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プロセス変革・業務改革

LTSが考える“ビジネスアジリティ”

2023年6月7日に、日頃よりお世話になっているお客様・お取引先様に感謝を伝えLTSの目指す姿を共有する場として、20周年記念カンファレンスを開催しました。
このカンファレンスの最後に、執行役員山本政樹より、LTSが考えるビジネスアジリティ、そしてLTSがお客様に提供する価値についてご紹介させていただきました。

カンファレンス当日の別の講演については以下よりご覧いただけます。

山本 政樹(LTS 執行役員)

アクセンチュア、フリーコンサルタントを経てLTSに入社。ビジネスプロセス変革案件を手掛け、ビジネスプロセスマネジメント及びビジネスアナリシスの手法や人材育成に関する啓蒙活動に注力している。近年、組織能力「ビジネスアジリティ」の研究家としても活動している。(2021年6月時点)  ⇒プロフィールの詳細はこちら

ビジネスアジリティが必要とされる時代

1980年台頃に一般家庭にあった電話は、黒電話でした。この黒電話は、数十年もの間ほとんど仕様を変えずに使い続けられた名機です。そして、1980年代半ばから多機能電話が登場してきました。その頃の製品ライフサイクルは4、5年でした。携帯電話やPHSが台頭してきた1990年代半ばから製品ライフサイクルは1、2年になり、そして2010年過ぎには、半年に1回の頻度で新しい製品が出てくるようになりました。

複雑な顧客期待に応えてくれる素晴らしいツールが出てきて、それがどんどんと移り変わっていく、私たちはそのような迅速化と複雑化が同時並行する時代に生きています。

経営も時代と共に様変わりしました。昔は紙と人が移動することでコミュニケーションが成り立っていました。物理的にモノが移動する時間があったので、それなりにゆったりした時代でしたが、今は、世界中の情報が瞬時に集まり複雑な処理をされたものがすぐに経営に届く時代です。コミュニケーションも、必ずしも移動を伴う必要がありませんし、世界中の人や拠点と瞬時につながり、新たな提携先や投資先、様々なものを世界中からネットを通じて探すことができるようになっています。

私たちが今生きている「変化の早い時代」の根底にあるのは、技術の進化です。そして、このような世界観で必要とされる組織能力が「ビジネスアジリティ」です。ビジネスアジリティとは、事業構造を外部の環境変化に対して素早く適応させると同時に、自ら変化を生み出すことを可能にする組織能力を指す言葉です。

組織能力と言っていますが、その実態は、変化を迅速に察知する、迅速に意思決定する、問題点を見つけてすぐに改善する、このような様々な能力の集合体です。それらが連携して企業の総合力となり、企業の競争力に寄与した時、そこに現れている能力がビジネスアジリティです。

今日は、このビジネスアジリティを実現する3つのポイントをご紹介したいと思います。

ビジネスアジリティを実現する3つのポイント

ポイント1:仮説検証型の戦略運営へシフトする

Amazonはたくさんのサービスを提供していますが、実はその裏側には日の目を見ないサービスがたくさんありました。

変化が速くその方向性を予測できない世界では、市場環境や財務見通しを正確に分析して計画を立案し確実に実行していくことが大変難しくなっています。計画を立てている間に外部環境は変わってしまいますし、そもそも立てた計画が当たるとも限りません。

そのような世界観では、とにかくやってみる、とにかく始めてみる、製品・サービスを市場に出してみて、お客様の反応を見ながら戦略を修正していく、そしてダメなら撤退する。このような経営に移っていきます。この場合の撤退は必ずしも失敗ではなく、判断を適切なタイミングで行った撤退であれば、それはむしろ学びといえるかもしれません。

このような事業戦略の運営を進めるためには、戦略運営のプロセスだけではなく、組織構造にも変化を起こす必要があります。

以前の戦略立案は、企業の階層組織の上位職が考えて、それを下位に落として現場が着実に実行していくものでした。しかし、変化の速い時代においては、必然的に戦略の主体も現場側に移っていきます。事業はお客様から始まるため、お客様の動向を一番近くで察知できる人でないと、戦略のマネジメントは成り立ちません。

そして経営やコーポレート機能は、現場のチームを横断で束ねる支援組織的な機能が強くなっていきます。戦略の運営プロセスを変えるだけではなく、組織を変えて、組織と人そのものの振る舞いを変えていく必要があります。これが、一つめのビジネスアジリティ実現のポイントです。

ポイント2:変化に強いアーキテクチャを実装する

戦略やビジネスモデルの見直しをする際に、ビジネスプロセス上の変化が必要な箇所と必要ない箇所を見極めて、変化が必要な箇所は素早く新たな部品に置き換えていく必要があります。

例として、ファッションブランドを展開する会社があったとします。店舗のみで事業を展開していましたが、webサービスを通じてお客様に商品を展開したいと考えた時、商品企画と製造はこれまでと大きく変わりませんが、物流は大きく変わります。他にも契約管理や会計管理の仕組みも大きく変わるかもしれません。

みなさんの会社に何か変化が起きたり計画が変わったり、戦略が変わった際に、自社の構造のどこに変化を加え、どこがそのままでよいか、何を捨てなくてはいけないのかを分析する基盤があるでしょうか?

またビジネスアーキテクチャは、既存のビジネスの効率を着実に上げていくために管理が必要だといわれていました。いわゆる「業務改善」です。コストを下げる、納期を短縮する、品質を上げていく、といったQCDの世界でした。

もちろんこれらは今後も必要とされるものですが、これからのビジネスアーキテクチャの管理は、それらに加えて、何かに変化があったときに、どこを変えるのか、どこを捨てるのか、どこを残すのか、といった分析の視点も大切になります。

そして、人がアナログで行っている業務も機械がデジタルで行っている業務も、全てビジネスアーキテクチャとして一つの構造で管理していく必要があります。しかし、それは簡単なことではありません。

デジタル化が進み、ボタンを押したら帳票が出てくる時代において、帳票がどのように作られているかを経験から理解することができない状況では、学ぶ、分析する、専門性を身に付ける、このような観点が全従業員に必要になってきます。この時に重要になのが、戦略・アーキテクチャの管理に積極的にデジタルを取り込んでいくことです。

竹内先生の講演(20周年記念カンファレンスの基調講演)でもデジタル・トランスフォーメーションという言葉が出ました。デジタル・トランスフォーメーションの本来の定義は、デジタルを活用せよという話以前に「私たちの生活はデジタルによって否応なしに変わる」というメッセージでした。

デジタルの世界がデジタルの世界として進化していくだけではなく、それが結果として私たちの価値観や考え方、社会行動を変えていき、社会全体がデジタルで変わる、それが本来のDXの言葉でした。DXに対応するということは、デジタルによって自分たちをどう社会に適用させていくか、という問いです。まさに、ビジネスアジリティのテーマそのものです。

ポイント3:会社における自社の位置づけ(パーパス)を見直す

ビジネスアジリティという言葉からすると矛盾にも聞こえますが、ただ変化に適応させていくだけでは振り回されてしまい、自分たちが本当に大切にしているものが何だったのかを忘れてしまう、ということが起きてきます。そのため同時に大切なのが、自社の位置づけ・パーパスをしっかりと理解しておくことです。

パーパスはミッションやビジョンとも言いますが、自社がブレずに向き合うべき、顧客に提供する本質的価値や、解決すべき社会課題が何なのか?です。

このパーパスがあることで、それがブランドの中核となり、製品やサービスを開発していく上での拠り所や事業投資の判断基準となります。またそれだけではなく、人材や採用を考えていく上での出発点となり、そしてガバナンスの原点となり、自社が社会規範から逸脱することを防ぐ等、様々な役割をこのパーパスが果たします。

みなさんの会社でもCSRやSDGsといった活動をされていると思いますが、これらの活動は、企業が果たすべき社会的責任や、企業の成果を社会に還元するという文脈で使われることが多いです。

ですが、CSRの活動は決して提供しているだけではありません。それらの活動を通して得られる様々な社会との接点は、まさに社会から自社の果たすべきミッションは何か、解決すべき課題は何か、を感じ取って自社に取り込む機会になっています。

まさにこの接点がパーパスとなり、それが戦略・アーキテクチャに展開されていくことによってビジネスが成り立っています。そのような意味で、ビジネスアジリティの出発点は、まさにこのパーパスであるとも言えるかもしれません。

ここまで、ビジネスアジリティのポイントを3つお話ししました。

LTSは昨年、サービス体系を再編しました。これは、先ほどお話ししたビジネスアジリティ実現の3つのポイントを意識して、このような体系にしたという背景があります。

変革を核に据えた組織と人材育成体系の設計

これからの企業に必要な変革人材

例え、パーパス、戦略、アーキテクチャ等の様々な取り組みを行って、ビジネスアジリティを実現したとしても、社会は変化し続けます。既存の仕組みはすぐに陳腐化し、また新たな取り組みが必要になります。

そのような社会でビジネスアジリティを実現する本当の鍵は、変革を推進し続ける変革人材がいるか、そのような人材を育てて支援する組織の構造があるか、という点に尽きます。

変革人材とは、企業の足元の業績を創出する業績人材とは働き方が異なります。業績人材とは、一定予想可能な世界において既存の事業構造のポテンシャルを最大限に引き出すことで足元の業績を創出する人材です。

一方で変革人材とは、不確実な社会にも一定のビジョンを持って現状の構造を疑い、それを何らかの形に再構築することで、長期的な企業の競争力を獲得する役割を担っています。

この2つの人材は企業にとってどちらも必要な人材ですが、多くの企業では、業績人材に人が偏っていますので、変革人材も育てていかないとなりません。そして、両者の人材の適切なコラボレーションが成り立つ社内の関係性を築いていく必要があります。

変革人材の育成に必要な投資と場作り

変革人材を育てる際には、様々な環境を複合的に整備する必要があります。研修や教育、方法論やツールを整備することももちろん大切ですが、これだけでは不十分です。採用や育成、評価、キャリアパスの在り方など、様々な制度や処遇に踏み込んでいく必要があります。

また、変革人材の育成には変革を経験できる場と、そこで指導できるコーチの存在が絶対に必要です。デジタル技術等のような技術的な内容は、ある程度研修でも学べますが、現実の変革の場で様々な障壁を乗り越えていくマインドセットや振舞は、研修だけでは身に付けることができません。しっかりとした経験を、適切な指導の下で積んでいく必要があります。

ですが、現実の日本企業の人材投資の状況は、諸外国に比べて数分の一です。日本企業は、教育を現場での実務経験と上司の経験則的な指導に頼ってきた経緯があります。この方法は過去のことを着実に引き継いでいく点では一定の効果がありますが、変化に際してどのように振る舞っていくかを教育していく上では、限界があると感じざるを得ない状況です。

しかし、決して従業員を業績人材と変革人材の2つに分断させる、ということではありません。今のような時代では、業績人材であったとしても否応なしに変革の取り組みに巻き込まれますので、まずは、どんな社員でも変革への前向きな意識を醸成し心理障壁を下げるというマインドセットを形作っていくことが第一段階として必要です。

その中から、変革人材の働き方に適した人材をピックアップして変革専門人材として育てていくことが第二段階です。そして、経営人材は長期的な変革と短期的な業績の創出の両方をバランスよく見れる必要があります

いずれにしても、ビジネスアジリティを実現しようと思うのであれば、“人”をしっかりと捉えるころから逃れることはできません。

LTSが社会に提供する価値

LTSでは様々な活動をお客様にご提案し、取り組みをご一緒しております。その一次的な目標は、一つひとつの目標をしっかりと完遂することです。同時に、それぞれの取り組みの裏側にあるもう一つの大切な目標が“取り組みをご一緒にすることで、お客様の組織の中に変革人材を育てる”ことです。

人が育つ場は一方的に何かを教え込む場ではなく、所属や立場、年齢を越えてお互い学び合うことができる場であると思っています。私たちLTSは、変革を生業にしているプロフェッショナルとして、様々な経験・知見を提供することによってお客様の議論をより広がりと深みのあるものにすることが期待されていますし、今後もそのような役割を果たしていきたいと考えています。

LTSのミッション

私たちLTSは、2021年にミッションを更新しました。更新されたミッションは、『“可能性を解き放つ”~人の可能性を信じ、自由で活き活きとした人間社会を実現する~』という、私たちの意思を簡潔に表現したものです。

自由で活き活きとした人間社会とは、命令や強制ではなく個人の自発的意思から物事が始まる社会、組織を越えた人々のネットワークがお互いを支える基盤となっている社会、感性や価値観を尊重されている社会、未知への挑戦が奨励され支援される社会です。

この『社会』という言葉を『企業』に置き換えれば、まさにビジネスアジリティを得ようとする企業が持たなければならない価値観です。そして『社会』という言葉を『人材』と置き換えれば、それは変化に立ち向かう人材、変革人材が持たなければならない価値観です。

私たちが変革人材を育て組織の変化を促していくことは、その先で“自由で活き活きとした人間社会を実現する”ということにつながっています。

そのためには、個々の変革の取り組みを成功させることも大切ですが、それ以上に変革を通して取り組みの意思と能力を持った個人を育てることが、もっと大切だと考えています。

そして、そのようにして育った個人がそれぞれの組織の枠組みの中で活躍し、さらに組織を越えてお互いに連携することで、より大きな価値や成果を作っていくところまでたどり着きたいと思っています。そのようにして生まれた成果や価値が、個々の組織の成功に寄与することが大切だと考えているからです。

ですが、本当に目指しているのはその先の社会の変化です。個人の変化をトリガーとして組織を変え、その先で社会を変えていくことは、決して簡単なことではありませんが、それでも私たちLTSは、明日が今日よりも、一歩でも、少しでもよりよい世界になるように、これからも皆さんと様々な変革の取り組みをご一緒していきたいと考えています。

これからもLTSをどうぞよろしくお願いします。


ライター

Yuno(LTS CLOVER編集部員)

CLOVER編集部員。メディアの立ち上げから携わり、現在は運営と運用・管理を担当。SIerでSE、社会教育団体で出版・編集業務を経験し、現在はLTSマーケティングGに所属。趣味は自然観賞、旅行、グルメ、和装。(2021年6月時点)