赴任後の苦労とガーナの暮らし ガーナ滞在記① (LTSボランティア休職 利用事例)のサムネイル
ワークスタイル

赴任後の苦労とガーナの暮らし ガーナ滞在記① (LTSボランティア休職 利用事例)

LTSの「自己研鑽・ボランティア休職」制度を利用して休職中の池田さんは、青年海外協力隊としてガーナに赴任しています。この記事では「ガーナ滞在記」として、池田さんから定期的に届く現地レポートを紹介します。初回となる今回は、2022年1月末に現地到着後4カ月が経過した6月に届いたレポートです。

ガーナからの便り

レポートを紹介する前に、ガーナ渡航直後の1月末と、その後の4月にやりとりしていたメールの一部を抜粋して紹介します。

ガーナ入国(1月30日)

まずは、ガーナに入国した後の1月30日のメールです。

お陰様で無事に予定通りのスケジュールでガーナに入国することが出来ました。
先週までは首都研修で快適な生活を送っていましたが、木曜日から任地に赴任し首都との違いにリアルなガーナを感じる毎日です・・笑。

初日から停電、断水に見舞われ、刺激的すぎる毎日ですが、新たな地で挑戦をできることをうれしく思います。

改めて休職という形で送り出していただき、ありがとうございます!

また休職中の月次レポートも改めて提出するようにいたします。
アフリカの地でパワーアップし、帰国できるよう限られた時間を大切に頑張ろうと思います!
(住めば都!と言えるよう現地の生活に慣れることが目下の目標です・・笑)

p.s 写真は、任地の職業訓練校とちょろちょろ水しか出ない家のため、バケツで水を貯めている写真と今日親友になった村のおばちゃんです笑。

池田さんからのメールから抜粋(2022年1月30日)

ガーナ滞在後 3カ月の連絡(4月25日)

次の連絡は前回から約3ヵ月後の4月でした。なかなか大変そうな内容ですが、現地の生活にも慣れてきた様子がうかがえます。

早いもので任地に赴任して約3ヶ月が経過しました。
3月からはICTの授業を徐々に受け持つことになったのですが、現在PCルームが工事中のため、利用出来ず板書でICTに関する授業を行う必要があり、想像以上にハードルが高く毎回苦労しています、、。

生活面では、相変わらず断水停電ネットワーク不調のトリプルパンチに悩まされることも多いのですが、ようやくこの生活にも慣れてきました。

授業を行いつつ、配属先の方々の期待や要望のヒアリングも並行して行っており、これから2年間の目標を決めていく予定です。

今週中には改めて現段階で把握出来た学校の内情や関係者の期待値等も報告出来ればと思っておりますので、もうしばらくお待ちいただけますと幸いです。

前回の連絡から時間が空いてしまい、ご心配をおかけして申し訳ありません。
お陰様で特に体調を崩すこともなく、元気に過ごせております。

池田さんからのメールから抜粋(2022年4月25日)

ガーナ滞在記 2022年6月の報告

そしてついに届いたガーナ滞在レポート、第1回目です。これまでのメールで触れられてきた出来事について、その詳細が語られます。

以下が池田さんによる、2022年6月のレポート本文です。
(一部省略・編集していますが、極力変更は加えないで掲載します)


池田 愛子(LTS コンサルタント)

2015年にLTS入社、大手自動車会社にてBPO業務の業務プロセス運用・改善の長期プロジェクトに従事、その後、課題整理・プロセス可視化等の業務分析プロジェクトを複数経験。2022年1月から自己研鑽・ボランティア休職を取得し青年海外協力隊としてガーナで奮闘中。(2023年2月時点)

はじめに:近況

1月末に任地へ赴任してから4か月が経過し、ようやく任地での暮らしに慣れてきた。赴任当初は、任地の村を一人で歩くだけで精一杯だったが、現地の公共交通機関トロトロ(乗合バス)の利用に慣れてきたため、行動範囲が広がった。最近では、片道2時間かかる州都への買い物や首都アクラへの上京も一人で出来るようになり、この地で2年間生活するイメージがついてきた。

トロトロ乗り場の様子

平日は、8時~16時頃まで学校で過ごし、放課後はマーケットに買い物に行ったり、同僚のカーペンターワークを手伝ったりしている。赴任当初は、酸味が強く苦手だったガーナ料理だが、今ではどの料理もおいしく食べることができており、人間の適応力に驚いている。

ガーナ料理のバンクー

また、ガーナ料理の作り方も習い、ガーニアンシチューも作れるようになったが、ガーナ人の友人たちには「aikoのベストフードは、インドミー(インスタント焼きそば)だね!」と言われているので、ガーナ料理を褒めてもらえるよう特訓していきたい。

バンクー作りに挑戦中

5月の休日は、3回お葬式に参加し、頻繁にお葬式に参加する機会があることに驚いた。ガーナのお葬式は、開催までの準備に時間をかけ(平均2-3か月)お葬式開催のポスターを作ったり、故人のバイオグラフィーを作ったりと、お葬式準備を通して故人の死を受け入れていくプロセスが印象的であった。

また、お葬式当日は爆音の音楽を流し、思い思いに踊りを踊り、ライブ会場のような明るい雰囲気になることに驚きを隠せなかったが、理由を聞いてみると「参加者みんなで悲しみを分かち合っている」とのことであった。日本の厳かな雰囲気とは、180度違う世界であったが、明るく、時に人目を憚らず号泣するガーナ人らしい故人の弔い方もとても素敵に思えた。

5月末の週末は、毎週イベントがあったこともあり疲れからか体調を崩してしまった。咳からの風邪であったが、一時体温が39.0近くまで上がり「自分はこの地でどうなってしまうのだろうか…」と不安を抱いていたが、ガーナ人曰く「ガーナは暑いからただの風邪でも39.0近くまで出ることはよくある」とのことであった。実際に高熱が出た際にカウンターパートに相談すると「とりあえず、冷たいシャワーを浴びて体温を下げるべき」と言われ、実際にシャワー後には37.0台まで下がっており、体温計が信じられなくなった。

高熱が出たこともあり、JICAの健康管理員にも相談しマラリア検査キットで検査したが、陰性であり数日睡眠を多めに取ることで体調は回復した。咳が続く際には、生姜の丸かじりやマンゴツリーの木の表皮を食べるなど、ローカルな治療法がどれも有効であり新鮮であった。ガーナの風邪は大変辛く、二度と経験はしたくないが、対処療法を学べた良い機会でもあった。

マンゴツリーの表皮を切り取り食べるローカル治療法

学校での活動

5月に新入生が入学し、本格的に学校での活動もスタートした。現状、ICTコースとして受け持つ授業は、2h×20コマあり、カウンターパートと分担して授業を行っている。

学年全コース共通クラスプラクティカルクラス合計コマ数
1年1コマ7コマ8
2年1コマ (ICTコースの生徒なし) 1
3年(出席率が悪く授業を行えていない)11コマ11
ICTコースのカリキュラム

今年度ICTコースの新入生は、2人しかおらず、3年生の生徒1人と計3名しか生徒がいない状況である。職業訓練校だが、ICTコースを卒業してもすぐに就職することが難しいらしく、ICTコースの生徒が年々減っているとのことであった。

また、現在PCルームが工事中で利用できず、座学で授業を行うしかない状況である。そのため、特に3年生は「パソコンも触れないのにICTの授業に行くよりも自分のコースの実技の時間に充てたい」という声も多く、授業時間になっても教室に生徒がいない状況であった。

また、該当の授業時間帯が週で唯一のマーケットデーの日の午後に設定されており、多くの生徒が買い物に出かけてしまう時間割の悪さも授業が行えない一因である。以前から時間割変更の要請を校長先生に提案しているそうだが、現状変更は見られない。

同僚(カウンターパート)は、「PCルームが利用できるようになるまでは授業できなくても仕方ないね」と言っており、赴任当初は「これで良いのか。いまできることは本当にないのか」と葛藤する日々であったが、今注力すべきことは自分が持っている授業の質を上げることだと気付いてからは、今の段階ではガーナの文化(?)に抗うのではなく流されてみようと思えるようになった。

現状の課題 座学での授業

相変わらず、板書のみの授業に苦戦しており、生徒が退屈そうにしているのを見ると心が折れそうになる毎日である。カウンターパートは、教員歴も長く生徒との対話をベースに活気ある授業を行っているが、言語の壁、ICTに関する知識の不足等、不安要素が多くあるのが現状である。

毎回の授業で苦戦はしているが、授業の構成、時間配分の工夫をすることで、手ごたえを感じる瞬間も増えてきた。また、生徒の名前を覚え授業外でも積極的に会話をすることで、授業中に私の英語が分かりにくかった際には、現地語で他の生徒に通訳してくれる等、助けてくれる生徒が増えてきた。

日本で仕事をしていた際にも壁にぶつかった際には、いつも誰かに助けてもらっており、ソフトのコミュニケーションが自分の武器であることを思い出し、生徒に協力してもらいながら授業を作っていこうと前向きに捉えられるようになってきた。

最近は、カウンターパートがよく口にする「一方的に教えるのではなく、生徒からも教えてもらうんだよ」というアドバイスを意識し、生徒の考えを引き出し、対話をすることに注力している。

ガーナ人のリアルな暮らし

ガーナは国連や世界銀行の定義上、開発途上国に分類されるため、渡航前は日々の生活にも困っているような人が多いイメージを勝手に抱いていた。しかし、赴任後スマホを片手にオンライン通話を楽しみ、3食おいしくガーナ料理を食べ、週末には着飾って教会に行くことを楽しみにしているガーナ人の生活を目の当たりにし、想像していたような貧しい暮らしはほとんど見られなかった。

赴任後、3か月ほど経った頃にショッキングな出来事が3つ起きた。

ひとつめは、同僚と西アフリカで一番高い山に登山へ行った時のことである。現地の少年がツアーガイドをしてくれたのだが、彼は職業訓練校に行くためのお金を日々稼いでいるとのことであった。ガーナ国内で学校に行きたくても行けない生徒と初めて出会った経験であったが、同僚曰くガーナにはこういう子どもたちがたくさんいるとのことであった。(中学校までは授業料が無償だが、文房具や制服が買えず通学できない生徒もまだまだ多くいるとのこと)

ふたつめは、学校で仲良くしていた生徒の休みが続いた時のことである。彼女が突然、一週間以上学校に来ない日が続いたので、担当コースの同僚に話を聞くと授業料を滞納しているので授業に参加できないとのことであった。このまま滞納が続くと退学処分になってしまう可能性もあるらしく、入学したからと言って、全員が簡単に卒業できるわけではなく、授業料の工面に苦労している家庭も多いことを初めて知った。

みっつめは、連休の時のことである。イースターブレイクが4日間あり、私は首都でパラグライダーイベントに参加する予定であった。参加費は550ghs(1万円程度)であり、高額ではあったが滅多にない機会であったので、参加を予定していた。
休暇に入る前日、最も仲の良い同僚が深刻な顔をしており、理由を聞いてみると「友人に借りていた700ghsを急遽返済する必要が出てきたが、手元にお金がなく困っている」とのことであった。詳しく理由を聞いてみると、兄弟の借金を一緒に返済しているらしく、複数の銀行から借金をしており、毎月返済に追われている赤字の生活であることを初めて知った。

いつもお世話になっている同僚が700ghsの返済に頭を悩ませている横で、550ghsのパラグライダーに参加するこんな生活をしていて良いのだろうかとショックを受けた。

JICAからの生活費は、現地教員の月給の倍の金額が支給されている。ガーナ文化を知り、ガーナ経済を回すためにレジャーを楽しむことも大事だが、自分の近くで困っている人がいれば力になりたいと思い、結局パラグライダーを諦め同僚にお金を貸すことにした。

これら一連の出来事から、赴任3か月まではガーナの貧困が見えていなかっただけで、明るく歌って踊っているガーナ人達も実は日々の生活に苦しんでいる人が多くいることを知った。これまで見えていなかったリアルなガーナの生活が少しずつ見えるようになってきたことを嬉しく思いつつも、有意義なお金の使い方や自分にできることは何なのだろうかと考えるようになった。

すぐに答えが出せるような問いではないが、少しでもお世話になった人たちに恩返しができるように、この2年間の間に何ができるのかを考えていきたい。


今回のレポートは以上です。次回は、2022年7~8月のレポートを紹介します。お楽しみに!

エディター

忰田 雄也(LTS マーケティング&セールス部 部長代行)

SE・テクニカルライターを経て、LTS入社。ERP導入や業務改革におけるユーザー向け広報・教育企画および業務文書改善など組織コミュニケーションに関連するコンサルティングに従事。2017年よりLTSコンサルティング事業のマーケティングを担当。2021年より本サイト「CLOVER Light」の立ち上げ~運営・編集長を務める。(2024年1月時点)