ビジネスシーンで使える行動心理学 第5回:リモートワークでも使える、表情の分析と身体的サイン

働き方

こんにちは、LTSの大山あゆみです。

前回、第4回では「非対面におけるコミュニケーションポイント」を紹介しました。

今回は、リモート会議で活用できる表情の分析と、話のはじまりとおわりを伝える・読み取る方法をご紹介します。

はじめに:続くリモートワークで、気づいた3つのこと

このコラムを執筆し始めた頃、私はコンサルタントとしてお客様先で仕事をしていました。

現在は、マーケティンググループに所属し、リモートで社内外広報やLTSグループのメディアCLOVERの記事企画立案・執筆を担当しています。多くの社内メンバー、時には社外の方にも、記事作成にご協力いただいています。記事作成のための取材やインタビューは、世の中の状況やみなさんの働き方を考慮し、リモートで実施することが多くあります。

そのような中で、以下のようなことに気が付きました。

  • 画面越しの会話では手の動きや、足の動きが見えづらく、相手から得られる情報が少ないということ
  • 相手から得られる一番の情報は、顔と声、そしてその人が使う言葉だということ
  • 相手が話し始めるタイミング、相手が話し終えるタイミングが分からないということ

特に、リモートワークをされている方には、同じような気づき・課題感があるのではないでしょうか。そこで今回は、「人間の基本的な表情とその心理状態」、「人間の目の動きから分かること」、そして「人が話し始めるタイミングと、話し終えるタイミング」を解説します。

表情:人間には普遍的な「6つの表情」がある

第1回のコラムで、非言語コミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)と呼ばれる、顔の表情や身ぶり・手ぶり・姿勢といったしぐさは、コミュニケーションの約9割を担っているとお伝えしました。今回は、表情に注目してみます。

リモートワークが中心で、画面越しのコミュニケーションが増えたという方も多いと思いますが、逆に相手の表情や身ぶり・手ぶりには、注目しやすくなったのではないでしょうか。

人間の表情について、進化の父であるイギリスの自然科学者チャールズ・ロバート・ダーウィン(Charles Robert Darwin)は、「顔の表情は生存のために不可欠な行動として進化したものである」と述べています。※1

※1 ダーウィン、浜中浜太郎訳、『人及び動物の表情について』1991

そして、感情と表情のエキスパートである、アメリカ心理学者ポール・エクマン(Paul Ekman)は、「人種や文化に関わらず人間の基本的な表情は6つである」としています。それは、悲しみ・怒り・喜び・嫌悪・驚き・恐怖です。さらに細かく見ると、この6つの感情が混ざり合った合計33種類もの表情があるそうです。※2

※2 ポール・エクマンほか、工藤力訳、『表情分析入門』2015、p.31

6つの表情について、一つずつ簡単に特徴をまとめます。

資料1:ポール・エクマンが提唱する6つの表情(引用:ekman expressions – Bing images

1.悲しみ(sadness):上まぶたが下がる・目の焦点が合わない・口角が少しだけ下がる
2.怒り(anger):両方の眉毛が全体的に下がる・鋭い目つき・口を噛み締める
3.喜び(happiness):目尻にしわができる・頬が上がる・口周りの筋肉が動く
4.嫌悪(disgust):眉の間にしわができる・上唇が上がる
5.驚き(surprise):眉が上がる・目を見開く・口が少し開く
6.恐怖(fear):眉が寄って上がる・上まぶたが上がる・下まぶたがこわばる・唇がひきつる

これらの表情(顔の筋肉の動き)は、長い間現れるのではなく、相手からの情報を受け取ってすぐ0.1~0.2秒の一瞬に出てくると言われています。

リモートワークでは、対面で話をする場合よりも、画面に映っているところにのみ集中できるので、表情から相手の意図を推測したり、考えたりすることは、とてもやり易くなったなと感じています。一方で、ほんのわずかな時間しか現れない顔の筋肉の動きを、会議や話し合いの場で読み取るのは簡単ではないな…とも感じています。

人の表情を読み取る練習をするには、自らが考えて発言をしたり双方のコミュニケーションが生まれたりといったことがない、セミナーの映像やテレビの映像が適しています。じっくりと観察をし、実際に上記のような特徴が出るか探してみましょう。

実践は少々難しいものの、感情につながる表情の特徴を知っておくことで、ふと現れた顔の筋肉の動きに反応できるかもしれません。

実際に、このような表情を読み取る技術を、仕事に活用している人たちもいます。有名なところで言うとアメリカの連邦捜査局(FBI)の捜査官たちは、相手の表情を瞬時に察知するためのトレーニングを受けているそうです。

ここでは、普遍的な表情を説明しましたが、この分野の研究は日々進歩しています。人工知能(AI)と組み合わせた緻密な分析も注目されています。

参考までに、京都大学の研究チームが2019年に発表した論文をご紹介します。日本人の表情は、ポール・エクマンが提唱する理論とは異なるのではないか、という内容です。興味のある方は、読んでみてください。

『Facial Expressions of Basic Emotions in Japanese Laypeople』
Frontiers | Facial Expressions of Basic Emotions in Japanese Laypeople | Psychology (frontiersin.org)

目の動き:どこを見て・何をイメージしているか

次に、目の動きについて、NLP(神経言語プログラミング)※3という心理療法で応用されている、眼球の動きを紹介します。

※3 NLP:Neuro Linguistic Programing(神経言語プログラミング)の頭文字から名付けられ、カリフォルニア大学の心理学部の生徒であり数学者だったリチャード・バンドラーと言語学の助教授だったジョン・グリンダーが心理学と言語学の観点から新しく体系化した人間心理とコミュニケーションに関する学問です。
日本NLP協会、https://www.nlpjapan.org/nlp.html 、2021年12月15日閲覧

ここで説明する右・左、は自分から見て右・左です。自分の目の前にいる人の目線の動きは、左右反対になるので気を付けてください。

●(自分が)左上を見ている → 過去のことを思い出している
●(自分が)右上を見ている → 今までに見たことのない光景を想像している
●(自分が)左下を見ている → 音楽や声などの聴覚的なことをイメージしている
●(自分が)右下を見ている → 身体的なことをイメージしている

自分自身にあてはめてみても、過去のことを思い出そうとするときは、左上を見ているなぁと気が付きました。

同僚との打ち合わせや、お客様との会議でも活用できそうですが、これまで私自身そこまで相手の眼球の動きに注目できたことはありませんでした。しかし、普段からマスクを着けていることが定着化した昨今では、目の動きからしか相手の表情を読み取ることができない場合もあります。上記は、そんな時にも役立ちますので、ぜひ知っておくとよいかなと思います。

また、気を付けていただきたい点は、これらはあくまでも目安であり、いつ何時も当てはまることではないということです。目線の動きは、単純にその人の癖である可能性や、何かを見ているだけの場合もあります。視線を合わせようとしないからうそをついているのではないか、嫌われているのではないか、怒っているのではないか、と考えるのではなく、相手と寄り添う形で対話を続けましょう。

どんな形であれ、双方にとって心地の良いコミュニケーションとなるよう、私も日々努力しなければならないなと感じています。

身体的な動き:「今から話しますよ!」「話しおわりましたよ!」のサイン

最後に、身体的な動きに注目して、話し始めや話し終わりのタイミングを見計らうサインを紹介します。

リモート会議で、二人以上の人が同時に「それから…」「わたしは…」と話し始めて、「あ、どうぞ、どうぞ」と譲り合い、改めて同時に話してしまうことはありませんか。また、「どうぞ、どうぞ」と譲り合い、沈黙が流れる…。私も、思い当たる場面が多々あります。

このような場合、相手の身体的サインを読み取るよりも、自分からそのサイン(「話し始めますよ!」「話し終わりましたよ!」の合図)を発するように心がけると良いと考えています。

例えば、話し始めのタイミングでは、今までと異なる身ぶり手ぶりをしたり、相手に軽く身を乗り出したり、顔を上げてまっすぐ視線をあわせたり、大きく息を吸ったり、というサインを発します。そして、話し終わりのタイミングでは、話しながらしていた身ぶり手ぶりをやめたり、身体を左右どちらかに傾けたり、確認するようにあごを引いて相手を見たり、お茶を飲むなど会話との関係のない動作をしたり、というサインを発します。

これは対面で話す際はもちろん、リモートで話す際も活用できます。会話のタイミングが噛み合うかどうかは、その時間が充実したものになるかどうかにも影響しますよね。行動心理学をベースに相手の意図を探ることはもちろん、自分の思っていることや伝えたいこと、話の切れ目のタイミングを、意図的に相手に伝えることもできるので、ぜひその観点でも活用してみてください。

実際に私が、CLOVERの取材やインタビューをする際(特にリモートでの場合)には、相手と言葉がかぶらないように心掛けたり、程よい沈黙(間)になるよう心掛けたり、相手の方に良い時間だったと思っていただけるよう、小さなことを実践するようにしています。

おしまいに:人間の行動や表情に興味を持ったきっかけ

今回は、表情・目の動き・話し始め/終わりの身体的サインを紹介しました。

直接会って誰かと話をするときも、リモートで画面越しに話をするときも、相手の方に「この時間はいい時間だった」と思ってもらいたいですよね。そのためにも、これまでご紹介したような内容が役に立つといいなと考えています。

余談ですが、私が学問としての人間の行動・表情に興味を持ったのは、アメリカの大学で受講していた心理学の授業で、教授が「Micro Expressions(日本語では「微表情学と訳されることが多い」)」という研究分野があるとお話をされていたことがきっかけです。

その後調べてみると、幼少期に言葉の通じない国で生活をした際、「あれ?言葉が通じなくても、身ぶり手ぶり・表情で何となく分かるな…」と考えていたことが、学問として体系的整理されており感動したことを覚えています。

これまで、幅広い心理学の概要や、行動心理学、幼児心理学、そして特に興味のある表情分析を独学で学んできました。本日解説した表情分析は、まだまだ一部ですので、興味のある方はぜひ調べてみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。


執筆者

大山 あゆみ(LTS コンサルタント)
自動車部品メーカーにて、グローバルで統一された品質管理の仕組みの構築・定着化を支援。その後、RPAを活用したコンサルティングに従事。産休・育休を経て、CLOVER Lightの立ち上げに携わり、記事の企画・執筆を務める。現在、アジャイル開発スクラムについて勉強中。Scrum Alliance認定スクラムマスター(CSM)。