この事例記事は、株式会社エル・ティー・エスのLTSコラムとして2019年9月に掲載されたものを移設したものです。
静岡トヨペット株式会社様
静岡トヨペットは『静岡県をもっと元気に楽しく!』を掲げ、自動車販売店という枠を超えた「楽しい暮らし」「絆」「人の財(たから)」づくりの活動に取り組み、お客様に車を通じた幸せ体験を提供しています。
近年働き方改革に取り組み、クラウドサービスや、ペーパーレス化などIT技術を採用し管理機能業務の効率化を実現しています。この度、さらなる業務効率化を目指し、業務アセスメントによる業務最適化とRPA導入および、高度化する先進IT技術の利活用を目的とした社員の人財育成を実施し、同社内にRPAを自走で運用していくためのRPA開発チームを立ち上げました。
所在地:静岡県静岡市葵区長沼611
設立:1956年5月設立
従業員数:798名(2019年1月1日現在)
URL:https://shizuokatoyopet.jp/
RPA開発チーム、インタビュー協力者の紹介
静岡トヨペットのRPA開発チームは、入社年数や経歴・経験などを問わず、各部門から抜擢された6名で構成されています。
LTSによる、RPA開発基礎~応用トレーニング、RPAトレーナー養成教育を受講し、その後は社内で開発を開始。ロボ開発、エラー対応など実務運用ベースでスキルを増強しています。
今回はその中から、経理部の林様とIT戦略・推進部の望月様にインタビューにご協力いただきました。
(写真:RPA開発チームの業務風景)
RPA開発チーム 経理部
林 様
経理部門で、業務は主に決算・月次・資金繰り・予算管理を担当
RPA開発チーム IT戦略・推進部
望月様
SNS・ホームページ・Web広告などを担当
「ちょっとやってみないか?」から始まったRPA開発、今ではRPA対象業務が自然と思いつくように
●どんな業務を対象にPRA開発をしていますか?
林:
開発のメインは、プロジェクトとして進めているBIやマージン計算のRPA開発です。それ以外に経理部内の業務もRPA化を進めています。部内の業務については、RPA化できそうな部分があれば、削減効果が少なくても設計できそうなところからRPA化しています。まずは開発の数をこなすことで、設計スキルが身に付き、他の業務のRPA化にも活かせるようになりました。RPAをどう活用するか、のアイデアも自然に湧いてくるようになり、RPAの設計の幅が広がっていくのを感じています。
望月:
経理は社内で最もRPAの活用が進んでいますよね。
林:
経理は業務的にRPAを適用しやすいため、経理部門としての業務のRPA化もプロジェクト全体のスケジュールと並行して進めてほしい、という気持ちが上司にもあったと思います。
望月:
私は、昨年所属していた総務部で、各部から経理に提出する伝票作成のRPAを開発しました。現在は他の部署へのRPA導入に向けて、業務整理を行っています。
● どのようにRPA開発担当に任命されたか、教えてください。
望月:
RPA開発担当となった当時(昨年)は新入社員で総務部に所属していました。上司から「ちょっとやってみないか」と声をかけられ、RPAがどういうものかという事前知識もなく参加しました。
林:
私は、上司から「会議があるから出席してきて」と言われ、出席した会議で内容を初めて知りました。当初、半年という話でしたが、気づけばそろそろ1年が経ちますね。
正確な業務フローとロボへの理解で、適切な開発と運用を
●RPAの開発をやってみて難しかったところはありましたか?
林:
1つは、画面が少しでも変わったり、ローディングで時間がかかったりすると、動作が変わってしまうことです。それをフォローするためにどうしたらいいのか、エラーが起きて初めて気づくこともありました。普段何気なくやっていた作業も、RPA化するにあたって設計を見直さないと意外なところで止まってしまうこともありました。また、作ったロボを人に運用してもらう場合、正しくレクチャーし、理解してもらうこと、今までと仕事のやり方を変えてもらうことも必要でした。
● RPAの開発以外で大変だったこと、工夫したことはありますか?
望月:
業務整理が今までできていなかった、ということを実感しました。各担当者が、前任者から引き継いだやり方をそのまま実行していて、マニュアル化されていない、目的が把握されていないケースが多かったです。「本来、この業務はやらなくてもいいのでは?」という観点での検討はほとんどされていませんでした。
林:
これまでは業務の範囲が経理だけだったので、前後の業務に関わる担当者と話せば済んでいました。ですがRPAは全社で運用していくため、部署を超えて多くの人と関わる必要があり、業務整理を進めるにも従来の仕組みを変えるぐらいのパワーが必要でした。
望月:
業務フローをしっかり書いて、マニュアルを作っておくことも重要だと感じましたね。
林:
しっかりした業務フローがないと、他の部署の業務を知るのが難しいです。自分の部署なら理解できていますが、他の部署のRPAを作るシーンでの業務理解が難しかったです。一度説明されただけでは理解できないことが多かったので、LTSさんがやっていることを真似して、ヒアリングシートを使うなどして対応しました。
● RPAについての考え方での注意点はありますか?
林:
RPAで何でもできる、とは考えないでほしいと思います
望月:
何でもできるように感じるかもしれませんが「人ができないことはロボットにもできない」ということは、理解して進めたほうがいいと感じました。
林:
RPAを導入した業務についても、RPAに全てを行わせているわけではありません。RPAは、RPA化に適した部分で利用し、ExcelのほうがよいところはExcelで、さらにRPAで全てを一つにつなぐような設計が理想的だと思います。また、周囲の理解も必要です。RPA担当者だけではなく、押し付けにならないように実際に使ってもらう人の理解も深めていければと思います
トップダウンでの展開で、社長~社員まで団結して業務改善を
●RPAを業務に活用するようになって変わったことはありますか?
林:
経理部では、何気ない会話の中に「RPA」という言葉が出てくるようになりました。「あの業務はRPAにすれば上手くできそうだよね」とか「あの業務はRPAにしたから時間がかからなくなったけど、また別の課題が見えてきたね」とか。普段の会話の中に「RPA」が出てくることが当たり前になったことは、大きな変化といえると思います。
望月:
思った以上に、前向きなリアクションが多いです。「これはRPAでできそうだよね」といった言葉を、まだ導入していない部門も含め、社内の色々な場所で聞くようになりました。
● RPA導入がスムーズに進んだきっかけはありましたか?
林:
トップダウンでRPAを浸透させることも大事です。弊社では、社長からRPAを使っていく、という号令がかかったり、全社員大会や部長会議でも繰り返し説明されていたため、展開がスムーズに進みました。
● RPA導入に苦労している企業が多い中、RPAの内製化が成功した理由はなんだったと思いますか?
望月:
実際に作ったロボットを使ってくれる人が多く、協力的だったからだと思います。
林:
ロボットを作ったら、必ず部署のメンバーに定例会議でお披露目(説明)をしています。説明をすることで、「こうしたほうがいい」など、自分では気付けなかった指摘をもらえることもあったので、メンバーを巻き込むことで、より効率的なロボット開発ができると実感しています。開発中には気が付かないことも、実際に運用したら改善点が出てきます。周囲を巻き込みつつ、効果・検証を繰り返すことが大事だなと。
望月:
RPAに限らず、会社全体で新しいことへ取り組むハードルがすごく下がっています。
林:
ひと昔前は仕事のやり方に「慣例」が多く、以前から続けていることをそのまま継続する体質でしたが、ここ数年は新しいことにどんどん取り組んでいます。そして、やっぱり仲間がいることは心強かったですね。設計に悩むことがあっても、仲間がいることで別の視点をもらえる、学びあえることがよかったです。通常の業務ではかかわりのない人と一緒にできたこともよかったと思います。
今回は、自部門の業務をこなしながらRPA開発チームの一員として、部門を問わずRPAの展開、開発・運用を担当している林様と望月様にお話をお伺いしました。同社では、「トップダウンでのRPA導入」や「各部門からの抜擢によるRPA開発チームの結成」などが良い効果を生み、RPA導入がスムーズに進んでいるようでした。林様、望月様、貴重なお時間をいただきありがとうございました。
ライター