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動き出す行政決済とLTSの金融ビジネスライン~社会性を追求し顧客価値を最大化する

LTSは金融・決済分野においても、ミッションである「自由で活き活きとした人間社会を実現」することに寄与したいと考えています。10月、一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA)に特別会員として加盟しました。FDUAで得られる新たな知見と、LTSが持つIT/業務の実装支援力を生かし、金融・決済分野でもさらなる高度なビジネス創出と変革に向けたデータ・AI活用を支援します。LTSでこの分野をリードするDigital事業本部の神瀬功崇(デジタル庁統括官付=決済統括、フィンテックユニット)によるステートメントです
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神瀬 功崇(Digital事業本部)

国内大手SIer、外資系戦略/総合系コンサルファーム、政府系金融機関等を経てデジタル庁に参画。デジタル庁においては決済および送金系の政策立案と事業を管掌するほか、決済分野での諸外国との折衝も担当している。コンサルタントとしては、新規事業企画、システム企画、コンサルティングの豊富な経験に基づき、戦略から組織・ITに至るまでのDX全般、デジタル技術を用いた新規事業創生およびプラットフォーム化を専門とする。特に決済領域では、各コンサルファームにおける代表人物として最新の決済ビジネス企画等を推進し、講演やメンタリング等を多数実施。デジタル庁の所属を併任しつつ、2024年7月にLTS参画。

活発化する決済フックの新ビジネス企画

私は新卒入社した国内大手SIerにおいて金融SEからキャリアをスタートし、メガバンクの基幹系システム更改プロジェクトや、金融機関向けの先端ソリューション企画等に従事していました。この経験をバックグラウンドとし、政府系金融機関におけるイノベーションラボの企画と立ち上げ等のリード、戦略/総合系コンサルファームにおいてデジタルバンキング戦略の策定および実行支援等を行ってきました。また、各コンサルファームでは決済関連のビジネスライン設立等を担っており、振り返れば金融×デジタルの世界一筋で仕事をしてきました。

金融・決済との出会いは偶然の産物でした。当初から金融系のキャリアを志向していたわけではなく、強い専門性を有していたわけでもありません。SE時代は、難易度が高くSEとしてのキャリアアップが期待できるという理由で、金融系の部署を志望して配属されました。しかし、SE時代に多くの優秀な先輩・上司に出会えたことや、学びの多いプロジェクトに恵まれたことから、徐々に金融への関心を強め、その後の政府系金融機関やコンサルファームにおいて、特に決済中心のキャリアへと収斂されていきました。

決済系Fintechスタートアップや金融当局と多く接したことも、マーケットや事業環境の理解も深めることに寄与したと思います。こうした形ですっかり決済専門のキャリアになりました。決済技術は日々進歩していますし、決済をフックとした新ビジネス企画等は各事業会社でも活発に検討されるようになりましたから、コンサルタントとして常に多方面へのアンテナを高くしておく必要があります。

「政府共通決済基盤」 決済に留まらない発展へ

私は現在、LTS勤務の傍らデジタル庁にも在籍し、決済や送金に関するプロジェクト群を監理しています。

デジタル庁はミッションに「誰一人取り残されない、人にやさしいデジタル化を。」、ビジョンに「優しいサービスのつくり手へ。」「大胆に革新していく行政へ。」、そしてバリューに「一人ひとりのために」「常に目的を問い」「あらゆる立場を超えて」「成果への挑戦を続けます」と掲げています。
デジタル庁ミッション・ビジョン・バリュー

デジタル庁を含めた行政のサービス設計の取り組みは、民間と大きく異なり収益性を前提かつ中心としてはいません。様々な意見があろうかと思いますが、社会性を追求することが行政の存在意義であり、その神髄だと考えます。政策にもよりますが、決して「港区男子」のような特定セグメントだけをターゲッティングしたサービスともせず、かといって国民の最大公約数を過度に目指しすぎない、という塩梅が重要ではないかと感じています。

そうした中、私がデジタル庁で関与する代表的なプロジェクトとして、政府共通決済基盤というものがあります。これは府省庁や自治体に向けて、いわばPayment as a Serviceを提供するデジタルプラットフォーム、各府省庁や自治体におけるオンライン手続きに対して決済機能を提供するものです。

私にとっては民間で培った経験を存分に活かせるプロジェクトですから、バリューを発揮できている実感があります。また、官民様々なバックグラウンドを持つメンバーでチームが組成されていることから、非常にエキサイティングな経験を得ることが出来ています。このほか、決済統括(フィンテックユニット)としてG7やG20における決済・送金関連の諸外国調整や渉外等もマネジメントしています。

政府共通決済基盤は、閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に掲げられている通り、デジタル庁として今後も一層、注力していく分野と見られます。民間では当たり前の機能・サービスではありますが、ようやく環境が整ってきたことから事業をスタートしています。後発の利を生かし、適切かつ最新の方法論をもってプラットフォームを開発するとともに、単なる決済機能の提供に留まらない発展も視野に入れながら大きく進めていければと考えています。
デジタル社会の実現に向けた重点計画

行政経験は独自性を持つコンサルタントの糧に

他方、行政の事業である以上、予算獲得や各種調達については十分ルールを順守する必要があり、これによるリードタイムは避けられません。そのため、民間のようなTTM(Time to Market)は望めませんが、可能な限りクイックに展開できるよう、先手で様々な調整を進めています。これに際し、規模の大小を問わず、多くの民間企業ともコミュニケーションをしていますが、コンサルタント仕込みの進め方を行政にアレンジしながら効率的に対応しています。

政府共通決済基盤については、単に行政手続きをオンライン決済できるということだけでなく、民間企業に対しても一定の波及効果を生むと考えています。この辺りの考察は、また別の機会にでも纏めて発信していく予定です。

なお、行政における決済・送金事業は、各法律および政省令・条例等との対応付けや、政府方針との平仄合わせを慎重に確認していくことが、民間での進め方と大きく異なります。言葉遣いや単語選びにも非常に注意を払います。私たちコンサルタントも言葉で仕事をしている立場ですが、シーンによっては刺激的な単語や例え話等を使い分けてクライアントとコミュニケーションします。

一方、行政においては、文字1つのレベルから、国民の誤解や解釈のゆがみを生じるリスクが無いか等を徹底的に検証しているように思います。その結果として伝わりやすさを犠牲にしているという指摘もあろうかと思いますが、真剣に言葉に向き合う行政人材の方々には非常に頭が下がると同時に、コンサルタントとして学ぶべきところがあります。

デジタル庁に参画した初期には、こうした文化やルールの特徴に戸惑うことも多かったのですが、今ではすっかり馴染んできました。行政事務としても、国会対応や予算対応、各種調達等に関して精通してきた手応えがあります。

当初は、私の決済という専門性に行政決済を足し算したいという考えでデジタル庁に参画しましたが、寧ろ掛け算的に決済の知見が深まりました。決済専門コンサルタントのOne of Themにならず、極めて独自性の強いコンサルタントになっていると自負しています。これを活かしながら、LTSにおいて決済や金融のビジネスラインを強化していくことが、今の狙いの1つです。

金融機能を異業種に溶かし・埋め込んでいく

LTSには2024年7月に参画しました。今日のLTSは、その他のコンサルファームと比べて金融系において実績豊富というわけではありませんが、かといって今後、他社並みのサービスラインを充実させようとは考えていません。金融機関に在籍していた時期にも感じていましたが、今や金融機関は異業種と「融和」していく段階に入っています。「融和」とは銀行を例にとれば、銀行サービスを法人個人に提供拡大していくという従前のビジネスの話ではなく、銀行機能を異業種の中に溶かし込んだり埋め込んだりする、というニュアンスを込めています。

あらゆる業界の垣根が融解し始めている中、規制という高い参入障壁で守られていた金融機関も例外ではなく、持ち合わせている機能を異業種向けに仕立て直す必要があるでしょう。このときの戦略は画一的ではなく、経営や事業に纏わる多くの変数を考慮しながら戦略策定していくことになりますし、常に走りながら戦略の見直しをしていくことが望まれます。

そうした中、LTSには協調的でメンバー全員でアイデアを出していく、包摂的なカルチャーがあると感じています。ミッション「可能性を解き放つ〜人の可能性を信じ、自由で活き活きとした人間社会を実現する〜」は、決して只の美辞麗句に終わらず、社内に定着している印象です。 

LTSで目指す「健全な追いかけっこ」と顧客価値の向上

こうしたLTSの組織的な特長は、前述のような金融機関における事業変革に大きく役立つと考えています。極度にサイロ化されていないLTSの組織構造も手伝って、LTSには各業種を担当するコンサルタント同士の壁がありません。そのため、金融機関に向けて異業種の成功/成功事例について多くの示唆と共に提供することが出来る高いポテンシャルがあります。

LTSのオフィス

最新のデジタル技術についても、トレンドを追いかけつつ、常にその有用性や導入時影響等について見極めていきます。したがって、流行りの技術に飛びつくだけということはしませんし、クライアントに対して責任感を持って紹介と提案をしていきます。そうした前提のもと、先頃に参画した一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA)のようなコミュニティを通じて、LTSが有するDX支援や事業変革ノウハウ、データ利活用の実績を一層洗練させて、クライアントへの提供バリューの最大値を引き上げていきます。

同時に、メンバーの知見向上と組織還元も重視することで、バリューアップとの相互サイクルを回していく予定であり、前述の行政決済の知見を含めて、メンバーにはナレッジトランスファーしていきます。その過程で私の独自性は薄まっていくかもしれませんが、それに負けないように私自身もさらに成長していく所存ですので、「健全な追いかけっこ」をやりながらクライアントバリューを高めていきたいと考えています。