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着任1年半のふりかえり:前編 ガーナ滞在記⑤ (LTSボランティア休職 利用事例)

LTSの「自己研鑽・ボランティア休職」制度を利用して休職中の池田さんは、青年海外協力隊としてガーナに赴任しています。この記事では「ガーナ滞在記」として、池田さんから定期的に届く現地レポートを紹介します。今回のレポートでは、着任1年半のふりかえり(前編)として、ガーナのよさこい祭りと、ガーナで教師として体験したテスト監督について紹介します。
池田 愛子(LTS コンサルタント)

2015年にLTS入社、大手自動車会社にてBPO業務の業務プロセス運用・改善の長期プロジェクトに従事、その後、課題整理・プロセス可視化等の業務分析プロジェクトを複数経験。2022年1月から自己研鑽・ボランティア休職を取得し青年海外協力隊としてガーナで奮闘中。(2023年2月時点)

ガーナに着任し、早いもので1年半が経過した。

赴任当初は一日一日がとてつもなく長く、早く任期の2年が経ってほしいと思うほど、生きづらさを感じていた。しかし今では笑い話に出来るほど、この地での生活が心地よくなった。

この1年の間に新型コロナウイルスや感染性胃腸炎に感染するなど、体調を崩すこともあったが、大きなアクシデントに見舞われることなく、元気に過ごすことが出来ている。 前回のレポートから半年が経過してしまったので、今回はダイジェスト版として大きなイベントを振り返りたい。

よさこい祭り in ガーナ

ガーナに伝わる「現代版よさこい」

2002年から続く伝統のある祭りであり、高知県出身の駐ガーナ大使の呼びかけで始まったそうだ。ガーナ全土からたくさんのよさこいチームが集まり、ガーナ人達が鳴子を持ってリズム感抜群で披露してくれるダンスは見応え抜群である。

よさこいの語源は、諸説あるようで「夜さ来い=こんばんは、おいでください」という意味が変化した言葉と言われているそうだが、高知県出身の隊員が「良い世さ来い」という意味もあると教えてくれた。

現代よさこいは、ジャズやサンバなどアフリカをルーツとする音楽やステップを取り入れ、自由に踊るところから始まったそうだ。奴隷貿易の暗い過去を持つアフリカの祖先たちの「自由を手に入れたい、良い世の中になって欲しい」という魂の叫びから生まれた音楽やステップが現代よさこいに取り入れられ、そしてまた故郷であるアフリカに帰ってきたと考えると感慨深いものがある。

祭り当日は、晴天に恵まれカンカン照りの中、各チームがよさこいを披露した。私たちもJICAメンバーとしてよさこい踊りを踊った。隊員は、任地で各自練習する必要があったのだが、よさこい=ソーラン節だと思い込み、必死でソーラン節を練習していたのだが、リハーサル直前にソーラン節とは全く異なる現代風のよさこい踊りであることが判明し、任地が近い隊員と夜通し練習したのも良い経験である。

ガーナ人が披露するよさこい踊り

「書道」を通じた日本文化交流

当日は、屋台に加え茶道や書道のブースも出店し、日本文化を堪能してもらうことが出来た。

私は書道のブースを担当しており、「ガーナ」「日本」といくつかお手本を用意し、好きな文字を書いてもらうようにしていたが、ある参加者が「日本大好き」と書き始めたのをきっかけに皆それが良いと人気のお手本になってしまった。多くのガーナ人が「日本大好き」と書く姿は、何か洗脳活動をしているような気持ちになったが、終わったあとには満面の笑みで「日本大好き」と口を揃えて言ってくれたので、彼らの素敵な思い出の一ページになったのであれば本望である。

こういったイベントを通して、日本の文化だけでなく、語源やどんな願いが込められているかという背景もあわせて伝えることで、これからも「日本大好き」なガーナ人を増やしていきたい。

書道体験

ガーナのテスト監督

テスト監督は忙しい

学校生活の中で最も憂鬱なのは、意外にもテスト監督の時間である。

テスト監督なんて暇だなーと日本の感覚でいると大間違い。1クラス40人程度を1人の先生が見るのだが、これが最も大変な時間と言っても過言ではないくらい忙しい。

クラスの大半が消しゴムや定規を持っていないので、テスト中でも貸し借りをするのが当たり前で先生も許容しているのだが、お互いの答案を見せ合うだけではなく、小声で答えを相談したり答案をのぞき見したり、こちらが目を光らせていないと至る所でカンニング行為が行われる。また、トイレ退出をする生徒も多く、ポケットの中をチェックしている裏側でカンニングが行われるので、1人ではとても見切れず疲弊するのである。

そんなテスト期間中、ある生徒がこっそり携帯電話を使っているのを目撃した。一回目は口頭注意で見逃そうと思ったのだが、何度もこそこそ使っている姿は到底見逃すことが出来ない。

ガーナでは、ケーンと呼ばれる木の棒で生徒を叩く指導が行われており、それが当たり前となっている。学校だけではなく、家庭でもケーンを使った躾が当たり前とされているため、ケーンを持っていない先生は保護者からやる気がないとみなされるなど、隊員とケーンの付き合い方は非常に悩ましい問題である。そして私がケーンを使った指導をしないことを学生は知っているので、甘く見られているのである。

彼をどのように処罰するか、私の一存では決められないので、その場で携帯電話を没収し、生徒指導の先生(カウンターパート)に預けることにした。

罰よりも「同じ過ちをしないため」の指導

テスト後、私と生徒指導の先生がマンゴツリーの下で休憩しているところに該当の生徒が謝罪に来た。学校内のルールで処罰されれば良いと生徒指導の先生に任せているとなんと「aikoが処罰を決めて良いよ」といきなりその役割を投げられてしまった。

日本だと減点対応が一般的だが、残念ながら携帯電話を利用したからと言って高得点に繋がっているわけでもなく、減点してもあまり変わらないので、結局反省文を書かせることにした。

なぜ禁止行為をしてしまったのか、その行為のどこが問題なのか、今後どのように取り組むのかという点で書いてくるよう伝え、後日しっかりと書いてきた内容をもとにカウンターパートを含め、改めて注意をしたことで彼は十分に反省しているように見えた。

この「反省文を書かせた」という事実がガーナ人にとっては、驚きであったようで、生徒の中で最も厳しいテスト監督は「マダムaiko」と言われるようになった。そして、カウンターパートにもケーンで叩くとすぐに終わるけど、また生徒は同じ過ちを繰り返してしまう、時間をかけて分からせる日本式の指導も必要だと感じたよと言ってもらえた。

このテスト以降、先生達も「不正行為を見かけたら反省文を書かせるか減点するからね」と声掛けする姿をよく見かけるようになった。

ケーンをはじめ、当たり前とされる文化との付き合い方は非常に難しい。すでにある文化を一概に否定することは出来ないが、手段と目的が混同してしまっているケースも多い。

「悪いことをした=ケーンで叱る」というこの一連の流れがセットになっているが、「どうすればカンニング行為を減らせるか」という本来の目的に立ち返り、別の指導方法を見せることで、他のアプローチ方法も取り入れてもらえるきっかけにしていきたい。


今回のレポートは以上です。次回はガーナ着任1年半のふりかえり後編をお届けします。

エディター

忰田 雄也(LTS マーケティング&セールス部 部長代行)

SE・テクニカルライターを経て、LTS入社。ERP導入や業務改革におけるユーザー向け広報・教育企画および業務文書改善など組織コミュニケーションに関連するコンサルティングに従事。2017年よりLTSコンサルティング事業のマーケティングを担当。2021年より本サイト「CLOVER Light」の立ち上げ~運営・編集長を務める。(2024年1月時点)