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リーダーシップ

LTSの企業理念はここから生まれた② 変化に適応できる組織作りに役立つ7冊

この記事では、LTSの組織作りに影響を与えた本について、LTS 執行役員山本政樹さんへインタビューした内容をご紹介します。山本さんが考える「読書」とは、本を通して見るLTSの企業理念の根底にある考え方とは。全4回です。

『ビジョナリー・カンパニー ZERO』でネットワーク型組織の現実的な姿を知る

―――今回ご紹介いただくのは、『ビジョナリー・カンパニー ZERO』でしたね。

『ビジョナリー・カンパニーシリーズ』の本はどれも素晴らしいのですが、自分の組織がどのような状態なのかによって、シリーズのどれが向いているかは変わってきます。

成長途上の会社なら『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』、大企業病が気になる大きな会社なら『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』という感じですね。一般に企業の読書会では“2 飛躍の法則”が使われることが多い気がしますが、今回は“ZERO”を選んでみました。

“ZERO”は20年前に出版された『ビヨンド・アントレプレナーシップ』を改訂したものです。タイトルの通り、スタートアップ向けの内容が多く含まれています。LTSはもうスタートアップと言えるステージではありませんが、とはいえまだ成長途上であり、規模が小さかった頃の会社の名残もたくさんあります。また“ZERO”は最新刊というだけあって、それまでのビジョナリー・カンパニーシリーズを包括しているようなところもあります。そのような理由から“2”よりも“ZERO”を選んでみました。

―――ミッション・ビジョンを理解する上で、ビジョナリー・カンパニーシリーズを読む意義とはどのようなものなのでしょうか?

この本では、階層型組織におけるリーダーシップを否定はしていません。

『ティール組織』の全員が対等で、全員リーダー・全員フォロワーという姿は、凄まじく自律した人たちのみの集合体の世界を描いていますが、現実の世界はこのような人ばかりで構成されているわけではありません。すべての人がすぐに高度な自律性を身に着けることができるわけではなく、本来、企業はさまざまな立場の人を受け入れ、時間をかけて従業員の自律性を育てていくといったミッションも背負っています。そうなると大半の企業では、ある程度の「導く人」と「導かれる人」という関係性は存在するわけです。

ビジョナリー・カンパニーZEROは、そのようなより “普通の人たち”のいる組織において良い経営をおこなうには、特に経営者がどう振る舞うべきか、ということを描いています。

といいつつも、『ビジョナリー・カンパニー ZERO』を読むと、『ティール組織』で触れられていたようなネットワーク組織のエッセンスは、良い経営の共通項として、なんらかの形で含まれていることがわかります。この二冊をこの順番で読むことで『ティール組織』で揺さぶられた概念の、もう少し現実的な落としどころを考えることができるのではないでしょうか。

―――より地に足の着いたネットワーク型経営に関する本、ということですか。

はい。実際には、会社には一定の階層があることが普通ですよね。それがないと、統治が難しいのもまた事実であると。そういうことも認めた上で、その階層の上位にいる人たち…いわゆる経営者や管理職という人たちは、社員の自律性を高めるためにどう振舞うべきかを、『ビジョナリー・カンパニー ZERO』で考えてみてほしいのです。

そもそもビジョナリー・カンパニーは組織論というよりは、「良い経営」全般に焦点を当てた本であり、「階層型組織」対「ネットワーク型組織」のような二項対立的な立ち位置ではありません。組織論や人材論以外の経営領域にも話題が及んでいますし、そうであるがゆえに『ティール組織』と比べて、どのような人でも抵抗なく内容を理解できるように思います。

『適応力のマネジメント』で上位職の人がどう振舞うべきかを知る

このアジリティのある組織を実現するために必要なこと

―――さて、ビジョナリー・カンパニーの次に紹介いただくのは、「適応力のマネジメント」ですが、これはどのような本でしょうか。

『適応力のマネジメント』は一言でいえば、社会や市場の変化に素早く適応できる企業組織の姿を描いたもので、冒頭にお話しした「ビジネスアジリティ」の高い組織の構築理論を扱っています。さきほどの『ビジョナリー・カンパニー ZERO』が“読み物”なのに対して、こちらの本はより“理論書”とか“実践書”というニュアンスが強い本となっています。

この本も決してネットワーク型組織をテーマに描いているわけではないのですが、ビジネスアジリティ実現の一つのポイントに「ネットワーク組織設計」という言葉がでてくるように、やはり関連性のある内容となっています。良い経営とは何か、今の時代に合った経営とは何か、を考えると必然的にネットワーク型の組織が必要になってくるということですね。

この本は理論書なので、少し難解です。読み手が明確に「適応力の高い組織を作りたい」という意思を持って読まないと、内容が頭に入ってこないかもしれません。しかし、そうであるがゆえに自分自身としては、LTSのミッション・ビジョンの検討においては大変参考になりました。

―――実際に、ミッション・ビジョンの検討に取り入れた考え方は、具体的にどんなものがありますか。

この本ではアジリティのある組織を実現していく上では、まず組織の中に三つのコンテキスト(根底にある共通概念)を実現しなければいけないと述べています。それぞれ「存在理由」「統治原則」「ネットワーク組織設計」です。

このうち「存在理由」がミッション・ビジョンにあたります。そしてそれらはより具体的な組織の運営ポリシーである「統治原則」に落とし込まれていなければなりません。組織設計はこれらの土台の上におこなうことになります。

ミッション・ビジョンを策定した際には、単にそれらを言葉としてまとめるということだけでなく、それらをどのように組織全体の運営と整合させていくかという、ここでいう「コンテキスト」の設計全体を念頭において活動しました。これはまさにこの本から着想を得たものです。

―――p.170ですね。“リーダーは、自ら最初に手掛けるべきことは、「曖昧さのないコンテキストの策定」であることに気づく。”

要は、適応力のある経営における戦略とは、製品・サービスの市場でのポジショニングや優位性を考えること以上に、柔軟性のあるその組織の形態を考えることだということです。これを本書では「戦略とは適応力のある構造のためのデザインである」と述べています。この言葉は、本当に強く響きましたね。

今のLTSがやらなければいけないことはまさにこれだなと思い、ミッション・ビジョンに続いておこなった中期経営計画でも、この点を念頭に議論をしました。

LTSはさまざまなコンサルティングサービスを提供しており、それらのサービスの戦略を考えるのは経営者というよりはより現場に近いサービスリーダーたちです。我々経営者の役割は、そういったリーダーたちが動きやすい組織を作ることですね。その意味で、リーダーはむしろ現場であり、経営者はフォロアーなのです。

LTSの組織設計の裏側にある想い

―――LTSでは、この本『適応力のマネジメント』に描かれているような組織設計を目指しているんですね。

達成までは、まだまだ道半ばではあるんですが、これを読むと、これまでの議論の中で社内のリーダーたちに伝えてきたことや、その言葉の裏側にどのような考え方があったのかを、しっかりとした形で理解することができるのではないかと考えています。

その意味で、少し難しい本ではあるけれど、LTSの社員なら全員に読んでほしいとも思います。

―――読む順番としては、『ビジョナリー・カンパニー ZERO』から『適応力のマネジメント』ですか。

『適応力のマネジメント』は、組織設計のためにどういった構成要素が必要で、どのような順番で物事を考えていかなければならないか、という指南書的なニュアンスが強いです。なので、入りやすさから言うと『ビジョナリー・カンパニー ZERO』です。“ZERO”から良い組織のイメージを作って、『適応力のマネジメント』で具体的な手法を知る、という感じでしょうか。

この『適応力のマネジメント』は、2001年に日本語版が出版されています。原書は1998年でしたが、今でいうビジネスアジリティの原則をほぼ網羅しているんですよね。

―――20年以上前には、ビジネスアジリティの考え方があったということですね。

よく20年も前に書いたな、すごいな、と思います。

アジリティの高い組織を語ると、どうしても観点が“アジャイル開発方法論”のような技術的な点などに偏ったりしてしまいがちなのですが、ここでは企業経営に必要な要素がバランスよく入っていて網羅性があります。

―――この本の帯にも「経営とはすなわち、変化に適応することである」とありますね。

最近よく“OODAループ”という言葉が聞かれますよね。あれは、戦闘機の設計思想から来ているので、70年代からある思想ですが、それが50年経った今経営の現場で語られています。実はこの本の中にもOODAから着想を得た、SIDAプロセス※1という考え方が語られています。そう考えると、とても先見性のあった考え方だと言えます。

残念なことにこの本は絶版となっていて、中古でしか手に入りません。ただ、LTSでは読書会を行うにあたり会社の費用でこの本を何冊か購入していますので、社員は会社の本棚にいってくれれば読むことができるはずです。

それにしてもこのような素晴らしい本が絶版になってしまって、先見性のあった考え方が埋もれてしまったのは大変残念ですね。復刊を望みます

※1 SIDAサイクル:外部環境や内部状態の変化を感知(Sense)し、これまでの経験や目的、能力などに基づいてこれらの変化を解釈(Interpret)し、脅威と機械を振り分け、無関係な情報を切り捨てる。次に、どう対応するかを決定(Decide)し、最後にその決定に従って行動(Act)する。この感知から行動までの一連の流れのこと。
スティーブ・ヘッケル著、坂田哲也ら訳、『適応力のマネジメント』2001、p.24

目指している「いい会社」とは?

―――ありがとうございます。ここまで3冊ご紹介いただきました。

この『ティール組織』『ビジョナリー・カンパニー ZERO』『適応力のマネジメント』と読んでいく流れは、一つのセットだと思っています。極端な世界を知り、その先の現実的な着地点を知る

その後に、理論的な体形で理解する。若手の皆さんには、『ビジョナリー・カンパニー ZERO』が分かりやすいし響くかもしれません。

具体的な取り組みを進めている側の私には、『適応力のマネジメント』が直に心に響きますね。

―――この三冊を流れで読んでいく時に、気を付けてほしいポイントはありますか。

はい。読む本の「書き手(ないし登場人物)の意図を、バイアスを持たずに理解すること」ですね。書き手や、書籍に登場する事例の経営者たちの意図を、自分自身がどう活かしたいかというバイアスがかかった状態で読んでしまうことによって、勝手な解釈をしてしまうことが往々にしてあります。

例えば『ビジョナリー・カンパニー2』を読書会で扱うと、「会社を大きくするためには、こういうことをすればよいのですね」とか、「会社を成長させるために私たちもビジョンを明確にしましょう」といった感想が出てくることがあります。

ただ、それは逆なんですよ。こういった本に登場する経営者たちは会社を大きくしたいとか、有名にしたいということは高い優先順位ではなくて、彼らなりの正しいこと、善なるものに基づいた“良い会社”を作りたいと思っているんです。ビジョンの達成こそが目的で、そのビジョンを目指して一貫性を持った経営をしてきた結果として、世で知られるような会社になったということです。

そういった企業の意図を正しく理解すると、そもそも「会社を大きくする」といったある種の“欲”から一旦、離れないといけないわけです。

―――良い会社=有名で、大きくて、稼いでいる会社、ではないということですね。

目的と結果の逆転ですね。他にも企業経営では、たまたまその時の成り行きでやっていたことが、その後、さも意図してある目標のためにやられたように語られるようなこともあります。

例えば、私は2015年に「ビジネスプロセスの教科書」という本を出版していて、この本は結果的にLTSのブランド向上や案件の獲得で大きな成果を出すことができました。それを振り返った時に「LTSは2015年から本格的にブランディング・マーケティングの活動をはじめた」というようなことを言われることもあるのですが、実はその時は明確な経営意図や戦略の上で、活動をはじめたわけではありません。あの本は私が個人的な問題意識から出版した、というのが実態です。もちろん、会社全体にもメリットがあることを計算した上での企画ではありましたが、当初は社内に懐疑論もありました。

今では書籍だけでなく、セミナー開催やウェブサイトのコラムは、LTSの重要なマーケティングの手段となっており、社内でもその重要性は認知されています。ただ、これらの活動は、どちらかといえば当初は個人的な意図が先行して進み、経営的な意思や結果は後からついてきたというのが実態ですね。

経営書にでてくるさまざまなエピソードは、そのような後から振り返って再構成された“綺麗なストーリー”として記述されていることも多く、そのあたりに注意しないといけないなと感じています。

…つづく


ライター

大山 あゆみ(LTS コンサルタント)

自動車部品メーカーにて、グローバルで統一された品質管理の仕組みの構築・定着化を支援。産休・育休を経て、CLOVER Lightの立ち上げ、記事の企画・執筆を務める。現在、社内システム開発PJに携わりながら、アジャイル開発スクラムを勉強中。Scrum Alliance認定スクラムマスター(CSM)、アドバンスド認定スクラムマスター(A-CSM)、Outsystems Delivery Specialist保有。(2023年12月時点)