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半年過ごして見えてきたガーナの文化と課題 ガーナ滞在記② (LTSボランティア休職 利用事例)

LTSの「自己研鑽・ボランティア休職」制度を利用して休職中の池田さんは、青年海外協力隊としてガーナに赴任しています。この記事では「ガーナ滞在記」として、池田さんから定期的に届く現地レポートを紹介します。2回目となる今回のレポートでは「実行」に重きを置くガーナ文化を物語るエピソードや、滞在して半年の振り返りを紹介します
池田 愛子(LTS コンサルタント)

2015年にLTS入社、大手自動車会社にてBPO業務の業務プロセス運用・改善の長期プロジェクトに従事、その後、課題整理・プロセス可視化等の業務分析プロジェクトを複数経験。2022年1月から自己研鑽・ボランティア休職を取得し青年海外協力隊としてガーナで奮闘中。(2023年2月時点)

ガーナ滞在記 2022年7~8月の報告

近況:生活全般について

1月末に任地へ赴任してから半年が経過した。未だに突然の断水に心をかき乱さることや明け方4時過ぎからの鶏、ヤギ、羊の合唱に嫌気がさすこともあるが、ようやくこの生活にも慣れ、ここでの暮らしに居心地の良さを感じるようになってきた。学校での生活にも慣れ、協力隊の期間中にやりたいと考えていたことが少しずつ実現できるようになってきた。

マンゴー狩り

季節は引き続き、雨期であり、大好きなマンゴーが山ほど食べられる嬉しい季節でもある。「木になっているマンゴーどれでも好きなだけ持って行って良いよ」と言われることも多く、まさにマンゴー食べ放題の天国のような時間を味わった。

バケツいっぱいのマンゴー

しかし、その翌週には学校でバケツいっぱいのマンゴーをもらい、腐るほどにマンゴーがある状態で、いかに腐らせずに食べきるか毎日マンゴーの心配をする羽目になった。いくつかは冷凍していたのだが、コロナに感染してしまい首都で療養している際に事件が起こった。いつも隣人さんに光熱費の半額を払っていたのだが、どうやらきちんと支払がされておらず、家の電気を完全に切られてしまったのである。冷蔵庫の中の食品はすべて腐り、泣く泣くマンゴーの残骸を始末するというマンゴー地獄を味わう悲しい結末となった。

日本では高級なマンゴー。熟れる前に落ちてしまうものや、各家庭でも腐らせてしまうケースも多いようで、冷凍だけではなく、ジャムや乾燥マンゴーにすることで保存可能とし、少しでも高く売れるような工夫に次回は挑戦してみたい。

日本との交流

この2か月で達成出来たことの一つに日本の学生との交流が挙げられる。双方の学生の視野を広げられるような機会を作りたいと考えていたところ、元ガーナ隊員の紹介で群馬県の高校と繋がることが出来た。

日本の高校生とのオンライン交流

事前に何度か接続確認を行ったものの、交流当日は任地の天気が悪かったこともあり、ネットワーク不調に悩まされたが、学生同士で会話をすることができ、彼らの嬉しそうな表情を垣間見ることが出来た。

今後も継続的に交流する予定のため、PCルームが利用できるようになった際には、生徒たちにPCで自己紹介資料や文化紹介資料を作成させ、互いに見せ合うような時間にしたいと考えている。交流相手がいることでICTの授業へのモチベーションアップやアフリカ以外の地域を知るきっかけ作りになれば本望である。

スポーツ大会

7月中旬には配属先でスポーツ大会が行われた。スポーツ大会に向けた体力づくりの一環で毎週土曜日の朝5時から早朝ランニングが行われていたのだが、そこでも文化の違いを実感することがあった。

ガーナのランニング

ランニングと聞くと、常に自分の自己ベストと戦う必要があり、苦しいものというイメージだったが、ガーナの生徒たちはみんなランニングが好きだという。それもそのはず、ガーナのランニングは全員で歌を歌いながら、楽器を鳴らしながら、足並みを揃え、時にステップを交えた行進のようなランニングだったのだ。

楽しい早朝ラン

女子生徒を前、男子生徒を後ろに配置し、全員が無理なく走り続けられるペースでランニングをするため、2時間のトレーニング時間があっという間に過ぎ去った。「運動をする楽しさを知る」という目的に忠実なガーニアンランニングの虜になり、日本人でマラソンが嫌いな学生にもこのようなランニングを体験してみて欲しいと思うほどであった。

スポーツ大会の準備

スポーツ大会の準備に関しても驚きの連続であった。まず、いつスポーツ大会を実施するのか日取りが決まらない、準備出来次第、実施するというスタンスなので、いつまでに準備を行わないといけないのかが分からないのである。また、スポーツ担当の先生の頭の中にだけ、何をすべきかの段取りが組まれているので、生徒先生含め、みな指示待ちになってしまうのである。

担当の先生がいない日にも準備を進められるように先生の頭の中の段取りを紙に落としていこうとしたが、その先生自身も準備を行いつつ、思いつきで準備を進めているようで何とも難しい棚卸であった。それでも大枠で、各スポーツに必要な準備をコート整備、道具整備、ルール作りとカテゴライズし、こちらからの質問に答えてもらう形で進めるとようやく情報を引き出すことが出来た。様々なタイプの顧客へのヒアリング経験を少し活かすことが出来た嬉しい経験である。来年度は、今年紙に落とした段取り表をバージョンアップすることでスムーズに準備を進められそうな期待が出来る。

卓球台を作ろう!

また、卓球台が見つからない、誰かが盗んだという理由で卓球台を手作りしていたことにも驚きであった。さすがは、職業訓練校、カーペンターコースの生徒を中心に作成が進められていたが、参考にしていた卓球台の規格が古かったようで、板の長さが正規の長さから足りないということが発覚した。

「縦横のバランスが変わらないように小さめサイズで作るしかないのでは?」と提案すると「彼らには本当の卓球を体験してもらいたし、彼らが外の世界で卓球をした際に違いに戸惑ってしまうからバランスを変えるのはだめだ」と却下された。また、「近隣の学校から借りてくるか?」と言うと「彼らが今後卓球をしたいと思ったときに出来ないのはかわいそうだ」という理由でまたも却下された。

手作りの卓球台

そもそも卓球台が手作りの時点で、生徒は戸惑うだろうし、今の今まで卓球台が盗まれたことにも誰も気づかなかったのに練習したいときに出来ないという何とも不思議な理由でツッコミ所が満載であったが、こだわるところにはこだわるガーナ人らしさを感じる準備であった。結局、準備を進める中で、学校の使われていない倉庫に卓球台が眠っていたことが判明し、メンテナンスをするだけで済んだというオチだったのだが、ここからもスポーツ大会実施後の後片付け、備品管理の重要性を痛感することとなった。

ガーナでは、PDCAで言われるプラン、チェック、アクションがなく、実行のみで回っている印象を度々受ける。そのため、今後も活動をする中で私なりに考える準備、チェック、振り返りの重要性を少しずつ伝えていきたい。

ガーナ滞在半年で見えてきた課題

職業訓練校卒業生の就職率の低さ

半年が経過し、ようやくガーナ全体の問題、配属先の問題が見えてきた。これまでは、点であった数々の事象が線で繋がり少しずつガーナ全体が抱える問題として掴むことが出来てきた。

配属先は、職業訓練校だが学校を卒業した生徒が学内で培ったスキルを活かした職に就けているケースは稀なようである。ICTコースを卒業した生徒も普段は、バイクでものを運搬しながら農業に従事し、日銭を稼ぐ生活であり、急にけがや病気をした際の病院代を捻出することも厳しい状況である。

卒業生や先生の話によると、現状の就職活動の方法として知り合いの伝手を頼り、各企業に直接アプローチするしかなく、採用条件を大卒以上としてしている企業も多いため、門前払いをされるような状況とのことであった。

職業訓練校の卒業生の就職率が低い理由の詳細な調査が必要ではあるが、①そもそも働き口が少ない、②企業と学生がうまく出会えていない、③学生のスキル不足により不採用となっているというような仮説が考えられる。②③は、職業訓練校内のサポートを工夫することで改善できる部分もあると思う。学生が就職できる(希望する進路に進める)までのプロセスのどこに課題があるのか、実態を調査しつつ、今の環境で出来ることから取り組みを進めていきたい。①の働き口が少ない問題についても、難易度は高いことが予想されるがどのような解決の手立てがあるか考えていきたい。

ガーナは公用語が英語であるため、多くのガーナ人が英語に堪能であること、日本との時差が9時間であるメリットを活かせれば、日本の企業の業務を一部アウトソーシング出来る可能性もあるのではないかと考え、今後可能性を探っていきたい。

なんでもできる彼の夢は、軍人

軍人を目指している生徒

電気コースに通う彼は、ファンの設置から電気の配線、ペンキ塗りまでなんでもできるオールラウンダー。卒業後の進路を聞くと、軍人になりたいため、軍人養成校に通うとのこと。

キャリアについて考える機会も少なく、卒業間近になり、将来を考え、卒業後には全く違う進路に進む生徒も多い。在学中のサポートの在り方も考える必要がある。 

義務教育の現状

ガーナ赴任前にガーナの教育制度をネットで調べたところ、日本と同じく小学校6年間、中学校3年間は義務教育であるということが分かった。Free education, Free mealと書かれており、日本と同じ教育システムであるという印象を受けた。

成人識字率も80%近く、平均5%近い経済成長率を誇ることからアフリカの優等生とも呼ばれている。しかし、実態は義務教育と謳いながら、制服をはじめとする生活用品を各家庭で準備するだけではなく、給食も支給されておらず、学期末のテストを受けるためにも親がテスト代を負担しないといけないという現状があるそうだ。

隣町の小学校に勤務するJICAボランティアの話によるとクラスの6割近い生徒がテスト代を払えず、学期末のテストを受けられていなかったそうだ。来期は学年末試験であるため、このテストをパスできないと進級はできないらしく、テスト費用を稼ぐために小学生たちは毎週のマーケットデーに働きに出ているらしい。

児童労働を撲滅させることを目的とするあるNGOが彼女の小学校に講演に来たそうだが、彼らは「何歳以下は働いてはいけない」という綺麗ごとを言うだけで、小学生たちからは「自分たちが働かなかった場合、テスト費用は誰が負担してくれるのか」といった声が多く挙がったそうだ。また、テスト問題を教育省に取りに行くための交通費も各学校が負担する必要があり、交通費を稼ぐために授業をつぶして生徒全員で、土木やセメントを運ぶような時間もあるらしい。

生徒たちがテストを受けるために自分たちで稼いで、ようやく受けられたテスト。そこには、そもそも正解が選択肢にないミス問題が多く散見され、とても正しい学力を測れるとは思えないような内容とのことであった。

自身の配属先でも、今年度の新入生から教育費は無料と言われていたが、一向に政府から教育費は降りてこず、食事代も実質、各家庭が負担している状況である。お昼ご飯を食べられない生徒も多く、私自身、どのように彼らをサポートするのが良いのか正解が見つからない中、政策と実態との乖離を実感する日々である。

問題は大きく、もどかしさを感じる日々であるが、ボランティア一人一人ではできることも限られているため、まずは自分たちがアプローチできそうなスコープ、目標を定め、そこに向かって活動を進めていきたい。例えば「配属先の生徒全員が学期末テストを受けられる状態」等、ゴールを定め、そこに向けて、隊員中心に資金を集める方法を検討したい。

Japanese festival等を企画し、現地の人には日本食を楽しんでもらい、首都からも多くの日本人の参加者を募り、少し高めに設定した料理代でテスト代を賄うといった方法など、自分たちでできることを引き続き考え、アクションを起こしていきたい。

ガーナ国内の貧富の差

夏休みを利用し、同期隊員の任地を訪問した。彼女の高校は、ガーナ国内でもトップ高に位置する女子進学校である。大学進学率が98%、過去にはガーナボーダフォンのトップやGoogle、Microsoftと世界でも有名な大企業に就職する生徒を多く輩出しているらしい。

もちろん彼女たちの相当な努力があってこその実績であるが、裕福な家庭の生徒が多く、ほとんどの生徒が幼少期からPrivate Schoolに通っていたそうだ。ガーナでは、高校に進学する際に日本のような入試システムはなく、中学校で受験する共通テストのスコアを提出することで合否が決まるらしい。裕福な家庭の生徒は、共通テストに向けた勉強に集中することができるが、貧しい家庭では前述のようにテスト代を捻出するだけでも精一杯な状況である。

彼らは、小学校の段階で通学することにも苦労し、その後なんとか中学、高校あるいは職業訓練校に進学し、卒業出来たとしても、なかなか就職が出来ず、貧しい暮らしから抜け出すことは容易ではない。裕福な家庭出身の生徒は、恵まれた環境の中で学び、選択肢を多く携え、安定した職に就くことができる。

もちろん、日本でも貧富の差はあるが義務教育が確立しており、奨学金制度等もあるため、貧しい暮らしのループから抜け出す手段はいくつかある。しかし、ガーナでは一度貧困のサイクルにはまってしまうとそこから抜け出すことは非常に困難である。自分か置かれている環境の中で、少しでも負のループを断ち切れるような支援とは何かを模索する日々である。

まずは、自身の配属先の生徒が希望する進路に進めるよう、現状のどこに課題があるのかを把握しつつ、就職、進学に向けたサポートを行っていきたい。


今回のレポートは以上です。次回は、2022年9~10月のレポートを紹介します。お楽しみに!

エディター

忰田 雄也(LTS マーケティング&セールス部 部長代行)

SE・テクニカルライターを経て、LTS入社。ERP導入や業務改革におけるユーザー向け広報・教育企画および業務文書改善など組織コミュニケーションに関連するコンサルティングに従事。2017年よりLTSコンサルティング事業のマーケティングを担当。2021年より本サイト「CLOVER Light」の立ち上げ~運営・編集長を務める。(2024年1月時点)