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プロセス変革・業務改革

現場が動く改善活動 しくみで動かし、現場を巻き込む

この事例は、株式会社エル・ティー・エスのLTSコラムとして2018年4月に掲載されたものを移設したものです。

多くの業務改革活動において、現場がついてこないといった話を耳にします。LTSが実際に支援をした事例をベースに、現場を動かす事務局の役割、基盤づくりについてご紹介します。これら基盤により、RPA等効率化施策の導入・活用もスムーズとなります。

概要

効果的な改善活動を進めるには

ビジネスプロセスの可視化、改善に向けたアプローチには、トップダウンによる大規模・迅速な改革、ボトムアップによる現状課題ベースの着実な改善手法の2つがありますが、どちらもメリット・デメリットが存在します。

トップ・ボトムのアプローチを別々の目的・取り組みとして進めていては、改善は一過性のものとなり継続的な効果は得られません。経営層・活動全体を管理する事務局的な推進チーム、そして各部の管理職から現場の担当者までを、効果的に巻き込み各者の活動をつなぐ「しくみ」を作り・活用することで、円滑かつ継続的なプロセスマネジメントを実現できます。

現場が動く改善活動

実際に「しくみ」を作り活用した改善活動の事例として、以下の改善ステップをご紹介します。製造業シェアード会社のB社では、グループ各社に管理業務を提供していましたが、年々業務範囲が拡大する中、業務のブラックボックス化/属人化が発生し、改善活動を行っても場当たり的なミス・トラブルの防止に終始している状態でした。そこで、まずは業務可視化を目的に置いて活動を開始しました。

Step0:全体プロセスの俯瞰「プロセスマップの”仮”作成」

改善活動に取り組む際はまず共通認識を作り、どのプロセスを改善活動のターゲットにするのかを決めることが重要です。活動のスタート時点では、現場の担当者は巻き込まずに、改善を進める事務局・経営層が主体となり、プロセス全体の可視化(プロセスマップの“仮”作成)と、最初に可視化の対象とする領域を定めます。

この活動を進めることで、事務局側のリテラシー向上や事務局メンバーのスキル可視化も可能になります。

Step1:スモールスタート「特定領域を可視化」

終わりのないビジネスプロセスマネジメントの活動継続には、成果を認識すること・改善のモチベーションを維持できるように取り組むことが必須です。「現場を巻き込む」最初のステップでは小さな成功体験を積み上げることが大切です。

ターゲットの領域を絞り込むことで、現場の状況を詳細に把握します。このタイミングで巻き込んだ現場の担当者が、今後全体の改善を進めるにあたり、並走してくれる理解者となります。また、事務局側もここでトライアルを経験することができます。

Step2:改善目的の設定と工数計測「全体を巻き込む」

全体を巻き込む活動は、改善の目的を各課で決めること・決めた目的に応じた工数の計測からスタートします。事務局が目標設定するのではなく、各課の課長が改善目的を定め、それに応じた工数計測をすることで、徐々に活動に関与する社員を増やします。

Step3:工数の分析「現場にアナリストを育成」

工数計測の着実な継続のために、各課にアナリストを任命します。計測の継続と振り返りを各現場で主体的に進めることで、計測の分析結果をどう活用していくのかが現場担当者にも見えるようになります。

また、アナリストのモチベーション維持・リテラシー向上も、継続的な活動には重要な要素です。アナリストを集めた定例会・報告会の実施で同じ課題・悩みを抱えるアナリスト同士が情報共有できる場を作ります。アナリストの育成は事務局が責任を持ち、講習会・分析ツールの配布などサポートを継続することが重要です。

Step4:全体プロセスの可視化「業務全体の共通認識作り」

プロセスマネジメントで重要なことは、ビジネス全体像の共通認識を持てていること、全体像の中で各部・各課が担っているプロセスを説明できることです。

各課で行った計測・改善活動を踏まえて各部課長が議論することで、最初に事務局主導で“仮”作成したプロセスマップを、あるべき全体像に更新・可視化します。

更新したプロセスマップは全社員に公開し、全体を俯瞰する視点の醸成・プロセスへの理解と新たな改善ポイントの発見を促します。

Step5:組織横断の改善活動「自律的改善活動へ」

プロセス全体への共通認識が生まれ、プロセスごとの連携に理解がおよぶことで、組織・プロセスを横断した改善活動を進められる基盤が整いました。

改善活動を継続的に進めるため、事務局は可視化したプロセスを改善に活用するスキルの展開を進めます。現場がこれらの可視化・改善リテラシーを獲得することで、はじめて自律的・横断的な改善活動がスタートします。

改善活動をつなげて巻き込む「しくみ」とは

表改善活動を進め、現場が主体的・横断的に成果を生み出すには、各関係者の活動をつなげて巻き込む「しくみ」が重要な要素となります。今回の事例では「情報(目的等)」「ガイドライン・ルール」「リテラシー」「共通の拠り所」が、改善の全体活動と個別活動をつなげる「しくみ」として機能しました。

体制先行で活動を開始せず、目的に合わせて推進体制を変える

各部から人を集めてから目的を話す、呼ばれたメンバーは自分が何をすればよいか分からない、など体制作りを先行させると形骸化のリスクが高まります。活動のスタート時点では、最低限のメンバーで情報(目的等)を共有します。

そして、その後の活動の拠り所とするプロセスマップ等を作成し課題認識を合わせることによって、その先の体制をどう拡大するか、誰を活動に加えるべきかが明白になります。

活動を推進する「事務局(組織横断チーム)」の役割

「しくみ」を活用した改善活動を進めるには「事務局」の役割が欠かせません。事務局の役割は、① 情報(目的)・ガイドラインを示す、② 共有の場や研修・説明会を提供しリテラシーを向上させる、③ 現場の声を聴く、など多岐に渡ります。

共通の拠り所となるプロセスマップやフロー・工数データ等も、初期フェーズでは事務局で主導で作成・ルールの展開を進めます。

そして、改善活動が現場を巻き込むフェーズに至ると、横断的な改善活動に必要な可視化スキルの教育、アナリストを育成するための分析ツールの提供など、プロセスマネジメントを自律的に進められるリテラシーの展開も重要な役割となります。

変化に対応できる組織へ

今後の社会環境を中長期的にみると、外的変化(少子高齢化・グローバル化・IT/AIの発達)や内的変化(社内組織の変化・変化に応じたガバナンス強化/リスクマネジメント・働き方の多様化)が予測されています。

現在の課題の解決に留まらない、変化に対応できる事業・組織作りが必要です。そのための業務変革のポイントは、一過性の効率化ではないトップダウンとボトムアップ活動をつなげる「しくみ」を構築しておくことにあります。

短期的・個別施策と「しくみ」作りを並行することで、効果を出しながら変化に強い体制作りを行うことができます。

プロセス変革の施策「RPAのトライアル導入」

改善活動の成果をもとに、さらなる業務の効率化に向けてRPA(Robotic Process Automation)の導入に着手しています。人の操作をロボに移行するには、個別業務を洗い出し対象業務を整理・可視化することが前提になります。

B社では一定の業務可視化などの取り組みが進んでいるため、自動化への着手がスムーズに進められます。また、RPAも業務パッケージシステムと同様に様々なツールがあり、企業規模や活用方法に応じた選定が必要になります。業務の全体プロセス・特性が把握できているとツールの選定も時間をかけずに行うことができます。

B社では、改善活動と同様に特定プロセスを対象としたトライアルからスタートし、ロボットを統制する経営・情報システム部門とロボットで業務を自動化する現場がつながる「しくみ」を活用し、スモールスタートで業務適合性を確認しました。

2ヶ月の期間で、計画~トライアル~スキトラ~効果検証まで実施し最大で約80%の業務時間削減が実現できました。トライアル導入で構築した、RPA導入のガイドライン・管理ルールをもとに効果的な全社展開を進めることができます。


ライター

CLOVER編集部()

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