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プロセス変革・業務改革 / リーダーシップ

ミドルリーダーが創り出した組織の変化と横断活動(前編)

石原産業株式会社の本社情報システム部が進めている、基幹システム(ERP)刷新に向けた業務IT化プロジェクト。その上流フェーズで全社業務改革を進める中で、本社とは別に四日市工場で行われていた変革活動が業務IT化プロジェクトに統合され、本社と工場合同で活動が進められました。
今回の記事では、プロジェクトに参加した4人のリーダーに、初めて体験した全社横断の業務改革活動から得られた学びや経験をお聞きします。

石原産業株式会社(以下ISK)について

1920年(大正9年)創業のカガクの分野で幅広く事業を展開する大手化学メーカー。三重県四日市市の工場を主力生産拠点として100年を超える歴史を持つ。

石原産業株式会社(ISHIHARA SANGYO KAISHA, LTD.)
本社:大阪市西区江戸堀一丁目3番15号
四日市工場:三重県四日市市石原町1番地
URL:https://www.iskweb.co.jp/

インタビュアー

熊坂 真穂(LTS コンサルタント)

大学時代に保育系NPOで日本初の障害児保育園を立ち上げた経験をきっかけに、「社会を変えようと挑戦する人の伴走者」になるべく、コンサルタントとしてのキャリアをスタート。入社後は複数業界のBPM関連PJに多数従事。その他、幅広い案件を経験している。(2021年7月時点)

紹介する事例(プロジェクト)の概要

業務IT化プロジェクト

将来的なERP(基幹システム)刷新を目的として、2018年7月から本社情報システム部によって開始されたプロジェクトです。業務のIT化やシステム導入に閉じず、組織課題の抽出や改善等も含めて複数の個別プロジェクトにより全社的な業務の見直しを行っています。

LTSは2018年7月から業務IT化プロジェクトの推進を支援しています。

画像1:プロジェクト概要

■工場の設備管理機能改革

四日市工場の設備管理機能の抜本的な改革を目的とした活動です。

本社の進める業務IT化プロジェクトと並行して工場幹部を中心に検討を進めていましたが、2019年11月に業務IT化プロジェクトと工場のメンバーが合流し新たな体制で改革に着手しました。

画像2:業務IT化プロジェクトと工場メンバーの合流

本記事では、主に「工場の設備管理機能 改革」の活動リードした4名へのインタビューを中心にご紹介します。

困難だがやりがいのあった検討フェーズと、組織を超えたチーム作り

早期から工場の設備管理機能改革プロジェクトに参画した長谷川様と山元様に、活動初期の検討フェーズならではの困難や、どのようなことをモチベーションとしていたのかをお聞きしました。

長谷川 裕樹(ISK 四日市工場 設備管理部設備戦略グループ)

2012年石原産業に入社。 主に工場プラントの設計業務に従事。 本プロジェクトには、2018年に発足した業務ITプロジェクトの検討段階から参画。 現在は、プロジェクトの経験を活かし生産体制の見直しプロジェクトや関係会社の業務改革に参画し、LTSの真似事も行っている。(2022年5月時点)

山元 啓晃(ISK 四日市工場 設備管理部工事企画グループ)

2009年石原産業に入社。 主に機械系の設備管理・保全業務に従事。 本プロジェクトには、2018年に発足した業務ITプロジェクトの検討段階から参画。 近年では、機能材料プラントの建設工事などにも携わる。(2022年5月時点)

工場業務の問題検討・分析のため、長時間に渡って議論を重ねる

熊坂
業務IT化プロジェクトの全社アセスメントが一通り実施され、2018年12月から工場の設備管理業務にフォーカスしたあるべき姿の検討が始まりました。

長谷川
当初、LTSの言っていることがわからなかったですね。
発生している事象のうち、何が問題なのか、なぜ起きているのかを整理するために問題ツリーを作成したり、プロジェクトの責任者と問題の視点を合わせるためにロジカルに言葉を組み立てたり、といった考え方・進め方自体に慣れていなかったので、すごく苦労しました。

次回ミーティングまでに自分たちで問題ツリーを作るという宿題をISK内で進める際も「くまちゃんの考え方に引っ張られる」というキーワードが一時期あったんですよね(笑)。そんなワードが出るほど、LTSの進め方に影響を受けていました。

山元
2019年1月から設備管理のチームとして活動を開始しました。最初の頃はまずはISK内で設備のライフサイクルである「建設・改修計画」から「廃棄」にわたる部分のプロセスを分解し、自分たちなりにその問題を書いてみてから、LTSの問題ツリーに落とし込みました。朝9時から夜の7時までひたすら問題ツリーをやっていた記憶が印象に残ってますね(笑)。

長谷川
こんなに会議したことはなかったよね。

山元
最初の頃は、ひたすら毎日遅くまで。

長谷川
最初は2時間でもしんどかった。でも、気付いたら最後の方は8時間とかやっていて。
いつの間にか自分たちで手を動かして考える訓練をさせられていたと思います。

何をモチベーションにして問題ツリー作成を進められたのか

熊坂
当時は、まずメンバーが現場で見聞きした情報をもとに、問題の全体像を把握することを目的としていました。とはいえ、メンバーからすると作成している問題ツリーが最終的にどう使われるか見えないまま、出口のないトンネルをひたすら突き進むという半年間だったなと思います。今思えば、よくお付き合いいただいてご協力もいただけたなと感じています。

先が見えにくい状況でもやってみようと思えた、作業を進められたモチベーション、どういう想いでやっていたかを伺いたいです。

山元
実際自分たちが業務でやっている設備管理がテーマになったので、最終的にどうなるかは分かりませんが、何か問題解決して今後仕事がやりやすくなればいいなと思ってやっていた感じでした。

設備管理機能について問題認識はあったものの、当時は最終的にその問題をどのように解決できるか全くイメージできていない状態でした。LTSの手法でやってみるまでは「その業務を通じて生み出したいメリット・価値を考える」とか「工場長などの経営者視点」といった考えがあまりなかったので、そういった部分はすごく勉強させていただいたところだと思いますね。

長谷川
全社アセスメントの後、設備管理に本格的に取り組むことになったことは願ったりかなったりでした。ずっと設備管理に課題意識を持っていましたが、なかなかボトムアップでは取り組んでもらえなかったので、大きい流れに乗って取り組めたなと。すごく楽しんで、「プロジェクトが始まったぞ、やったぁ」という感覚で取り組んでいました。

検討を進めるうえでは、LTSは「ロジック」を大切にしていましたよね。
僕らはそんなに職位は高くないですが、ロジックを武器に持って論理的に現状の問題や課題、目指す方向性などを説明できれば、工場長・本部長クラスとも対等に議論する武器はもらえるな、と思いました。不安もありましたけど、前段の全社アセスメント活動を一緒にしている中で、そういう信頼はあったため「いったんやってみよう」と思えました。

工場の改善活動との合流 戦略的な役割分担で互いを補い合う

熊坂
検討フェーズの長いトンネルが抜けた先で起きたことが「工場の活動と合流」でした。
いよいよ本格的に、主要なキーパーソンと合流して具体的な変革が始まるんだなと感じた頃の話になります。

山元
工場との合流より以前の2019年7月に、工場で検討したチームと意見交換の場を持ちました。そこで目指す方向性が近いことを確認したうえで、今後の検討をどのように一緒に進めるかについても、7月から10月の間で検討していました。

そこから設備管理機能の目指す状態の定義や、具体的な業務フロー作成、業務の実施に必要な工数の議論などを一緒に進める中で、一体感が出ていたかなという印象がありますね。

長谷川
活動の内容を誰が作成して、どのように承認するかをLTSにも入ってもらい組み立てました。具体的な検討をすでに進めていた我々業務IT化プロジェクトのメンバーが案を作成し、それをたたき台に議論をしたうえで、工場チームのメンバーが現場感を持って確認し承認、責任を担保するという枠組みを作って進めました。互いに過不足を補うように融合していったなと感じます。

熊坂
業務IT化プロジェクトでは皆さんと一緒に、問題仮説や目指す方向性を論理的に分析目線で積み上げてきたので、より説得力のあるものができたとこちら側でも自負していた部分はあります。

一方で、工場側の考えていらっしゃったことは、これまで現場でのいろいろな経験があった故に、こうせざるを得ないよねとか、理想を描いたとしても落ち着くところはここだろうみたいな、現場の感覚を踏まえた案ではあったので、最後、人数配置をどうしようとか具体的な話をしていくときに論点として出てきたと思います。

工場側の現場目線と業務IT化の経営目線とが衝突する場面ももちろんあったと思いますし、LTSの知らないところで皆さんが調整されていたこともあったと思いますが、結果として、あのような形にまとまりました。個人的には両方の立場・視点があったことが良かったと思っています。

後編へ続く…


ライター

忰田 雄也(LTS マーケティング&セールス部 部長代行)

SE・テクニカルライターを経て、LTS入社。ERP導入や業務改革におけるユーザー向け広報・教育企画および業務文書改善など組織コミュニケーションに関連するコンサルティングに従事。2017年よりLTSコンサルティング事業のマーケティングを担当。2021年より本サイト「CLOVER Light」の立ち上げ~運営・編集長を務める。(2024年1月時点)