ライター
そして、日本でも小規模ながらコミュニティが存在し、ビジネスアナリスト同士の交流が行われています。今回は、日本におけるビジネスアナリストのコミュニティについて紹介します。

このコラムの著者、大井悠が執筆する書籍「Process Visionary デジタル時代のプロセス変革リーダー」を2019年9月27日に発売しました。
本の詳細は「Process Visionary」紹介ページよりご覧いただけます。
ビジネスアナリストのコミュニティは「学び合う場」
ビジネスアナリストのコミュニティの一つである「ビジネスアナリストをはじめよう※1」は2020年5月に、有志メンバーにより設立されました。ビジネスアナリストに興味がある、ビジネスアナリストを目指したい、ビジネスアナリストのキャリアを育てたい、という方々がお互いに学び合うことができる場を作ることを目的としています。
このコミュニティの運営者の一人でもある私、株式会社エル・ティー・エスの大井悠が執筆しました『Process Visionary』の発行をきっかけに、ビジネスアナリストのスキルをITプロジェクトや業務改善に閉じずに、様々な業種・業界で働くビジネスパーソンに応用できるのではないかという声が寄せられました。
多様性が増加する中で、異なる専門領域をつなぎプロジェクトを推進するビジネスアナリストのスキルは、これから日本でも広く必要とされる能力であり、ビジネスアナリストという仕事に期待が寄せられています。
一方で、日本ではビジネスアナリストという職業は、専門職としてあまり定着していません。企業内でビジネスアナリストのような仕事をしている人は多くいる一方で、専門性を高める基盤がないことが課題として挙がっていました。また、ビジネスアナリストは企業内に数名しかいない場合が多く、孤独感やストレスを抱えてしまう傾向にあります。
そこで、同じ専門性を目指す人が集まることで、自らの専門性に気が付くことができるのではないか、また、集まった人たちが情報交換することで学び合いレジリエンスを強化していくことができるのではないかと考え、コミュニティ設立に至りました。所属している組織の外で、ビジネスアナリスト同士のつながりを広げることができる、学びや課題を共有することができる、そのような場を目指しています。
誰もが立ち寄れるよう、オープンなイベントを開催
日本にはIIBAという大きなビジネスアナリストコミュニティはあるものの、そこに集まっているのはシステム開発を得意とするエンジニアの方が多く、ビジネスアナリストは少数派だというのが実態です。そのため、ビジネスアナリストとして新規に参加しようとすると、敷居が高いと感じられるかもしれません。
「ビジネスアナリストをはじめよう」は、入会が必要なメンバーシップ制ではなく、誰もが気軽に立ち寄れる場となるようオープンなイベントをベースに活動しています。現在グループのSNSメンバーに100人程度が参加しており、ビジネスアナリストとして参加されている方だけでなく、ビジネスアナリスト以外の自身の専門性を深めるためにコミュニティに参加されている方もいらっしゃいます。
<コミュニティの運営方針>
コミュニティメンバーが学び合う場の提供
(交流会、話題提供、事例紹介)
ビジネスアナリストの社会的認知の向上に寄与する
(専門団体や有識者とコラボして活動を進める)
上記の運営方針にもある通り、コミュニティの運営側が何かを教えたり、意図したところへ誘導したりするのではなく、メンバー同士が双方に学び合うことを重んじています。また、ビジネスアナリストの社会的認知の向上に寄与する、ということも協力して進めていきたいと考えられています。
事例共有会を通して学びや課題を共有する
過去の交流会では、ビジネスアナリストの業務内容を知ることで、自身はこれまでどのようなキャリアを積んできたのかを考えてもらう場を設けたり、企業でビジネスアナリストの普及活動をされている方にご登壇頂いたりもしました。
このコミュニティは立ち上がってまだ2年目なので、活動の推進はまだまだこれからだと感じています。現在はイベントや勉強会の開催など、「点」で活動をしている状態です。今後の展望としては、学び合う場の設定をし、そこに参加する人同士の横のつながりができたり、小さな派生コミュニティができたり、ということの後押しをしていきたいと考えています。この場に参加することで、何か新しいことを始めることができたり、前向きに物事を考えることができたりするきっかけを作ることができたらいいなと思っています。
2020年5月という設立の時期もあり、コミュニティメンバー同士が対面でイベントを開催したことは未だありません。現在、オンラインでのイベントや交流が主ですが、アメリカから参加される方や、小さいお子さんを持ちながら参加される方もいらっしゃることを考えると、場所を問わずに参加できるというメリットもあります。
また、オンラインでの開催だからこそ「議論する」という、参加者同士のキャッチボールの場を積極的に設けています。例えば、過去のイベントでは、Zoomのブレイクアウト機能を使い、関心のあるトピックごとに部屋を分けて参加者に議論してもらい、その後、議論した内容をホワイトボードにまとめ、他の部屋に参加していた人たちに共有してもらっています。このように、いかなる場でも最大限の学びができるよう、運営メンバーで企画を練っています。今後、状況次第ではオンラインでの学びの場の設計もしていきたいと考えています。
コミュニティメンバーから広がる輪
コミュニティに参加している方々は、多様なバックグラウンドを持っています。ビジネスアナリストのスキルを本業に活かすことはもちろん、プロボノなどの社会貢献の場に活用できないかという議論もあり、「ソーシャル×BA」というテーマで、NPO法人であるサービスグラントと共同でイベントを開催しました。
このように、コミュニティに参加しているメンバーからの声で、次のイベントを検討したり、活動自体を改善したりしています。私自身このコミュニティを通して様々な方と出会い、新しい発見がありました。コミュニティに参加しているメンバーそれぞれにも、そのような出会いや発見があるといいなと考えています。
ビジネスアナリスト同士が支え合うコミュニティへ
最近、ビジネスアナリシスという専門性のスキルを自身の仕事に取り入れようと考えている方や、日々の業務の中に取り入れようと考えている方が増えている印象があります。これまでは、ビジネスアナリシスという専門性の認知があまり進んでいませんでしたが、コミュニティの活動を通してより多くの人に知ってもらい、様々な活動に活かそうという考えを支える一つのきっかけになるといいなと個人的に考えています。
ビジネスアナリストのコミュニティは「学び合い」を大切にしています。コミュニティに参加しているメンバー同士、活動やナレッジを社内や個人に留めずに、積極的に広めていこうと考えている人が多くいます。
実際に、企業内でうまくいっていない「ビジネスアナリストの育成」や「ナレッジマネジメントの方法」についての意見を、メンバー同士が議論し、経験や知識を共有し合う場面は自然に発生しています。いい意味で「お節介」な程、ナレッジマネジメントを推進していこうという雰囲気があります。
今後も学び合いを大切にし、ビジネスアナリストの社会的認知向上のために、コミュニティの運営を進めていきたいと考えています。
この回で、シリーズ「よくわかるビジネスアナリスト」は終了となります。今後もビジネスアナリストに関する情報発信は継続して実施する予定ですので、どうぞよろしくお願いします。
お読みいただきありがとうございました。
おすすめの本の紹介
プロジェクトマネジメントの啓もう団体であるPMIが刊行したビジネスアナリシスのガイドブックです。BABOKがビジネスアナリシスの概念を抽象的に表現している一方、こちらの書籍はプロジェクトの立ち上げから遂行における、ビジネスアナリストが行うべき実務がまとめられています。具体的なテクニックやタスクが記述されているので、実務に活かしやすいと思います。初めてビジネスアナリストに挑戦する方はこちらの書籍から入った方が分かりやすいかもしれません。
~編集後記~
シリーズ よくわかるビジネスアナリスト、いかがでしたでしょうか。
インタビューにもありました通り、大井さんはビジネスアナリストとして活動をする以前、自身の仕事に自信が持てず、不安や孤独を感じていたそうです。ビジネスアナリストという専門職を知らず同じような境遇にいる人を救いたい、周りにビジネスアナリストの仲間が居らず孤独を感じている人を救いたい、そんな想いを持ってこのコラム発信をされています。
LTS社員からは「大井さんのコラムを読んで初めてビジネスアナリストを知った」「ビジネスアナリストについてもっと理解を深めたいと思った」「普段の業務に活かしたいと思った」という声が聞かれます。私もその一人で、この記事の編集を通して多くのことを学びました。今後も、ビジネスアナリスト関連の記事発信を続けていきたいと考えています。
この記事を読んだみなさんに、新しい気づきや学びがあれば幸いです。
エディター

自動車部品メーカーにて、グローバルで統一された品質管理の仕組みの構築・定着化を支援。産休・育休を経て、CLOVER Lightの立ち上げ、記事の企画・執筆を務める。現在、社内システム開発PJに携わりながら、アジャイル開発スクラムを勉強中。Scrum Alliance認定スクラムマスター(CSM)、アドバンスド認定スクラムマスター(A-CSM)、Outsystems Delivery Specialist保有。(2023年12月時点)