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立場や役割を越えてプロジェクトで協働するために必要なこと

LTSでは社内外の各種業務をプロジェクトとして切り出し、最適なチームを組んで遂行しています。
今回紹介するのは社外のメンバーも含めたチームで進めた社内文書の英訳プロジェクト。メンバー間の接点が限られ、関係性が薄い状態から始まるプロジェクトでの「協働」を全員が気持ちよく進めて成果を出すには、どのような工夫が必要だったのでしょうか。

社内文書の英訳プロジェクトでの協働

プロジェクトの背景

毎年事業規模や社員数が拡大するLTSグループでは、コンサルティングを中心とした事業遂行と同時に、社内のルール整備も課題となっています。その中で発生しているのが、社内文書の英語化です。

外国籍の社員の割合が増えている、またグローバル企業との取引も増えていく中で、英訳が追い付いていない規程類やマニュアルなどの社内文書を英語化することが今回実施したプロジェクトでした。

今回紹介する英訳プロジェクトは、2021年6月にトライアル開始し、翌7月から外部メンバーとの正式契約をしています。LTSメンバーから以下で紹介している茂森さんに英訳してほしいファイルをお渡しし、茂森さんが不明点や判断しづらい部分を適宜チャットで質問しながら英訳作業を進め、完成した英語ファイルを納品するという流れで業務を進めています。

コミュニケーションを重視してプロジェクトを進めており、最初の1年は毎月1回の打合せで進捗確認や作業依頼・相談とコミュニケーションの場を作り、2年目以降は必要に応じて打合せをするスタイルでした。定期的なコミュニケーション以外でも、Microsoft Teamsでの業務連絡や専用のチャネルで雑談をし、関係性を築けるようにしています。
そして、現在に至るまで翻訳のプロセスを改善し作業効率を上げて継続しています。

活躍協創プロジェクトを通じてプロジェクトに参加した茂森さん

英訳担当としてプロジェクトに参加したのは、茂森勇さんです。
茂森さんは、生まれつきの脳性麻痺という身体障害がありますが、シリコンバレーでのITエンジニア経験など多様なバックグラウンドのある方です。

茂森 勇(ソフトウェアエンジニア)

カリフォルニア大学バークレー校でコンピューター・サイエンスを専攻。シリコンバレーやイギリスでソフトウェア・エンジニアとして10年勤務。帰国後はPythonでの人工知能のプログラミング業務に従事。現在はRuby on RailsをベースにしたWebサービスの構築や、視線入力を利用したアプリケーション・ソフトのコーディングを担当。(2023年10月時点)

茂森さんの個人サイト:https://sites.google.com/site/isamush01/


茂森さんを紹介して頂いたのが「活躍協創プロジェクト」の林さんでした。
過去に、LTSの社内ポータルサイトの基盤を移行する際に「活躍協創プロジェクト」に依頼しています。そして今回、ポータルサイトの英訳ニーズが高まったタイミングで「また活躍協創プロジェクトに依頼してみてはどうか?」という話になりました。

林 秀紀(タイタンコミュニケーションズ 代表取締役)

大学卒業後、映像制作会社、通信系ベンチャーを経て、物流向け業務請負会社を設立。その後、物流センターの運営及び効率化・システム化に関する多様なプロジェクトを歴任。2009年、株式会社タイタンコミュニケーションズを設立し、中小企業向けの業務支援ツール・効率化システムを提供。2019年8月より、経営者有志とともに業務シェアの取り組み「活躍協創プロジェクト」を開始。

活躍協創プロジェクトについては、今回の英訳プロジェクトの紹介を含めたページがありますので、興味のある方はご覧になってみてください。

エル・ティー・エス英訳プロジェクト紹介ページ:https://katsuyaku.work/ltsp.html

社内ドキュメントの英訳だから挑戦できた

ここからは、茂森さんと林さんにプロジェクトについて聞いてみました。

―――茂森さんが英訳プロジェクトに参加した理由を教えてください。

茂森さん:
今働いているテクノツールでソフトウェア紹介ページの英訳を担当したことがあったので推薦されました。また、副業という形で収入を得るということに挑戦したいという想いもありました。
英語圏で生活していたからこそNative speakerとの格差を感じていたので、英語には苦手意識がありました。しかし、企業内の文書であれば得意分野だったことが理由の一つだと思います。これが小説や時事ネタの英訳だったら、辞退していましたね。

林さん:
茂森さんの所属しているテクノツールから「ぴったりの人がいますよ」と紹介されました。

茂森さん:
最初の英訳対象が社内ドキュメントだったため、挑戦しやすかったですね。社外向けであれば、ハードルが高かったと思います。以前働いていたシリコンバレーでは、日本人が書いた英語は正確でないという前提で、ネイティブチェックが入ることが常識でした。

林さん:
社内ドキュメントの英訳が入り口だったのはよかったと思いますね。
また、過去活躍協創プロジェクトに依頼した内容とは全く別の業務について、活躍協創プロジェクトに結びつけてもらえたことがすごいと思います。そういった姿勢が「なんとかプロジェクトにつなげたい」という自分の想いに繋がりました。いろんな選択肢がある中に自然と活躍協創プロジェクトがあるのはいいですね。

顔が見える関係が心理的安全性を生む

―――普段の仕事と今回のプロジェクトで何か違いはありましたか?

茂森さん:
普段の仕事も今回と同様に在宅でやっています。今回の英訳は、一緒にやっている方々と交流する時間を作って頂き「顔が見える関係」のような心理的安全性がありました。
私はオフィスで勤務していたこともありますが、なかなか話し込んだり知り合うことに難しさを感じていました。言語障害があるせいかもしれません。しかし、今回のプロジェクトは一緒に働く人同士の交流でき、安心感がありました。

2021年6月か7月でしたか、初めてか2回目のミーティングで、1時間半という長い時間を取ってもらって、自己紹介をしてくれた時がありました。チームメンバーの家族構成までお聞きし、フッと緊張が取れたように感じました。
普通なら30分くらいのミーティングでありきたりの名前と所属くらいで、緊張感の中終わってしまうようなもので済ますこともできたはずですが、長い時間を取って頂いたことに感謝しています。

またその効果として、ドキュメントの内容について、質問しやすくなりました。初めに質問したのは「傷病手当」でしょうか。色々手当の種類があって分かりづらかったのですが、LTSメンバーの大井さんが親切に教えてくれました。やはり、長い時間話すことによって、みなさんの真摯なやる気を感じられたことは良かったと思います。

―――何か困ったことはありましたか?

茂森さん:
困ったことは、贅沢な悩みかもしれませんが、成果物に対するフィードバックがなかったことです。あまり良くない言い方ですが、暗闇にボールを投げ込んでいる感じで。良いのか悪いのかわからず、軌道修正しようがない感じでした。

―――そこはLTSとしては反省点ですね。
途中から英訳対象のスコープが拡大したため、英訳のアウトプットとは別のタスクが増えてしまっていました。単語管理など、依頼する側がチェックしないといけないことがありましたね。今後はドキュメントの性質に応じた表現や、重要単語に対応するリストなどを作成したうえで依頼したいと思います。

茂森さん:
そうですね。自分では単語選びに気をつけていましたが、どのくらいの精度を求めているか分かるとよかったです。

どうすればよい関係性の中で協働できるのか

いろいろなバックグラウンドの人が集まった今回のプロジェクトですが、どうすればよい関係性の中で仕事ができるのか?について、皆さんに聞いてみました。

思い込みではなく人間性を知ることが大事

茂森さん:
人には個性があり一概には何がいいとは言えません。今回は、私も変化を楽しむことが好きな性格だったので、どんどん改善案を出させてもらっていましたが、人によっては、そういうことが苦手な人もいます。

提案するなどの積極性はアメリカの経験で形成された部分もあり、自分を基準に障がい者との協働を考えない方がよいかもしれないですね。
障がい者がいるとまず障害に目が行きがちだと思いますが、そうではなく、その奥にある人間性みたいなものに眼を向ける必要があるかもしれません。これは、障がい者にかぎったことではありませんが。

仕事を細かく切り出すことで様々な人との協働ができる

―――LTSでも、活躍協創プロジェクトの出会いを通して「業務を切り出していくことで他の人のチャレンジとなる」ことを知り、切り出せる業務は切り出していこうという考えが広まっています。

茂森さん:
業務を切り出してもらえるのは、ありがたいです。切り出してもらうことで、個々の期日や対応をより柔軟に考えることができるので。

林さん:
社内の「やりたくない」と思っている人がやるよりも、切り出して外部のやりたいと思っている人にやってもらった方が、業務を行う人の活力にもつながります。また、社内には存在しない多様な価値観を持った人との出会いが生まれ、プロジェクトに関わる人すべての刺激となり、プラスの価値が生まれると思います。活躍協創プロジェクトは、その考え方からスタートしています。

日本の取引構造の問題を超える

―――社内・社外という壁ではなくもっと広いチームという概念で、働きやすい環境や仕事の進め方を模索していけるといいですね。

林さん:
日本の取引の構造として、発注側に対して業者側の立場が低い場合が多いです。会社の壁を越えてOneチームとして働きやすい環境をつくっていけるように発想を転換していけるとよいと思います。

―――プロジェクトに参加するメンバーひとりひとりから、苦手なことや不安があることを共有できるようにするなど、伝えてもらうことで働きやすい環境が作れるという視点も大事ですね。

茂森さん:
コミュニケーションをとることが大事で、それができる環境を作ることも大事だと思います。アメリカやイギリスの経験から、1on1など自分の特徴や苦手なことを伝える場があったチームはうまく行っていました。逆にそうでないチームはやりづらさがありました。

仕事にとどまらない関係性がメンバーの幸福度に直結する

最後は、このプロジェクトに活躍協創プロジェクトのコミュニケーターとして参加したLTS社員の宮ノ腰さんにプロジェクトで得た気付きを聞いてみました。

宮ノ腰 陽菜(LTS コンサルタント)

建設コンサルティング企業様向けプロジェクトにて、開発管理、会計領域を中心に、基幹システムの運用保守支援と業務支援に従事。社会課題への関心も高く、障がい者支援に携わりたいというかねてからの想いから、活躍協創プロジェクトには自ら手を挙げて参画。(2023年12月時点)

このプロジェクトには、発注側としてのLTS社員ではなくプロジェクトメンバーの相互理解を進めるコミュニケーター役として参加しました。

普段からTeamsの雑談チャネルのチャットを通じて茂森さんの近況を聞いていたので、仕事以外でも頑張っている部分を見ることができ、自分も頑張ろうと思えました。仕事だけでもつながれますが、そうではないところでつながることは、その先で成果を生み出していく源泉になっていくのかもしれません。仕事の付き合いであっても仕事に留まらない関係性は、仕事もチームに所属している人の幸福度にも直結していると思いました。

プロジェクトワークの前にコミュニケーションがあったからこそ、仕事のやりやすさがあり、壁がない感覚がありました。他のプロジェクトの場合は「これを言ったらどう受け止められるのか?」等を考えてしまう場面があると思いますが、今回は相互のコミュニケーションで開示した人間性の部分で信頼している関係性があったから、一つのチームとして活動できたと思います。

こういう価値観に基づいてチームが集まり、コミュニケーションによって「仕事に限らない関係性によって生まれる価値」が作られれば、それはすごいことです。活躍協創プロジェクトのような障がい者との協働だけではなく、他の場所や分野でも仕事に限らない関係性ができると、いろいろな課題が解決されやすくなり、業務もより回りやすくなると思えました。


ライター

忰田 雄也(LTS マーケティング&セールス部 部長代行)

SE・テクニカルライターを経て、LTS入社。ERP導入や業務改革におけるユーザー向け広報・教育企画および業務文書改善など組織コミュニケーションに関連するコンサルティングに従事。2017年よりLTSコンサルティング事業のマーケティングを担当。2021年より本サイト「CLOVER Light」の立ち上げ~運営・編集長を務める。(2024年1月時点)