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スポーツ大会とPCインストラクターの仕事 ガーナ滞在記③ (LTSボランティア休職 利用事例)

LTSの「自己研鑽・ボランティア休職」制度を利用して休職中の池田さんは、青年海外協力隊としてガーナに赴任しています。この記事では「ガーナ滞在記」として、池田さんから定期的に届く現地レポートを紹介します。
3回目となる今回のレポートでは、学校対抗で開催されたスポーツ大会の顛末と、やっと始まったPCインストラクターの仕事を紹介します。
池田 愛子(LTS コンサルタント)

2015年にLTS入社、大手自動車会社にてBPO業務の業務プロセス運用・改善の長期プロジェクトに従事、その後、課題整理・プロセス可視化等の業務分析プロジェクトを複数経験。2022年1月から自己研鑽・ボランティア休職を取得し青年海外協力隊としてガーナで奮闘中。(2023年2月時点)

ガーナ滞在記 2022年9~10月の報告 前編

地域対抗スポーツ大会に向けたトレーニング

この2か月は、スポーツしかしていないと言っても過言ではないくらいスポーツ漬けの日々であった。
休暇前に学校内のスポーツ大会があった。10月下旬に州内で地区別の職業訓練校対抗の大会が行われたのだ。参加校は、8校で種目は、陸上競技(短距離/中距離/長距離/投擲/跳躍)、卓球、バレーボール、サッカー、ネットボールと幅広く5日間に亘り行われた。

休暇明けの9月初旬からこのスポーツ大会に向けた準備がはじめられたのだが、私は投げたこともない投擲種目(砲丸投げ/やり投げ)と、聞いたこともないネットボールの担当に割り振られてしまい、夜な夜なYouTubeを見ながら勉強する日々であった。

砲丸投げは、首に砲丸をつけた状態で投げるというルールがあり、投げるというよりは押し出すというイメージに近い。一連の動作をビデオ撮影し生徒に見せる、投げた後に記録を測る。色々な動画を見せながら、拙い英語で説明を繰り返し生徒と一緒に練習方法を模索する日々であった。

砲丸投げの練習風景

ネットボールについては、まずはルールの理解から始める必要があった。バスケットボールに近い競技である。違いとしてはドリブルが禁止、ポジションによって動ける範囲が決まっているという特徴があり、早いパス回しによるスピーディーなゲーム展開を楽しめるスポーツである。中学校でやったことのある生徒も多くいたが、ルールを聞いてみると人によって解釈が異なるため、他の先生も含め、色々なサイトを見ながら正しいルールを理解することから始めた。

最初は、私一人が担当についていたのだが、無理があるとアラートを上げたところ、ドレスメイキングの女性の先生が10月からサポートに入ってくれた。一度やると決めた彼女の決意は固く、毎日朝5時半からの朝練、夕方16時からの夕練どちらにも参加してくれ、生徒にも厳しく指導する。また、近隣の高校にネットボールマスターと呼ばれる先生がいるという情報を聞きつけ、その先生に直談判し、コーチに来てもらうよう手配までしてくれた。

ネットボールの遠征試合

こんなに適任な先生がいたのならば、初めから彼女を巻き込んでいればよかったのに…と思わざるを得なかったが、準備の段階で重要なステークホルダーを巻き込むという反省は日本でもよくあることだ。重要なこととして、使えるリソースが何なのかをきちんと可視化、言語化、共有することだと改めて感じた。

スポーツ大会本番!結果は良かったが…

このような紆余曲折がありながら迎えたスポーツ大会では、砲丸投げ女子では、2位と3位に入賞、ネットボールは優勝という快挙を果たした。結果だけみると輝かしい成績だったのだが、ここにも裏のストーリがあるのがガーナである。

大会2日前に砲丸投げの一選手が急用で参加できなくなり、他の選手のエントリーを検討するのだが、すでに他の生徒は一人3種目程度出場予定で余裕がない。急遽、村で手足の長い若い女性を探し、助っ人とし呼び2日間練習をしただけの彼女が2位に入賞した、という彼女のセンスによる快挙であった。

砲丸投げ2位・3位の賞状を授与された生徒と助っ人

また、ネットボールに関してもネットボールコーチの高校の生徒4名をうちの学校の生徒として出場させて得られた功績である。「そんなことして良いのか?」と聞くと「地域対抗ということは、地域の住民Oneチームで戦うということなんだ!」と力説されると「そうなのか…」と納得するしかなく、うちの学校の制服を彼女たちに着せ、写真を撮り、studentリストに加えることとなった。

ネットボール優勝で学校唯一のトロフィーを獲得

全体結果としては、8校中6位という結果だったのだが、学校にいくつかの賞状とトロフィーを持って帰ることができた。良かった良かったと安堵しクロージングセレモニーを終えたのだが、事件はそこから起きた。

乱闘、襲撃騒ぎ。いつ何が起きるか分からない現実

クロージングセレモニーの直前にサッカー男子の決勝をやっていたのだが、ホスト校vs隣町の学校という組み合わせで2-2の同点、PK戦の末、隣町の学校が優勝したのである。ホスト校は3000人規模の大きな学校であったが、自身の学校を含めアウェー側である隣町の学校を応援していた観客も多かった。そんな中で、ホスト校の生徒が負けた腹いせに乱闘騒ぎを起こし、挙句の果てにうちの学校のバスが襲撃されたのである。

石を投げられガラスを割られ、乗っていた生徒や先生は逃げるように会場を後にするしかない緊迫した状況であった。幸いうちの生徒に怪我はなく、私も数人の先生たちと最後の挨拶周りをしており、そのバスにまだ乗れていなかったので被害はなかった。しかし、隣の学校はバスに大きなコンクリートを投げられ、怪我人が出ていた。

襲撃されたバス

会場には警備員が10名程度、ホスト校の先生も300名程いたそうだが、3000人の生徒を完全にコントロールすることが出来ず、起きた事件であった。

先週起きた出来事であるため、学校でも事後処理に追われているが、あらためて日本ではない土地にいること、いつ何が起きるか分からない状況にいることを実感し、身の危険を感じる経験であった。バスを襲撃された場合には、逃げ場もなく、どうすることも出来ない。

JICAにも報告し、どのように身を守るべきか、セルフディフェンスの方法をしっかり身に着けていかねばならないと感じた。イベントごとには危険が伴うということを、肌で実感した経験でもあった。

PCインストラクターとしての成長実感

PCを使った授業がスタート

この2か月の間にようやくPCルームが使えるようになった。これまで座学のみでPCを教えることに苦労していたのだが、実際にPCを触れるようようになり生徒たちの表情も生き生きとしてきた。

新しいPCルームでやっとPCが使えるように!(インド政府からの支援)

ICTコースの生徒は現在、1年生の2名しか学校に来ていないのだが、習熟度や出席状況に差があるため、個別に課題を与え、二週間に1度はスキルチェックのテストを行うように試みている。しかし、現実は厳しくなかなか思い通りには進まない。

一人は、PCを学ぶ意欲もあり、覚えも良いため、次々と課題をクリアしていけるのだが、もう一人ははじめてのPC操作で、うまくノートパソコンが扱えず、PCに苛つきながら操作をしているような状況である。30分以上授業を続けると頭痛を訴え、テストの途中で帰ってしまうことも少なくない。

生徒がPPTで作った「理想の家」

どうすれば彼女にPCの楽しさを伝えられるのかと頭を悩ませていたのだが、スポーツ大会のstudentリストを作成する中で、私は手書きで書かれたガーナ人の名前を判別することが難しく彼女に手伝ってもらった。最初は、彼女にアルファベットを読んでもらっていたのだが、私が疲れたこともあり、5人ずつ交代で入力することにした。

彼女の操作を傍で観察することで、右クリック、左クリック、ダブルクリックの概念が分からず、うまくPCが反応しないことに苛ついていたということが分かってきた。ラップトップの操作が難しいのであれば、マウスを使えば概念も分かりやすいのでは?ということに気付き、マウス操作を勧めてみると少しずつコツをつかみうまく入力できるようになってきた。

先生の役割と仕事のやりがい

それまで、もう一人の生徒が着実にスキルを身に着けていることに彼女自身何も感じていなかったわけではなく、PCが嫌いになりそうになっていたが、タイピングが出来ることで、学校の手伝いが出来たということが彼女の自信にもなったようだ。この経験を通して、私も彼女に依頼しやすくなったし、彼女も少し自信をつけて「今日もstudentリストの続きやる?」と自ら聞いてきてくれるようになった。

大学生の頃に学習塾でアルバイトをしていた際に、観察の重要性を教えていただいたことがあった。どのようにプリントに向き合っているのか、椅子に座る姿勢や字のきれいさからも彼らの状況を読み取り、適切な言葉がけ、適切な教材を与えることが先生の役割であるという風に教えてもらったことが繋がった経験であった。

彼女は、まだテストを独力でこなせる状態ではなく、何度も繰り返し反復練習をすることで「出来る」を実感し、「出来ると楽しい」と思ってもらうことが何よりも重要であったことに気付かされた。

PCインストラクターという職種ではあるものの指導経験は少なく自信はなかったが、この経験を通して、先生という仕事の難しさとやりがいを少し感じることが出来た。


今回のレポートは以上です。次回は、2022年9~10月のレポート後編を紹介します。お楽しみに!

エディター

忰田 雄也(LTS マーケティング&セールス部 部長代行)

SE・テクニカルライターを経て、LTS入社。ERP導入や業務改革におけるユーザー向け広報・教育企画および業務文書改善など組織コミュニケーションに関連するコンサルティングに従事。2017年よりLTSコンサルティング事業のマーケティングを担当。2021年より本サイト「CLOVER Light」の立ち上げ~運営・編集長を務める。(2024年1月時点)