智彦(ブレインズコンサルティング株式会社)

インフラ・クラウド環境の設計構築を得意とするITコンサルタントとして、2014年に設立2年目のブレインズコンサルティング社へ入社。現在テクニカルサービスグループにて、ITコンサルタントとして数多くのプロジェクトを手掛ける他、新規サービス開発も担当。(2022年9月時点)

この記事では、ITサービスの事例メディア「CS Clip」が「ブレインズコンサルティング株式会社」の事例や専門性をQAインタビュー形式で解説します。

IT化が進まない現場の業務

―――昨今、DXへの関心が高まり、業務のIT化は様々な企業や業務で推進されています。一方でまだ取り組みが進んでいない業務領域や企業様も存在していますが、その特徴を教えてください。

吉田:
基幹システムや、大規模な分析のための仕組みなどは、どの企業様も優先的にIT化が進んでいます。ただ一方、現場で使用している台帳などはアナログ(手作業+Excel)が多いですね。

これは業界や会社の規模では測れないように思います。意外と大手企業様でもレガシーの環境であることがあります。

社内のIT部門の規模が大きくない場合や、社内にシステム内製化部隊が存在しない場合、現場の細かな仕組みについては現場の手にゆだねられているケースが多いです。

IT化を進めることで、手間もコストも大きく削減できる可能性があります。その結果、利益を向上させる動きにコストを使うことができるようになります。また、IT化によって生み出されるデータを利活用することによる新たな価値創出の可能性も向上するのは言うまでもないでしょう。いまの時代に求められるDXという観点からも重要なことだと思います。

―――現場にとっても、企業全体としても重要な課題なのですね。現場業務のIT化を進めていくための課題や障害は何があるのでしょうか?

吉田:
大きく分けて3つの課題があるように思います。

1つ目は、システム導入のハードルの高さですね。

こうした領域のIT化は、SaaSなど含めたパッケージ製品を導入する方法とオリジナルで作るフルスクラッチ開発を行うという手段の2つが一般的だと思います。しかし業務領域があまりに細かいとSaaSとして存在しないものも数多くありますし、フルスクラッチとなると手間もコストもSaaS導入の比ではなくなってしまいます。

元々全社的にコスト(金額・人的資源・時間)をかけられないから後回しにされているものですので、フルスクラッチ開発を行うという判断は難しいと思います。

2つ目は、IT自体へのハードルの高さですね。

あまり普段ITに触れることの少ない方は、正直何がIT化出来るのかというイメージを持つことも難しい方も多いのではないかと思います。そのため、手段自体を思いつくことが難しいのがこのパターンです。苦手意識といっても良いですが、チームの中に得意な方がいらっしゃらない限り解消しにくいのが難しい課題です。

最後は、業務を変えることのハードルの高さですね。

現場の業務に携わっている方自身が、現状で満足しているので変えたくない、と考えているケースも多いです。楽になる、便利になるといっても、あくまで導入までの過程を終え、その使い方を理解して初めてたどり着けるものです。これを、業務を行いながらやるくらいであれば、それでいいや、しょうがない、という気持ちでいらっしゃる方は少なくありません。

困難な現場業務のIT化に必要なこと

―――3つの大きい課題を踏まえて、IT化を進めていくためにどうしたら良いのでしょうか?

吉田:
どれも本当に難しい問題です。簡単に解決が出来ますと言うことはできませんが、私はIT化のメリットを知っていただくことがまずは第一歩なのかなと思うのです。

先にも少し触れましたが、IT化を行うことのメリットで大きいのは時間や手間のコストカットだと思います。純粋に手間が省けるというのもそうですが、所謂ペーパレス化することで紙の費用も、手書きの手間もなくなります。分析に多大な時間をかけている方はBIツールの導入などでものの数分で質の高いアウトプットが可能になるでしょう。

ただこうしたメリットだけでは動けない、というのが現実だと思いますので、現場のITを推進することによる未来のメリットについてもお話できればと思います。

―――現場の業務IT化で、会社の未来にも影響することがあるのですね!IT推進のメリットは他にもあるのでしょうか?

吉田:
重要なのはITというものを難しい何か、ではなく、業務を推進するための、価値を向上させるためのツールである、と認識できるようになるという点なのです。

ITに対しての考え方が柔軟になることで、例えば「Aという業務改善のアイディアがあるのだけれど、B社のシステムを使うことで便利になるのかもしれない。もしくはCというプロトタイプを軽く作ってみて、検証して駄目だったらやめてみるのも良いのではないか」といったような、ITを自分たちの仕事やサービスに活かしていく発想が生まれうるのだと考えています。

―――現場の方のITリテラシーが高まることで、仕事やサービスにITを活用する目線が生まれるということなのですね! これはとても重要な観点だと思いますが、各社様がこのITへの意識や目線を上げる動きが出来ない理由は何かあるのでしょうか。

吉田:
勿論すべての企業様が出来ていないわけではないです。その差は当然企業間でかなりあります。

ただ、今の時点だとITについて教育パワーを持ち、全社的に取り組むぞ、という風潮はまだまだ持てないというのが多くの企業様の状況のように見えます。

とはいえ、重要性に気付いていないということでもないと思うのです。社内にIT部門が存在することは自然な形になりつつありますし、DXへの世の勢いは目を見張るものがあると思います。

そこを強めていきたい、と仰っておられる経営者の方に私もたくさんお会いしてきました。しかし自分の会社でやらなければいけないことはわかっているけれど、実現するためのプランをどうしたらいいのか、とか、リソースの問題もあってすぐ効果が出るわけではない、ITリテラシーの向上にコストを割く余裕がない、というお声も同時によく耳にします。

―――これを解決するために良い方法はないものでしょうか?

吉田:
この問題は、どうやったらうまくいくのかがわからないという方法論の問題と、通常業務外に現場の方の時間やコストを取るのが難しいという点の2つが大きいと思います。

前者の問題がある以上、正直その会社様のみでは解決はかなり難しいと思うのです。

加えて無理をおして業務外で勉強させても、自社の業務やサービスと勉強した知識を結びつけるのは簡単なことではありません。

そのため私からは、現場の方に何かITで対処すべき現場の課題や問題があれば、それをテーマに私達と一緒になって取り組み、その中でITのノウハウや知識も得ながら業務自体も解決していく、という方法をお勧めしています。

―――現場の方自らIT化に取り組むということでしょうか?それはエンジニアの社員様という意味ですか?

吉田:
いいえ、セールスやマーケティングなどITに関わっていなかった社員様にこそ必要なのです。

それに最も適しているのが、ノーコード/ローコードと言って、プログラミングの知識なくアプリケーションが構築できる開発方法です。

課題に対してITで解決するためにどういうものが必要かといった全体図は当然弊社でサポートを行いますが、その実際の開発や導入は現場の方に教えつつ自ら実装していただくことで、ITリテラシーを高めつつ、現場の課題を解決していくことが可能になります。弊社はこれを「デジタルラピッドプロトタイピング」というサービスでご提供しています。

これこそがボトムアップで進めていくDXだと言えると思います。

ノーコード/ローコードで始める現場のIT化

―――現場の社員自ら構築してしまうというのは考えにも及びませんでした!具体的にどういう手順で進んでいくものなのでしょう?

吉田:
まず事前準備として、チーム内のどんな課題をITでどうやって解決をしていくか、ここを私のようなITコンサルタントがお客様と一緒になって考えていきます。ここは主に弊社が行うため、現場の方に設計してもらうのは未だ先ですね。

開発のための全体像を描くことが出来たら、必要な仕組みをITで構築していきます。この構築をお客様の現場の方にご対応いただきます。

基礎知識となる情報は当然先にある程度お伝えしますが、そこからは実際に触りながら、実践をしながら学んでいただくことが大切だと思うのです。いきなり膨大なITの分野を全て学ぼうというのが、ITを近寄りがたくしてしまう要因だと考えていて、実践の経験を沢山与えて、実務に必要な知識を学んでいく機会を創出する、これがリテラシー向上や学びに繋がると思います。

―――実践を通してITリテラシーも高まり、チームの課題も解決できるのは素晴らしいですね!よくある講義形式の、教育カリキュラムと異なり実務に即した開発サポートのメリットをもっと教えてほしいです

吉田:
そうですね、企業様によって使える環境や制約もあるので、知識を学ぶだけの研修やカリキュラムではそういった生きる能力に変換が難しいケースがありますよね。多くの研修系サービスは、通常業務と関係なく知識を学んでいくため、あくまでも「業務外」という印象が拭えない難しさがあります。

自分の仕事の一環としてやりながらITを学ぶというのは、感情的にも実務的にも受け入れやすいように感じています。

また、これまで現場の方とのやりとりにフォーカスをあてましたが、これを実施する前に当然ながらIT部門の方々と事前に環境についてのお打ち合わせをさせていただいています。

これは、ノンコントロールなシステムを作ってしまう危険性や、ローコード開発は多機能が故に外部サービスと連携しようと思えば出来てしまいますので、そこを野放しにするのは会社としても良いことではありません。

セキュリティの問題でもIT資産統括の問題でも、無秩序に構築することをよしとしているものではないのです。節度をもって使っていただくため、コントロールの方法や込み入った技術の相談は、当然IT部門の方とお打ち合わせや時にご指導させていただいたうえで実行します。会社全体のITノウハウを高めつつ、ボトムアップのDXを進めていくことが出来る点は教育コンテンツとの大きな違いです。

―――現場でIT化が進んでいない領域のアプローチに、ボトムアップで進めていくメリットについてよく理解ができました。実施にあたり、期間はどの程度必要でしょうか?

吉田:
解決すべき課題次第で変わりますが、目安は全体では3~4ヶ月、そして週数時間ITコンサルタントと一緒に作業を行い、持ち帰りで作業を宿題のような形で取り組んでいただく、といった期間にしています。

長すぎると尻込みしてしまいますし、どの企業様もこの期間で十分基礎知識のレクチャーと実践、リリースまで実行出来ている印象があります。

過去実施したプロジェクトはこちらも参考にしてみてください。

ローコード活用により開発内製化と課題解決をローコストで実現(J-POWER様):https://cs-clip.jp/case_studies/FOMUPlSg

現場のIT化推進による可能性や未来

―――最後に、現場業務のIT化が進んでいった先の可能性や、未来のお話をお聞かせください

吉田:
最終的な理想は、業務上の課題解決やサービス開発に、ITを選択肢のひとつとして自然に取り入れていけるようになることでしょうか。

直近では目に見えている課題を解決させるためのIT化が多いでしょうが、欲を言えばIT部門の方とは違う形で現場の方々がITを使いこなし、新しい形を生み出すことへの道が広がっていくと素晴らしいなと思っています。

新しい価値やサービスを創出するというのはたくさん失敗する世界観だと思います。これをITでペーパーモックやプロトタイプを作成して試してみる。新しい価値を生み出すサイクルの中にITという選択肢を増やすことで、より良質な失敗を増やすこともできる。そうして今までにない価値を生み出していける企業様が増えれば、よりよい未来が生まれていく。私はそのように信じています。

―――ありがとうございました、ITリテラシーを高め、身近なツールとして活用していく意義について学ぶことが出来る素晴らしいお話でした!


ライター

CS Clip事務局()

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