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デジタルテクノロジー

生成AIからOSS活動、衛星データまで…エンジニアが集い学んでコラボレーション~初開催のLTS Tech Dayをレポートします~

「GitHub Achievementのバッジがほしい!」「汚いコードを発見したらリファクタリング」―。LTSグループは2024年8月、「Tech Day」を開催しました。エンジニアやテクノロジーにフォーカスした社内イベントを開催するのはLTSで初めてです。コーディングや生成AI、衛星データの利活用など当日の発表と開催の裏側を、菅野奈月がレポートします。

好きなことを好きなように発表

Tech Dayのコンセプトは「エンジニアが好きなことを好きなように発表できる場」で、自由度が高いことが特徴です。最新の技術トレンドやプロジェクトなどを共有し、新しいアイデアや交流機会の創出を目的に開催されました。発表テーマは個人開発の取り組み、興味深い・愛する技術、業務で得た気づきなどさまざまです。リアル×オンラインのハイブリッド型で、短時間で発表するLightning Talk(LT)形式の発表が行われました。

当日は、台風10号の進路次第でリアル開催の中止も検討されましたが、台風は首都圏を逸れて無事開催に。LTS本社(東京都港区)のセミナールームにはグループのエンジニアやコンサルタント、技術の話題に関心のある営業やミドルオフィスのメンバー、また外部ゲストとして株式会社永和システムマネジメント(以下esm)の約40名が集結。オフラインメンバーも合わせると総勢約110名となりました。

生成AI、OSS 、衛星データ…

登壇したのは、LTSのエンジニアとデータ分析チームのコンサルタント、LTSグループの株式会社ワクト(以下ワクト)、esmの皆さんでテーマは全部で18。今回はこのうち4つをピックアップします。

①生成AIはこんなこともできる:ハッカソンの優勝プロダクト紹介 〜商品レビューを活用したブランド戦略アドバイザー〜

データ分析事業部のIさんとKさんは2023年10月、ベトナム最大のIT企業FPT との共同ハッカソンに参加し、最優秀賞を受賞しました。その時に開発したプロダクトについての発表です。

「企業が有効なブランド戦略を行うにあたっては、人間の処理能力・経験知識の限界という壁がある」―。そんな課題を解決するため、生成AIを活用したプロダクトを開発しました。人間であるブランドマネージャーやSNSを基にした“生活者GPT”が、複数の“個性を持つAI戦略家”と対話することで、AI戦略家がストーリー性のある戦略を生成、生活者調査・競合分析と合わせて行動計画を出力してくれるというものです。

生成AIは社会的な関心が高く、私もこれまでたくさん耳にしてきましたが、着想から開発の経緯を専門家から直接聞く機会は初めてでした。「ブランド戦略構築での活用方法もあるのか」と好奇心が刺激されました。LTSが共催したハッカソンについては、CLOVERにレポートを掲載していますので是非ご覧ください。

②「欲しい」「嬉しい」isパワー:OSS活動やってみた。

esmのAさんによる、OSS※1活動についての発表です。

活動のきっかけはOSSのバグを発見し、プルリクエスト※2したところ、無事にマージ(OSSに統合)されたことでした。そして、「プルリク成功を機に自分でOSSを作り始めました」といいます。マージ後もOSS活動を続けた理由は「バッジが欲しかったから」とのこと。

画像1:starstruck(数あるGithub Achivementsの1つ)

ここで言うバッジとは、GitHub (ソフトウェア開発のプラットフォーム)での実績を示す「GitHub Achievement」のこと。元々、「GitHub Achievementのバッジを持っている人ってかっこいい!自分もほしい!」という憧れがあり、特にstarstruck(画像1)というバッジ取得を目指したことがモチベーションになったそうです。自身で制作したOSSも盛況で、使用者からの機能リクエスト、バグ報告、コメントもたくさん集まりさらにモチベーションがアップ。starstruckのバッジを無事に取得することができました。

あったら嬉しいツールを自分で作り、それをさらに良くしようと勉強する。業務では得られない知識習得など「OSS活動で得られるものは沢山あった。皆さんも是非挑戦してください」とAさんは呼びかけました。 作りたいものや得たいものを目指して活動し、結果として自身や周りにプラスの影響を与えられるって素敵だと感じます。目の前のことに必死で、楽しみながら成長するという思考が薄れていた私にとって、自分を振り返る良いきっかけになりました。

※1 OSS:Open Source Softwareの略。ソースコードが公開され、誰でも無償で自由に改変や再配布ができるソフトウェアのこと。OSSの開発や保守に携わる活動を「OSS活動」と言う。
※2 プルリクエスト:Gitホスティングサービス(バージョン管理サービス)で提供される機能で、機能追加や改修などを担当者や関係者に通知すること。通知が承認されると、公式プロジェクトに統合される。プルリクと略して呼ばれることが多い。

③合言葉は「はじめよりも美しく」:名前が重要

画像2:投影資料より抜粋

ワクトでフロントエンドエンジニアをしているHさんは、コードを書く過程であった様々な「名前」に感じたことと、そこからの学びと啓発について発表しました。

結論から整理すると…①物事への理解を深める、②「とりあえず」で放置しない、③使えるものは使う―3つを心がけ、後続対応に配慮のある成果物を上げていこう、汚いコードを発見したらリファクタリング(コードを整理して洗練させること)しよう、というのがHさんのメッセージです。「これ、覚えて帰ってください!」

Hさんは「トゲアリトゲナシトゲトゲ 」(体にトゲを持つものが多い「トゲトゲ」というトゲハムシ亜科の昆虫には、トゲを持たない種もいて、これらは「トゲナシトゲトゲ」と呼ばれるが、「トゲナシトゲトゲ」の仲間にはトゲを持つ種もいて、これらが「トゲアリトゲナシトゲトゲ 」と呼ばれるそうです。ややこしい!)を例に挙げ「世の中にはわけの分からない名前が沢山あります」と切り出しました。プロジェクトで見かけるファイル名にもややこしいものが多くあり、名前が内容にそぐわない、コードの名前と振舞いが異なる(画像2)こと等に、ずっと思うところがあったそうです。

業務関連ではないものの、なるほど…日常で意味が分からない名前がたくさんあったら面倒くさいだろうなと妄想しました。参加後のアンケートでも、身に覚えがある方や印象が強く残っている参加者が多く、特にコーティングをするエンジニアからは共感の声もありました。皆さんもこれを機に、「はじめよりも美しく」を日常生活・ビジネス、さまざまな場面で意識してみてください。私は早速、ドキュメントのファイル名を整理するように心がけました。

④ 衛星データは分析に使える:地球を知る

Tech Day最後の発表には、LTS データ分析事業部部長でME-Lab Japan代表取締役社長の坂内さんが登壇しました。

デジタルツイン※3による意思決定、「人工衛星データ×環境」がテーマです。人工衛星データ活用の難しさと業務活用について解説した後、洪水シミュレーションシステム、設備機器の保全活動に向けた外部環境の分析といったデータ活用事例とLTSの実績を紹介しました。

人工衛星データの活用には費用面の障壁が大きいとの指摘があり、福井県はコスト削減のため自ら県民衛星 を打ち上げてデータを取得しているそうです(関連ページ)。関連記事の「ふくいPHOENIXプロジェクト」にはワクワクします。

「人工衛星データ×環境」に関して、下記記事でより詳細な解説を確認できます。気になった方は是非こちらもご覧ください。

※3 デジタルツイン:現実世界の物体や環境から収集したデータを使い、仮想空間上に全く同じ環境を「双子のように」再現するテクノロジー。仮想空間上でAIが分析やシミュレーションすることが可能になる。

「飲み会で、やりたいよねって」

曽根原奎斗さん

「ワクトの阿部太一さんと飲んだ時に『エンジニア向けのイベント、LT会やりたいよね』って話をしたのが開催のきっかけです」。企画・運営のリードを務めたLTS Digital事業本部Digital Consulting 事業部の曽根原奎斗さんが振り返ります。

2023年12月1日~25日、ワクトのエンジニアメンバーとエンジニアリング知識を共有するプラットフォーム「Qiita」で、参加メンバーが持ち回りで毎日投稿するという「LTSグループAdvent Calendar 2023」を行っていました。その時「さらにこんなこともしたい」とアイデアを膨らませたのが、今回のTech Dayのきっかけです。

相談を受けた坂内さん(データ分析事業部長)らも「コンサル向けのグループカンファレンスはあるけど、エンジニア向けのイベントはなかった」と課題を感じていて、話はトントン拍子に進んだといいます。事業部長らが、カジュアルに「企画・運営進めていいよ!」とする柔軟さが、LTSらしいなと思ったりもしました。

Tech Dayは間口を広く参加者を募集し、業務では普段、関わりのない社員や関係者とも交流する機会となりました。とくにesmの皆さんは、なかなかお会いすることがなく、新鮮さはひとしおです。「社内外の人脈を広げられてよかった」というLTSの若手営業メンバーもいました。発表終了後に実施した懇親会では、交流の輪が広がるだけでなくエンジニアの皆さんにとって技術関連の情報を交換する場にもなったようです。

編集後記。みんなウェルカムなイベントです!

リアル会場参加者の集合写真

人生で初めてのTech Dayは「参加してよかった」と感じられたイベントでした。私自身は技術にそれほど詳しくないので、参加前は「行って意味のあるものになるのかな?」と心配もありました。

ところがどっこい。

「イテレーター(プログラミングに関係する専門用語です。調べてみてください!)」など、初めて耳にする言葉を調べながら聞く場面はありつつ、専門家から生で聞ける取り組みはどれも興味がひかれるものでした。特にAI関連は、広報やマーケティングといった私の業務でも取り上げることが多々あり、プロダクトやサービスへのイメージがつくりやすくなりました。また、エンジニアの皆さん、純粋にトークが上手なので、発表がスラスラ頭に入ってきたのも楽しく感じた要因の一つだと思います。

イノベーションって、異質なものや人の組み合わせから起こりますよね。Tech Dayのような、ちょっとした出会いや学びから、思わぬコラボレーションや発想に繋がることもありそうです。次回はより幅広い分野の社員が出席して、素敵なイベントとなることを期待しています!

natsuki(LTS CLOVER編集部員)

2021年にLTSへ入社後、LTSリンクのエージェントサービスにて出向社員として営業業務に従事。現在はLTSのマーケティングチームに所属し、CLOVERの企画・執筆や企業SNSの運用・管理を行っている。趣味は旅行、食事、犬猫動画を漁ること。(2024年6月現在)