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リーダーシップ

創業20年のグループバリュー刷新 ミドルアップで作る行動指針 

2022年に創業20周年を迎えたLTSは、その前年の2021年にミッションとビジョンのアップデートを終えました。そして、MVVの3つ目である「バリュー」も20周年プロジェクトの一つとして刷新を決定。この記事では、バリュー刷新をリードしたプロジェクトメンバーに全社を巻き込んだ変革活動の進め方や活動で得た学びについて聞きました。

若手リーダーがけん引したバリュー刷新プロジェクト

―――バリュー刷新プロジェクトに参加した経緯を教えてください。

辻 勇輝(LTS マネージャー)

東京大学経済学部卒業。LTS入社後は、BPO業務の業務プロセス運用・改善や経営企画部門の業務可視化/標準化のほか、基幹システム構想~導入などのプロジェクトに複数参画。複数関係者の議論をファシリテートすることで、横断的課題の解決、合意形成に貢献している。(2023年10月)

辻:
「社内の活動よりもお客様にコミットしよう」と思っていた頃もありましたが、何であれ本気で正面からぶつかっていく方が結果的に力になり自分的にも楽しい、と思い直していた時期に上野さんに「バリュー刷新のPMをやらないか」と声をかけていただきました。今回の活動を通じて、結果的にお客様への貢献につながる活動ができたと思います。

上田 和輝(LTS コンサルタント)

業務分析、システム導入などの案件に参画。The Open GroupやObject Management Group等の提供するグローバルスタンダードの方法論、モデリング手法を用いて多角的に業務を分析・評価し、ソリューションの提案、実装を支援。TOGAF9.1 Certified。(2021年6月時点)

上田:
出向していたFCJ(FPTコンサルティングジャパン)から戻ってきたのが2021年の9月頃だったので、もともと20周年活動の各種プロジェクトへの応募はしていなかったのですが「人足りないところに入ってほしい」と誘われて、バリュー刷新プロジェクトに加わりました。なので、最初はコミットはあまり高くはなかったです。
自分はこの会社で何をするのか?専門性を身に付けていかないとやりたいことができないのでは?と思っていて、関西事業部に異動して環境も変わったタイミングでもあり、自分なりのバリューを作る必要性も感じていました。

桑原 啓太(LTS マネージャー)

東京大学法学部卒業。LTS入社後は、全社BPRやDXの企画・プログラム立ち上げプロジェクトに複数参画。ビジネス課題の抽出・構造化から施策としてのシステム導入・業務運用支援まで、幅広い領域を経験している。製造業を主要な領域としつつも、不動産・小売・ITなどの業界のクライアントに対してもご支援経験あり。(2022年2月時点 )

桑原:
入社時から会社作りに携わりたいとは考えていました。もともとのバリューである「LETUS」も良いですが、それを変えるというチャレンジングな領域には魅力を感じました。会社が成長する過程で、組織の中にモノとして残るものもあると思いますが「言葉として残る+それが文化を作っていく」というところに関われるのは面白かったと思っています。

新妻 優花(LTS マネージャー)

早稲田大学先進理工学部卒業後、新卒としてエル・ティー・エス入社。複数業界へのITコンサルティングサービスと、採用・育成・オンボーディングなど各種組織運営をリードしている 。「顧客の課題解決」「自社の組織創り」の両面にアプローチすることで、人と組織の成長を支えられる人になることを目指している。(2024年3月時点)

新妻:
コンサルタントとしてお客様に貢献していくのはもちろん、LTSという成長企業で社内に対してもアプローチしていきたい、と入社時から思っていました。 ですので、こういった活動の募集があれば手を挙げない理由はありません。バリュー刷新プロジェクトに入り、本当に完成まで持っていけるのか?という不安もありましたが、組織と人の想いが相互に作用する過程に関われたのは貴重な経験になりました。

「バリューはミドル中心で作ってほしい」という経営の意思を受けて

―――経営の希望もあり、リーダークラスであるミドル層(20代後半~30代)でバリュー刷新プロジェクトをリードしたと聞きました。

上田:
LTSを創業した第0世代(樺島さん・李さん・塚原さん)、次に第1世代として2008年以降の新卒入社の世代がいて、そして次の世代を自分たちのような今のリーダー・ミドルクラス(15年~19年入社くらい)が担っている。そう考えたときに「自分たちが働く会社ってどうしたいのか」や「自分たちがリーダー層から経営に近づいていくときにどんな会社にしておきたいのか」を見据えて10年後に浸透しているバリューとは何かを考えてみなさいという命題をもらったのかな、と思っています。そこは面白いポイントのひとつだったんじゃないかと思います。

桑原:
こういう活動をやっていなかったらどうだったかを考えると、どうしても目の前の仕事や目の前のお客様のことばかりになっていたと思います。こういう活動を通して、会社の将来だったり周りの社員の方がどういうことを考えて働いているのか、を考える機会になったので、会社というより個人としての話になりますが、やるとやらないとで結構大きな違いがある取り組みだったのかな、と振り返ると思っています。

上田:
別の言い方をすると、この活動を任せられたことでLTSへの帰属意識が否応にも上がってしまいましたし、この先のLTSを見届けなければ、という気持ちにもさせられて、経営陣の企みにまんまとハマった感もありますね。

新妻:
どういう位置づけのものを作りたいのかによって、どういう体制で作るべきなのかも変わってくると思っています。現在のLTSにおいては、こういうミドルアップのアプローチが適切だった、というか、適切になるように頑張ったという感じだと思います。

辻:
私が「バリュー作りは誰がやるか?」について、考えていたことは2点です。
ひとつは、バリューを作ることに対して、立場関係なく臨めるのか?
若手中心やボトムアップでやるべきと言うと半分ミスリードで、本質はそうではないと思っています。年次が低い、それこそ1-2年目のメンバーでも年次を気にせず、これから先の10年LTSグループとして、バリューとしてどんなものが必要なのか?を本気で考えてくれることが大事なポイントです。年次や所属を気にせずフラットに臨めるのであれば、どんな立場でも関係ないと思います。

ふたつめは、インプットにどれだけ生々しいストーリーがあるか?です。
これは「バリューというひとつのアウトプットには、そこに紐づくたくさんのストーリーがある」ということで、それを確かめるには組織のボトムというか現場に近いところに情報を取りに行かないと、魂がこもりません。また今回新しくしたバリューに対して、これから先にエピソードがどんどん生まれていく感覚が持てることも大事です。その前提で、我々のようなミドル・リーダー層が主体となった活動に価値があった、意義があったのだと思います。

20周年プロジェクトの社内報告会で新しいバリューに込めた想いを語る辻さん

ルールも答えもないモノを創り出す難しさ

ーーーバリュー刷新という難しい課題に立ち向かうのは、苦労が多かったと思います。難しかったことや、ふりかえって感じることはありますか?

辻:
PMという立場からはプロジェクトメンバーには「ゴールも給水所もない無限マラソンを走らせてしまった」という反省があります。仮でもいいので決めて、ここまでにこれをするという目標を設定することは重要です。プロジェクトワークでも同様ですが、中間の成果が見えるようにクイックヒットを仕込むような動きを取っておくべきでした。それが何故できなかったのか?は、今後考察していく必要があります。

上田:
とはいえ、マイルストーンを置くのが難しい活動だったと思いますよ。

辻:
マイルストーンとまで言わないとしても、インプットを集めていた時期に「こういう何かしらのアウトプットをここまでに出しましょう」と、早いタイミングで言えていれば良かったですね。

上田:
最初は、バリューは飲み会などでみんなでわちゃわちゃ話して熱量を高めていく、そういう過程の中で作るものだと思っていました。設計やアジェンダを詳細に決めるよりも熱量、と思っていましたが、コロナの影響であまりそういう場が作れませんでした。
各論で議論をしている段階では自由な熱量で話せますが、全体として見たときの交通整理は重要だったと思います。交通整理する人は熱量を持ちながらも冷静でなければならない。ここは個人によって得意不得意があるかもしれません。

新妻:
話を聞きながら思ったのですが、わたしたち4人はコンサルタントという職業柄、プロジェクト型の動きには慣れていますし定石も知っている一方で、それがハマる部分とハマらない部分があると感じました。通常のプロジェクトワークとは、ロジカルだけでなく感情面の重要度が異なると思います。
限られた人数とリソースの中でプロジェクトを進める方法を考えるのはどの案件でも同じですが、バリューに関しては、個々の得意な分野や関心がある分野を敏感に感じ取り、配置するという視点が重要です。これは普段の仕事にはない視点であり、難しい部分でもありました。

バリュー検討セッションをファシリテートする新妻さん

それでもやりきれたのは、最高のリーダーが集まったから

ーーー困難を乗り切れた背景にはなにがあったのでしょうか?

上田:
自画自賛が若干含まれますが、他の社内プロジェクトと比べた時に、バリュー刷新プロジェクトはリーダー層の機能が圧倒的に高かったんじゃないかと思っています。 PMがいてその他はメンバー、ではなく、その間に実務のプロジェクトでもメンバーを見ているようなリーダー層がそれぞれメンバーを数名抱えてコミットしていた、ここに圧倒的な目の届きやすさがあったと思いますし、全体のマネジメントもしやすかったんじゃないか、と思います。

辻:
そこは相当ありますね。我々のプロジェクトチームはみんな熱量と想いがあり、特にここにいる3人は社内でもスーパーエースで実力もあります。社内を巻き込む訴求力もあるエースと、それにしっかりとついていこうと現場で動いてくれるやたら元気なメンバーと一緒にやり切りました。恵まれたメンバーだから苦しさにも立ち向かえましたね。

新妻:
得意なことが被らない4人のリーダーでチームが組成できたというのはあります。ワンリーダーでは無理でしたね。 最後何回か4人で集中討議をしましたが、全然意見が被らなかったので、驚きと面白さを感じていました。

辻:
たしかにね。全員全然違う観点のコメントがバシバシ出してましたね。

バリュー刷新プロジェクト4人のリーダー(新妻・上田・辻・桑原)

得意なことで補い合い、自由に意見を言える場を作れた

新妻:
自分が見えていた世界でいうと、桑原さんと上田さんはなんでも構造化しますよね。桑原さんは長い取り組みの序盤で全体像を図示して、向かうべき方向を示してくれましたし、上田さんもリスケジュールの際に取り組みの指針を示してくれました。お2人ともすごいな、と感じていました。

自分だけだと「パッションで、なんとなくで進められるんじゃない? 」みたいになる場面でも、全体を繋げた方が気持ち良い!って。そういう思考があるってすごい素敵。

辻さんに対しては何よりも、最後の最後創り切るときの言葉へのこだわりを尊敬していました。前編の記事でも紹介されていましたが、辻さんの1つ1つのフレーズへの熱量・想いがあったからこそ、素敵なバリューに仕上がったと感じています。

辻:
桑原さんがすぐ構造化するのは、ノウハウを教えてほしいなって思いますし、とにかく速い。そして、やることは絶対にやる安心感がありました。桑原さん的なこだわりポイントでは頑固で引かないところは引かない。でも捨てるときは意外と簡単に捨てる。もっと良い意見がポンと出てくるとすぐ乗り換えるの判断の速さも良かったのかなと思います。

新妻さんは、困難な議論を進める組み立ての精度とスピード感が出色でした。限られた時間でまとめないといけない場面でもギリギリまでよりよいものを目指して議論する。そして、しっかりまとめ切る、という場面が何度もありました。それを可能にするスキルや経験もあると思いますが、自信と覚悟があるんですよ多分。自分だったらもっと守りに入っていました。

上田さんは場の流れが乗り始めた時に、変化球というかちょっと違う角度からボールを投げかけてきてましたね。簡単には進ませてくれないところがあります。結果それが気づきに繋がり、軌道修正した場面も多々ありました。

上田:
このメンバーなので自分はやんちゃ担当だと思っていて、とりあえずいろんな球投げて、いろんなやんちゃしても全部受け取ってもらえると思っていました。

辻:
現れ方は三者三様ですが、共通するのはよりよいものを目指す姿勢と、それを可能にする実力。
そして月並みではありますが、それぞれがのびのび動ける心理的安全性の高いチームでしたね。
最初から「遠慮せずに良いものを作っていこう」と伝えていましたが、心理的安全性を育む上で必要な動作をメンバ―全員が自然とできていました。

桑原:
最初に「議論する上でのグランドルール」を近藤君(プロジェクトメンバー)が定めてくれたのも大きかったですね。例えば、「Yes and、気になるところはとことん追求」というような、否定するのではなく、まずは相手の意見を肯定したうえで背景にある意図を探る、といったものです。ロジカルに組み立てるだけではなく、非連続の発想やアイデアが必要とされる取り組みにおいて、自分が否定されない、という心理的安全性は非常に重要だと思います。

辻:
「なぜバリューの再定義をするのか? なぜこれだけのパワーをかけるのか?」を、プロジェクトチームの中できちんと議論、言語化したのは大事でした。活動に共感している社員が多かったのであまりハレーションは起きませんでしたが、新卒1,2年目の自分であればきっと噛みついていたと思います。「なんでこんなことに時間とコストをかけるのか?」は常に問われる覚悟をしていて、それに向き合う準備をしておくのも大事なことです。もし上手く応えられなかったら、一気に崩れていたと思います。

新しいバリューを検討するセッションが多くの社員を巻き込み開催された

作ってからが本当のスタート、この先に伝えていく「バリュー」

ーーープロジェクトを通じて学んだこと、良かったこと、この先にやりたいことを教えてください。

上田:
良かったところは、メンバーの巻き込みや心理的安全性の確保ができる、交友関係が広い人達が集まったので、ゲリラ的な活動による巻き込みもできたことですね。今後は、バリューの浸透を頑張らないといけないです。 お客様向けのプロジェクトをやっているとき、たまにバリューの行動規範を思い出しているので自分を律するのにも使っていきたいと思います。

桑原:
バリューが持つ意味については模索しています。どう社員に伝わっているのかや、まだ自分たちの目指しているところに行けていないのではないか、という思いもあります。なので、まだ探求していく余地があると思っています。
バリューを作ったプロセスは社内に伝えていますが、これから理解してもらうプロセスについても、もっと発信しても良かったかもしれません。継続的に考えていくべきテーマだと思います。

新妻:
バリュー作成の プロセスはしんどかったですし再現性を目指すものでもないと思いますが、個人にとっても会社にとっても「良いものを作ろう」という経験ができたことが 良かったです。作った個人として「これからどうしていこうか?」を考える良いきっかけもいただけたと思います 。
自分も含めて若手のメンバーたちで、さらに10年後の後輩に「これ以上のものはない」と言えるだけのものが創りきれたと自負していますので、これを超えてくれる未来が今から楽しみです。

辻:
学びや良かったことは、大きくはふたつあります。
ひとつは、プロジェクトメンバーとして一次情報である社員の声に触れられたこと。いろんな作り方のアプローチがあると思いますが、ある程度網羅的に社員の皆さんとコミュニケーションをとって、出てきた生の情報をメンバーみんなが触れて、最終的なアウトプットに想いを乗せられました。

もうひとつは、これは両面あると思いますが、社員の力で最後のアウトプットまで作り切ったことですね。外部のこの領域のプロの力を借りるというアプローチもあったと思いますが、完成に近いものをレビューをするような立ち位置でバリューを作るとなると、熱量がかなり限定的になってしまったのではないか、という気がします。

一方で、プロの力を借りるのはオプションとして有効ではあると思います。今回は、最後に社内のデザインチームに協力してもらいブラッシュアップできたので、もっと早く巻き込んでも良かったかもしれません。次のバリュー作りではまた新しいチャレンジをしてほしいと思います。


編集者

忰田 雄也(LTS マーケティング&セールス部 部長代行)

SE・テクニカルライターを経て、LTS入社。ERP導入や業務改革におけるユーザー向け広報・教育企画および業務文書改善など組織コミュニケーションに関連するコンサルティングに従事。2017年よりLTSコンサルティング事業のマーケティングを担当。2021年より本サイト「CLOVER Light」の立ち上げ~運営・編集長を務める。(2024年1月時点)