「人工衛星データ」を活用した新規ビジネスの創出~宇宙から得られるデータ活用の大きな可能性~

DXLTS

この記事では、LTSの人工衛星データのビジネス活用に向けたコンサルティングサービスを提供している、データ分析チームのチームリーダー坂内匠さんにインタビューした内容をご紹介します。

人工衛星データをどのようにビジネス活用するのか、今後の市場動向やLTSが注力している領域をお話しいただきました。

データ分析チームリーダー

坂内 匠(LTS マネージャー)
CRM領域にて、顧客事業所の業務改善や計画策定支援を担当。マーケティング領域の支援、製造データ・業務データ分析から顧客現場の変革を推進する支援にPMとして携わる。その他、市場調査や中長期戦略のレポーティングにも携わる。統計士、データ解析士の資格を持つ。

人工衛星データを活用した身近なサービスとは?

――人工衛星データのビジネス活用については、先日のコラム※1でも今後注力していきたい領域とご紹介していましたね。具体的にどのようなサービスですか。

坂内:
人工衛星データをお客様が保有するデータやオープンデータと組み合わせることで新規事業・サービスの企画や衛星データを用いたPoCの実行・評価などを支援しています。
LTSの実績としては、衛星データを活用したインドでの洪水被害(浸水エリアの特定)と事業的損失の試算モデルの構築や、顧客のIoTデータと衛星データを組み合わせた推定モデルの改善等といった事例があります。

画像1:サービス提供実績①

※1
DX人材が知っておきたいAI・データ分析10年史:https://clover.lt-s.jp/?p=5251

――もう少し具体的な活用方法を教えていただけますか。

坂内:
衛星データはお客様の業界によって活用のされ方が違うため、イメージが難しいかもしれません。

分かりやすい例ですと、スーパーマーケットの業績・株価の予測などに活用されるケースがあります。スーパーマーケットの売り上げは、来客数と強い相関があり、つまり、駐車場に停まっている車の数で推測することができます。人工衛星から車の数を数えることで売り上げを推測し、期ごとの業績や株価の予測などに衛星データが使われていたりします。

また保険業界の例では、洪水などの自然災害が起きた際にいち早く被災された方に保険金を支払うために衛星データを活用するケースもあります。人が被災地に赴き被害範囲を把握するよりも、衛星データで状況を把握したほうが時間が短縮され、結果、保険金の支払いまでに要する期間も短縮されるという効果があります。

“宇宙”というマーケットに秘められた大きなビジネスの可能性

――身近なところでも人工衛星データが使われるようになってきているのですね。

坂内:
そうですね。最近では民間企業でも人工衛星を打ち上げるようになり、飛んでいる衛星も取得できるデータも増えていて、世界中の宇宙開発機構が衛星データをオープンデータ化していることもあり、より身近なものになってきています。

画像2:サービス提供実績②

一方で、衛星データの取り扱いはこれまで専門機関や大学の研究機関等での利用が中心であったため、民間企業での活用には技術的な難易度が高く、まだ認知も低いです。衛星データ活用の企画段階から解析実務まで提供している企業も少なく、民間企業でのビジネス企画の推進には大きな障壁がありますね。

LTSは以前から大学との共同研究で人工衛星データを取り扱っていたので、ビッグデータやAIの延長線上で今後大きな可能性を秘めている“宇宙”というマーケットに対して、新規サービスを積極的に推進していきたいという想いがありました。
そして、2019年に民間企業での衛星データを活用した新しい取り組みを推進するための包括的なコンサルティングサービス※2を開始しています。

※2
「衛星データのビジネス活用に向けた戦略立案・事業計画のコンサルティングサービスを開始」のプレスリリース:https://lt-s.jp/news/pressrelease/2019-06-12

ですが、これまでビジネスにおける衛星データの活用について様々なお客様と議論をしてきましたが、衛星データ単体でビジネス要件を満たせることは稀です。

現在の衛星データの時空間解像度は、ビジネス側のニーズを満たすには荒すぎるため、自社データと衛星データを組み合わせることで、新たな価値を創出できる可能性が高くなると考えています。

――具体的にどのよう課題感のある客様にこのサービスがフィットしますか。

坂内:
例えばIoTセンサーなどで自社オペレーションに関するデータを豊富に持っている場合、その周辺環境のデータを衛星から取得して組み合わせれば、自社データをより高度化できると思います。
IoTの取り組みでローカルセンサーはより安価で設置しやすくなってはいますが、広域の環境全域まで設置することは難しいので、周辺の環境情報も分かれば、より良い情報取得が可能となる、という課題を持ったお客様にはフィットするかと思います。

ですが、衛星データ活用のプロジェクト企画でよく苦労するのですが、”衛星データ”を入り口にしてしまうと、お客様の業務課題は何か?というところで議論が進まなくなってしまうことがあります。

衛星データの活用はビジネス上で捉えたい事象を見るための手段だと思っていて、具体的に衛星データで取れるデータをご紹介すると、こんなものに使えるんじゃないか?という感じで話が進みますね。
なので、衛星データの活用に興味を持つお客様とディスカッションを重ね、目的と手段を行ったり来たりしながら、徐々に活用の方向性を導き出しています。

その意味では、衛星データに興味を持っていて、新しいビジネスに挑戦したいと思っている方全員が、私たちLTSが支援したいと考えているお客様です。

データ分析人材の二極化で日本のデータ分析・AI産業の底上げを

――幅広い領域のお客様にとってビジネスの可能性・ニーズがありそうですね。一方で、専門性の高い領域で人材の確保・育成にハードルがありそうですが、どのようにお考えですか。

坂内:
今後、データ分析やAI市場は専門性が低く汎用化が容易な領域と、専門性が高く汎用化が難しい領域の二極化いていくと考えています。むしろ、そうなっていくべきだと考えています。

現在は、データ活用に取り組む企業の多くが前者の領域も外注を前提に取り組みを推進している印象です。しかしその進め方では、企業はコストばかりかかる上に具体的な成果には到達しづらく、結果、今後の日本のデータ分析やAIといった産業は発展していかないのではないかという課題感を持っています。

専門性が低く汎用性が高い領域はユーザ側が人材を育成して主導で推進していき、衛星データ解析のような専門性が高く汎用性の低い領域は専門機関で人材を育成していくことで、日本全体の技術力を上げていく必要があると思っています。

データ分析・AI市場は多岐にわたるので、LTS単独で支援が難しい領域については、LTSと同じような思想を持つエッジの効いた企業とパートナーシップを組み、一緒に日本の産業を発展させるにはどうしたらいいのかを日々検討しながら進めているというのが現状です。

――LTSもパートナー会社さんと協力しながら進められている状況ですので、この領域ができる人材はまだ少ないのでしょうか。また、LTSにいるメンバーはどのように技術習得や勉強をされているのですか。

坂内:
先ほどもお伝えした通り、衛星データの取り扱いはこれまで専門機関や大学の研究機関等での利用が中心であったため、民間企業ではまだまだ少ないです。

LTSにはこの領域ができるメンバーが数名いますが、大学院時代に衛星データを用いて研究活動をしていた人材を積極的に採用したり、また私自身も現在大学院に所属して、衛星データとAIを用いた研究活動に取り組んでいます。

私がリーダーを務めるデータ分析チームは現在13名(2022年6月時点)のメンバーで構成されています。チーム内で毎月勉強会を開催して、最新の研究事例などを共有したり、徐々に対応できるメンバーを増やしていっています。

人工衛星データのビジネス活用のさらなる発展に向けて

――最後に、今後この領域で取り組んでいきたいことや、課題感を持っている人たちへのメッセージいただけますか。

坂内:
衛星データ市場は、現在、初期成長フェーズで興味を持つお客様やパートナー会社が増えているタイミングなので、様々なテーマに挑戦し、市場の理解とサービスの成熟化に注力したいと思っています。

また、前例がないテーマになることが多いので、明確な課題感よりも衛星データを用いて何か新しいことを成し遂げたいと思っているお客さんと一緒にビジネスを創っていきたいです。

注目している産業はいくつかあるのですが、最近特に研究活動を進めている領域は再生可能エネルギー領域への衛星データの活用です。今後、再生可能エネルギー(太陽光や風力)は、脱炭素社会への移行に向けた重要なエネルギー源の一つとなります。

自然由来のエネルギーはその立地選定や発電量予測において、自然環境の理解が重要になり、そこに衛星データが利用できるのではないかと考えています。

気候変動やエネルギー政策などは社会課題の解決テーマとしても注目されていますし、衛星データとも親和性も高く、アカデミアの強い専門性をビジネスに還元していけるこの領域にLTSが挑戦できるというのは、すごい面白そうだなと思っています。

――個人的には、次々と新しい領域に挑戦する坂内さんの心意気やモチベーションなどもお聞きしたいですが、それはまた別の機会に(笑)本日はどうもありがとうございました。


取材者

ayumi.oyama
ayumi.oyama

CLOVER編集部員。育休復帰後、CLOVERの立ち上げ・運営に携わる。
主に、記事の企画立案・取材・執筆を担当。仕事と娘2人の育児で毎日がにぎやか。
地元は九州。通訳、翻訳、心理学の勉強を細々と続けている。

執筆者

yuno
yuno

CLOVER編集メンバーの一人。
メディアの立ち上げから携わり、現在は運営と運用・管理を担当。
SIerでSE、社会教育団体で出版・編集業務を経験し、現在はLTSマーケティングGに所属。
趣味は自然観賞、旅行、グルメ、和装。

編集者

yuya.kaseda
yuya.kaseda

CLOVERの編集・全体監修~メディア企画・運営全般。
SE、テクニカルライターを経てLTSでコンサルタントを経験、現在はLTSのマーケティングGリーダー。
スライド式QWERTY物理キーボード愛好家。