プレスリリースはこちら。
顧客管理システム刷新プロジェクトの概要
CiSSは伊藤忠商事株式会社の100%出資の事業会社で、伊藤忠ファミリーフェアや各種ブランドセールなどの催事、オンラインセールを完全会員制で開催しています。主に、年間約400回にのぼる催事の集客や運営を通じて得た100万人超の顧客情報をもとに、会員送客や各種商品の販売斡旋をすることで顧客満足度の最大化を実現しています。
従来運用していた会員向けオフィシャルサイト・ECサイトおよび、会員情報と催事の実績情報を管理するオンプレミスの顧客管理システムを全面刷新することを目的に、2021年からプロジェクトが開始されました。
新型コロナウイルス感染拡大を契機に、催事会場や在宅環境など外部からのシステム利用の必要性を受けて、クラウドベースのシステム構築を前提としたシステム構想策定を2021年から開始、設計・開発フェーズを経て、2024年1月から新しい顧客管理システムの利用を開始しました。
今回のインタビューでは、CiSSからプロジェクトオーナーとして執行役員の野田博之様、プロジェクトマネージャーとして林昂人様、プロジェクトメンバーとして高橋直子様・村尾志乃様に、LTSからはプロジェクト責任者の上野、エンジニアの荒谷に話を聞きました。
慶應義塾大学卒業。学生時代は法学部で学び、海外留学や長期インターンを経験。就職活動にてITの重要性を感じ、上流から下流まで一貫して関われるLTSに入社。入社後は、研修を経て自社のWebサービス開発やクライアントの倉庫管理システムの開発等を経験。併せて社内活動として、採用やセキュリティ委員等にも携わっている。
CiSSとLTSの出会いからシステム刷新プロジェクトの支援開始へ
野田:
CiSSはリアルで行なわれる催事やイベントの運営・集客をビジネスの主体としていますが、リアル一本足のビジネスからDX化・デジタル化を推進するコンサルティング案件が、伊藤忠本社の主管部の協力を得て2019年に立ち上がりました。そのコンペ先の一社がLTSさんでした。
上野:
そこで初めて野田さんとお会いしましたね。
野田:
そのプロジェクトの依頼先は結果として他社さんに決まったのですが、LTSさんは提案前に催事に足を運んでくれて業務に寄り添いながら核心を突く提案をして頂いたので、近い将来一緒に仕事をしたいと思っていました。
その後に起きたのが新型コロナウイルス感染拡大です。そこから先はDX云々より、会社としてこの状況にどう対処すべきか?の検討でした。
上野:
コロナはCiSSさんにとって大きな問題でしたね。メインビジネスの催事が物理的に開催できない、という状況ですので。
野田:
はい、2020年の3月から夏前まではイベントが一切できなかったです。CiSSは突如として危機的状況に陥りましたが、伊藤忠本社のバックアップや取引企業の協力もあって7月に何とか催事を再開することが出来ました。しかし、新型コロナウイルス感染は収束の気配はなく、精神的にもきつい時期でした。
アナログからスタートした顧客管理システム
野田:
そういった中でも、顧客管理システムの刷新はマストのプロジェクトでした。
林:
保守切れになる顧客管理システムの刷新、他にもオフィシャルサイトからのイベント予約機能、ECサイトなど、連携が必要なシステムもリニューアルが遅れていました。
そもそも最初はアナログでお客様の名前と住所を管理するところから始まっているビジネスモデルで、メールアドレス未登録の顧客情報などもあり各種データの統合ができていない問題もありました。
高橋:
催事会場での手書きの会員情報の登録もあるので、登録タイミングで住所の書き方が以前と違う場合には二重登録になる…といったケースも多々あります。
野田:
CiSSのサービスは誰でも会員になれる仕組みではなく、紹介者や本人確認の必要性、さらにオフラインとオンラインそれぞれ登録の入り口があり、デジタル化を進めていく上でのハードルが高いことも難しさの一因です。
林:
データ分析ツールでは、一度システムからデータを出力して分析していたので、営業担当が自分で分析できないなど使い勝手に問題がありました。
検索・データ抽出からそのまま分析ができるようにしたいと考えていました。
野田:
このように課題が山積する中で、あらためてLTSさんにお声かけしました。
最適なパッケージシステムがない…それならLTSがやります
上野:
顧客管理システムの刷新にあたって、LTSはCiSSさんと同じ立場でシステムの構想や最適なソリューションを考えるITコンサルティングの支援をしていました。ECサイトを先にやるか、顧客管理を先にするか…などを考えながら、今回のシステム構築を依頼できるITベンダーを探していました。
しかし、各システムのデータの持ち方、システム間の関係など、難しい点が多かったです。顧客管理に適したCRMパッケージがない中で、どうシステムを構築するか…? CiSSの皆さんと一緒に考えました。
林:
従来の顧客管理システムは弊社の業務に合わせたスクラッチ開発で、オフィシャルサイトも元々はスクラッチで作られたものですので、システムを刷新するにあたって、従来と同じ機能がちょうどよく揃っているパッケージシステムはありませんでした。対応できそうなベンダー探しも苦労していました。
そんな時に上野さんから「LTSがスクラッチでシステム構築します」という提案を頂いたのです。
上野:
CRMパッケージでの構築は困難な見通しでした。また、システムの複雑性をベンダーに説明すればするほどローコードやスクラッチ開発も含め各社提案をしり込みするような状況で、本心としては「持ち手がなくなってきた、やばい、どうしよう」という気持ちもありました。
LTS社内での開発も選択肢の一つではありましたが、もともとシステムの選定をする立場で支援していたので、それをそのまま「LTSで作ります」というのは、正直逡巡がありました。
また、開発についてもクラウドアプリの実績は重ねていたもののCiSSさんの要件を実現できるか? を何度も議論した上で「LTSに任せてもらえるならスクラッチで作ります」とお伝えしました。
野田:
いやいや、言ってもらえてよかったです。
上野:
ご提案したところ「え、できるんですか?」と驚かれましたね。
林:
「スクラッチで開発する選択があったのか!?」と驚きました。
野田:
CiSSとしては、一番システムのことを理解しているLTSさんに「スクラッチがベスト」と提案頂いたので、安心してお願いできました。
コンサルフェーズから開発フェーズへ、議論しながら進めたシステム刷新
林:
実際にLTSさんが開発する体制で進めてみると、他の開発ベンダーとは明らかに違うと感じました。
他の開発ベンダーさんはコミュニケーションでよく問題が起きていましたが、LTSさんはそういうことが起きない。
野田:
過去にお付き合いのあった開発ベンダーは、言った言わないといったトラブル、同じ説明をしても結果が違う、などコミュニケーション面で苦労しました。LTSはコンサルフェーズから入っていて事前の理解も深く、開発フェーズでも変わらず客観的に意見を言っていただけました。この違いは大きかったです。
高橋:
システムに必要な機能が多くて、私は登録、分析、統合、API連携などをLTSのPMの方と相談しながら進めました。今回はこうしたい、実現できるのか?など、ひとつひとつの機能に対して根気よく対応頂きました。
村尾:
システムに追加したい機能を要望したり提案してもらったり、色々と検討頂きました。元がオンプレミス環境だったのでサーバを使うのに制限はなかったですが、今回はクラウドにインフラを変えるので、パフォーマンスや費用まで考慮してもらいました。
高橋:
他の機能への影響も考慮して「本当に必要な機能は何か?」を考える連続なのですが、LTSさんは皆さん話の理解が早いのでストレスがまったくなかったですね。
林:
運用まで考えた上で、これをやるとコストが余計にかかる、他の方法は何がある…など、常にベストの提案をしてくれました。こういった対応の細やかさは、他のベンダーでは感じられないものでした。
上野:
みなさんに時間を取ってもらって、一緒に意見を出し合い議論ができたと思っています。実は、しっかり意見を出して議論をして頂けるお客様は多くありません。お客様と一緒に考えて議論できて良かったです。
荒谷:
開発側としても、細かく要望を言ってもらえるほうが助かります。お客様と議論して開発ができるのはエンジニアにとって貴重な経験になります。
大量の実績データ、クラウドでのデータ処理の問題
上野:
システムの刷新で最大の課題は、大量データの抽出ロジック、大量データ処理とそのパフォーマンスでした。元はCiSSさんのオンプレミス環境で動いていたものを、クラウドで使えるようにするにはどうすればいいか…? 社内で何度も議論していました。
林:
100万人以上の会員データに加えて、1年間だけでも400回以上の催事があり、そのDM送付や入場の実績データがあるんです。
荒谷:
DM送付実績、入場実績、それら大量の実績データをもとに詳細な条件を設定して、次の催事のためのDM送付先リストを作ります。膨大な実績データから必要なデータを抽出する方法、クラウドで大量データを取り扱うためパフォーマンスに問題が出てしまうこと、さらにクラウド環境でのデータ利用コストが課題でした。
高橋:
別のベンダーさんからは「オンプレミスの従来システムと同じ動きをクラウドで再現するのは無理、大量のデータ処理でコストも莫大になる」と言われていました。
上野:
コストとパフォーマンスの問題は、他の役員も入れて対応を議論しました。
検討できる期間が短く、難易度も認識していました。それでも期日を守ってリリースするという社内の意識は強かったです。
荒谷:
「お客様の大切なシステムだから、なんとしても実現しよう!」とLTS社内で決起会をしましたね。コンサル側、開発側もプレッシャーが強くて…今でもよく覚えています。「これは頑張らないと…!」と皆で話していました。
野田:
コスト面では解決の方法としてAWSの契約手法を提案してもらいました。その内容で、私たちも腹落ちして決めることができました。
荒谷:
パフォーマンスについては、クエリの見直し、ロジックに無駄がないか検証するなどプロジェクトメンバー以外にも協力してもらいチームの知見を総動員して解決を図った記憶があります。
稼働中のサイトを止めずに本番データを移行
上野:
移行に失敗するとCRMはECサイトと密に連携しているため一般のお客様にも影響が出てしまうのですが、現行システムのデータが細部まで分からないことがデータ移行の課題でした。
高橋:
従来のシステムには、その前のシステムから引き継いでいるデータもあったので、おかしなデータが大量に見つかったのです。事前にデータのクリーニングも必要でした。
林:
2024年1月のリリースに向けて、スケジュール通りにデータの移行をすることがマストでした。
取引先とCiSS会員のマッチングサービスもあるので、自分たちの都合でサイトを止められません。
高橋:
システム刷新で、従来と顧客データの持ち方や入れ方が変わり、実績データの構造も変わりました。データ移行ツールで新しいシステム用に変換したデータを流し込むのですが、移行データがエラーになったら、業務が止まってしまいます。これが一番心配でした。
本番のデータ移行はしっかりと成功したので安心できました。
リアルとデジタルのメリットでお客様に価値を還元してく
村尾:
データ抽出や分析に必要なデータのダウンロードに半日近くかかることもありましたが、新しいシステムでは瞬時に完了します。営業の業務改善には寄与していると思います。
林:
もとはオンプレミスなのでサーバへのアクセスは社内からに限定されており、催事会場で招待状を忘れたお客様のデータを見たい、といった要望に応えられませんでした。さらにコロナ後はリモート、在宅、という環境が増えましたが、新システムではそういった要望も実現できるようになりました。社内的な業務効率化が進む基盤になっています。
野田:
システムは変わりましたが、ビジネスの基本的なスタイルは未だ大きく変化できていません。エンドユーザとのタッチポイントにデジタルを用いて、デジタルツールをリアルのイベントにつなげていく検討は引き続き改善が必要だと思っています。そういう意味では、本当の本番はこれからです。
上野:
CiSSさんのビジネスモデルは衣料品のブランド価値を毀損せずにブランド在庫を流通させるという意味で、昨今話題になっている衣料品廃棄の削減という観点で非常に社会的価値が高いと感じています。そういった価値ある事業をデジタルとリアルという枠組みにとらわれず、LTSもしっかりと継続してご支援していきたいです。
野田:
今年以降、郵便料金が確実に上がっていく中で、紙のDMでのイベント案内をどうしていくのか? デジタルの集客が必要な状況ではありますが、実は紙の威力は変わっていなくて、むしろ強くなっています。デジタル化トレンドの一方で、紙のパンフレットのページ数が増えていたりもします。
デジタルでもアナログでも、良いものは利用していく、同時に新しいモノも使っていくことで、私達のビジネスの価値をいかにスムーズにエンドユーザに還元していけるか、考え続けたいです。
インタビューアー・ライター
SE・テクニカルライターを経て、LTS入社。ERP導入や業務改革におけるユーザー向け広報・教育企画および業務文書改善など組織コミュニケーションに関連するコンサルティングに従事。2017年よりLTSコンサルティング事業のマーケティングを担当。2021年より本サイト「CLOVER Light」の立ち上げ~運営・編集長を務める。(2024年1月時点)