2015年にLTS入社、大手自動車会社にてBPO業務の業務プロセス運用・改善の長期プロジェクトに従事、その後、課題整理・プロセス可視化等の業務分析プロジェクトを複数経験。2022年1月から自己研鑽・ボランティア休職を取得し青年海外協力隊としてガーナで奮闘中。(2023年2月時点)
断水問題の解決に向けた取り組み
年明け以降、例年より早い乾期入りの影響で全く水が出ない日が4か月弱続き、精神的にも参っていた。水の確保に頭を悩ませる日々の中でようやく信頼できるガーナ人に巡り合え、以降水ストレスは格段に減り、気付けば雨期に入った。
自宅の水を確保するだけでも精一杯の状況であったが、配属先の学校ではより深刻な問題となっていた。昨年度から職業訓練校の授業料が無償になったことにより、生徒数が例年の3倍以上に膨れ上がり、学校の貯水槽の水が年明け前に尽きてしまったのである。
生徒たちは、生活用水を入手するために近くの水源まで往復20分×3セットの水汲み生活を強いられることになり、年末年始の休暇が明けても彼らの実家から学校になかなか戻ってこなかった。結局、生徒が揃ったのは、1月末であり予定より3週間遅れての授業開始となった。
ガーナに来る前から「断水が多い地域」ということは聞いていたが、ここまで生活に支障をきたしているとは思ってもいなかった。JICAとしての活動が出来ないという次元の話ではなく、生活がままならないこの状況を何とか改善出来ないものか?と色んな方面の人に相談したところ、日本のODA予算の中に「草の根・人間の安全保障無償資金協力」というスキームが存在することを知った。
この支援制度は「開発途上国における経済社会開発を目的とし、地域住民に直接裨益する事業のための必要な資金を提供するもの(原則1,000万以下)」である。基礎生活分野及び人間の安全保障の観点から重要な教育、保健、民生環境等の分野を優先的に支援しており、過去には同国ガーナにおいて井戸を掘るようなプロジェクトも実施されている。任地の水問題を少しでも解決すべく、まずは申請に向けて各方面での調整を始めた。
地域の問題であるため、地域を管轄する郡長から書類を提出する必要があり、郡長に話を通すまでのプロセスも長く時間がかかる。また、水を確保する手段も ①近くの水源から水を引く、②近くの水道管から水を引く、③井戸を掘る等3パターン程、案が考えられる。
申請の段階でそれぞれの見積が必要となってくるのだが、この見積取得も時間がかかる。
ガーナでは、サービスは前払いが基本であるが、申請の段階では審査前のため、調査費用が負担出来ない。そうすると、各社のやる気が一気に下がり、参考値の見積額ですらなかなか出してくれない。
また、同じ郡内のNGOから同様の水問題の案件の申請が挙がっているという話を聞きつけ、コンタクトを取ってみるも、教えてもらった電話番号は該当のNGOとは無縁で架空のNGOからの申請であった。このように前途多難な始まりであるが、何とかこのスキームを用いて、少しでも任地の水問題を解決出来るよう残りの任期を使って取り組んでいきたい。
コラボレーションで生まれた新たな価値
別の職種の任地が異なる隊員が、配属先見学という名目で2週間滞在してくれたことがあった。彼女も職業訓練校配属であり、洋裁の職種で派遣されている。一見、洋裁とPCインストラクターという組み合わせだと相関が弱いように思えるが、お互いの悩みや不安を共有することで打開できることがあると学んだ。
私の配属先では、インド政府の支援により立派なPCルームが建てられ、PCも揃っているが、PCカバーがなく困っていた。以前から学校内でカバーの重要性を説いていたが、資金がない以上は動きだせない。
そこで彼女に洋裁で余った端切れを縫い合わせて何とかカバーに出来ないかと相談を持ち掛けたところ「ピュアウォーター(袋入りの飲料水)の袋で出来るかもしれない」と助言してくれた。2週間の間にピュアウォーターのラバを集め、カウンターパートと一緒にデザインを考え試作→修正を繰り返した結果、最終的にはこのような立派なPCケースが完成したのである。
このピュアウォーターはペットボトル飲料水の1/3の値段で買えるため、任地での需要が高いが、飲み終わった後の袋はごみとして捨てられてしまう。赴任当初、自身もこの袋を何かに活用できないかとテープでつなぎ合わせ箱を作ってみたりしたが、すぐにへたってしまい断念した過去があった。
しかし、今回他の隊員の力を借り、ミシンで縫うという発想を得たことで、ごみが貴重な資源に生まれ変わったのである。この感動は大きく、一人で諦めかけていたことも誰かに共有することで次に繋がるということを実感した。
任地が抱える水問題も協力隊員だけでなく、JICA職員、日系企業勤務の方と色々な方に話をする中でガーナの日本大使館勤務の方に繋いでもらえ、前に進めることが出来た。一人の力は小さいかもしれないが、日々の気付きや悩みを発信し続けることで活路が見出せることを学んだ経験となった。
ICT分科会の立ち上げ
PC関係の職種の隊員が増えたこともあり、念願だった分科会の立ち上げを5月末にようやく実現することが出来た。分科会では、関連職種の隊員で集まり、各々が抱える悩みや工夫を共有し合い、日々の活動の底上げをすることを主な目的として活動を進めている。
5月末に1回目の分科会を対面で実施し、今年度は①ICTの教科書作成PJと②ワークショップの開催を主なイベントとして活動を進める予定である。
ガーナでは、ICTのシラバスがあり、教える単元やテーマの記載はあるが、どの粒度までどのように教えるかという細かい指導要領は存在しない。そのため、各隊員が配属先と会話しながら手探りで授業を行っているのが現状である。そのため、過去の隊員成果物や現隊員の作成した授業スライド等を持ち寄り、授業の手助けとなるような教科書作成を検討している。
また、学校にもよるがICTコースの生徒は年々減少傾向にあるようで、私の任地でのICTコースの生徒は1年生2人、2年生2人という状況である。そのため、自分のレベルを客観的に知る機会が少なく、他の学生と競い合わせることで学習のモチベーションを上げてもらいたいと考えている。また、お互いの授業を見学することで隊員や同僚の活動のヒントにしたいという要望からワークショップも開催予定である。
任期までの残りの期間で、通常の授業だけではなく、断水解決に向けた取り組みや分科会の活動にも注力していきたいと考えている。
今回のレポートは以上です。次回は異文化に接したエピソードを紹介します。
エディター
SE・テクニカルライターを経て、LTS入社。ERP導入や業務改革におけるユーザー向け広報・教育企画および業務文書改善など組織コミュニケーションに関連するコンサルティングに従事。2017年よりLTSコンサルティング事業のマーケティングを担当。2021年より本サイト「CLOVER Light」の立ち上げ~運営・編集長を務める。(2024年1月時点)