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LTSの「自己研鑽・ボランティア休職」制度、最大の目的は社員のキャリア充実

山本 行道(LTS ビジネスマネジメント本部 本部長)

IT企業を経て、LTSに入社。各種コンサルティング案件や海外事業に携わる傍ら、執行役員として自社の組織・人財マネジメントプロセスを中心に、コーポレート機能全般を担当。社外では大学非常勤講師や、NPOのパートナーも務める。3児の父。(2021年11月)  ⇒プロフィールの詳細はこちら

みなさん、こんにちは。LTS人事部長の山本行道です。

LTSには「自己研鑽・ボランティア休職」という休職制度があります。その名の通り、自己研鑽やボランティアのために休職できる制度です。これには、付与から2年で失効してしまう有給休暇を有効活用したいという背景がありました。

この記事ではこの制度の制定背景を、次回以降の記事で、実際にこの制度を活用し海外青年協力隊に参加している社員の月次レポートを紹介します。

「自己研鑽・ボランティア休職」とは

LTSの休職制度のうちの一つで、自己研鑽またはボランティア活動を行うために休職を希望する場合に利用できます。

まず、自己研鑽休職とは、仕事の成果につなげることを目的とした自己研鑽のため、会社が認めた期間、休職し、留学や通学に専念することをいいます。

次に、ボランティア休職とは、社会における課題解決を目的としたボランティアに参加するため、会社が認めた期間、休職し、ボランティア活動に専念することをいいます。ボランティア活動とは、公共の福祉の推進に資する活動(宗教、思想、政治に関するものを除く)であって、その対象は、(1)地域貢献活動(2)教育支援活動(3)社会福祉活動(4)自然・環境保護活動(5)国際協力支援活動(6)災害地域復興支援活動、としています。

適用対象者は、正社員で勤続5年以上かつ健康状態が良好であり、休職取得後の勤務を継続する意思のある者と定めています。

この制度を利用するには、休職を開始日とする日の3か月前までに、参加する団体などの証明書類を提出し、所定の手続きにより休職の目的や開始・終了時期などを申し立て、会社の承認を得ます。その後、人事部長との面談実施の後、会社として休職制度適用の可否を決めます。

LTS人事部長の山本行道

制度の制定背景は有給休暇の有効活用

この制度を設けた背景としては、有給休暇の有効活用があります。LTSでは付与された有給は2年経つと消滅してしまうため、繰り越したいというニーズがありました。それを、特別積立休暇「付与日から2年を経過し失効した年次有給休暇は、30日を限度として特別積立休暇として積み立てることができる」としました。特別積立休暇の行使は、年次有給休暇を全て消化した後、ボランティア等の社会貢献活動、計画的な自己啓発、私傷病による療養、家族の看護・育児・介護(2親等以内)に限り認めています。

しかし、上記のように定める目的以外にも、海外留学などの自己研鑽に使いたいという声が社内で出ていました。そのため、有給休暇をもっと使い勝手良く利用できないか検討していました。

検討しているのと並行で、社員がセキュリティに関する資格取得や、武道の師範になるための修行や、海外で勉強するために休職したりする事例が出てきました。これらはボランティアではないため、単純な休職として取り扱っていました。その中で、ある社員から「中長期的に私的な目的で業務を離れたい」という相談がありました。その本人の選択肢としては、会社を辞めることが第一のものとして上がっていました。

ただ、広く社員のキャリア充実という観点で経営を考えた際に、直接的に業務につながることではないチャレンジだとしても、業務にまつわる何かが豊かになるのであれば、それはいずれどこかで何かが会社に返ってくるものであって、周囲のメンバーにいい影響を与えるものではないかと議論をしました。そのためにも、辞めなくていいような枠組みを会社として作りたいと考えました。

当時私も有り余る有休を使い、数か月間石巻に災害ボランティアに行ったこともありましたが、そのようなボランティアやMBA取得などの自己研鑽のために時間を使いたいというニーズが社内に出てきたタイミングでもあり、そこに会社として応えていきたいとも考えていました。

最大の目的は社員のキャリア充実

会社にとって唯一にして最大の資本は人財です。その人財、個人のキャリアが充実することは、中長期でみると必ず会社に返ってくるものです。そこがこの制度の最大の目的です。これは建前のようで本音です。

もう少し現実的な目線に落とすと、この制度を設けることにより社員の選択肢の中に「辞めなくてもよい」という選択が生まれます。これは会社としても人材確保につながりますし、社内でも「自分もそういうことが可能なんだ」「辞めないという選択肢があるんだ」と、安心感や信頼感を持ってもらえるといいなと考えています。

その一方で、普段の業務を一生懸命頑張っている人からすると、自分が頑張っている現場とは別のところで自分のやりたいことをやってくる人がいる…それって不平等じゃないの?と思う人もいると思います。実際にこの制度を制定する過程でそういう懸念もありましたが、実際にはチャレンジする人をみんなで応援していきたいという想いのほうが強くありました。

そして、LTSの会社としてのフェーズも成長したなと感じます。自己研鑽できるくらい会社として余裕がある、そういう個人のキャリア開発活動を許容できる、積極的に応援できるフェーズに会社がいるんだと改めて思いました。

個人的に、人のキャリアは一直線ではないと考えています。そもそも人は、社会の中で役割を果たさなければいけない複数の場を同時に生きています。人生の節目とは、そのポートフォリオを変えるタイミングのことなのかもしれません。役割ポートフォリオにはいくつかの段階があり、それぞれの役割もどんどん変化していく。その変化に応じて会社の中と外を行き来する、ボーダレスな動きができればと考えています。個人がキャリアを築いていく上で、その動きができるよう会社として保証したい、場を提供したい、そういう想いが根底にあります。

LTSの人財戦略の一つに、「バウンダリレス」という考え方があります。会社の中と外、そこには明確なバウンダリーがある、雇用契約という厳格な線がある、とは考えない考え方です。「バウンダリレス」にも2種類あって、一つは、スペクトラムというかグラデーションというか、境界の曖昧さを意味し、もう一つは、越境というか軽やかな移動というか、往来のしやすさを意味します。

なにかしらの“公に対する思い”でつながるいろいろな組織やコミュニティに同時に所属していて、局面局面で自分の時間を使い分けていく、また、会社と個人の“信頼関係と共有ビジョン”を基盤として所属をカジュアルに変えていく、個人と組織の新しい関係のカタチはこのようなものではないでしょうか?

人生は、人や場と出会うことで豊かになっていくと思うので、社員の新しい出会いの機会を、会社の事業ドメインや組織キャパシティで制限したくない、と思います。
一つの出会いはまた新たな出会いへとつながっており、そうしためぐり逢いが仕事での創造性や人生の彩りを生んでいく。

LTS人事部長の山本行道

事例:海外青年協力隊でガーナへ

ここからは実際にこの制度を使い、海外青年協力隊の一員としてガーナへ行った社員の紹介をしたいと思います。

池田さんは2015年に新卒入社され、入社後は大手自動車会社にてBPO業務の業務プロセス運用・改善の長期プロジェクトに従事されていました。その後、自社の新卒採用・新入社員研修の企画・運営など社内プロジェクトを経て、課題整理・プロセス可視化等の業務分析プロジェクトを複数経験されています。

そして、2022年1月から休職され、現在はガーナにいらっしゃいます。

池田 愛子(LTS コンサルタント)

2015年にLTS入社、大手自動車会社にてBPO業務の業務プロセス運用・改善の長期プロジェクトに従事、その後、課題整理・プロセス可視化等の業務分析プロジェクトを複数経験。2022年1月から自己研鑽・ボランティア休職を取得し青年海外協力隊としてガーナで奮闘中。(2023年2月時点)

―――海外協力隊へ行きたいと思い始めたきっかけや想いを教えてください。

小学生の頃に社会科で見た途上国の映像がきっかけです。途上国に暮らす同年代の子供たちが学校に満足に通えない、ご飯を十分に食べられない状況にあることを知り、その日はショックで給食を食べられませんでした。周りの友人はいつも通り楽しそうに過ごしている様子を見て、周囲との温度差を感じ、強いショックを受け、この状況を変えられるような大人になりたいと強く思うようになりました。

その後、自分に出来ることは何かを模索する中で、途上国に住み、草の根レベルで支援を行っている海外協力隊という仕組みを知り、漠然と将来参加することを夢描いていました。

大学卒業後の進路として協力隊に参加することも考えていましたが、学生時代にタイの貧困地域でボランティアを行うサークル活動に参加した際にスキル不足を痛感し、まずは社会経験を積むことを優先しました。特に「現地の人が本当に必要とするものをヒアリングする力、ビジョンを描く力、人を巻き込む力」の重要性を感じ、LTSでこれらのスキルを身に着けられると感じ、入社を決意しました。

入社当初は、3年間コンサルタントとして働いたのちに協力隊に挑戦すると決めていましたが、自身が理想とするレベルにはほど遠く、結果として入社後5年が経過してから応募に向けて動き出しました。

―――海外協力隊へ行くと決めた際、「自己研鑽・ボランティア休職」という制度を選択した理由を教えてください。

当時、社内で自己研鑽を理由に休職された例は最高でも半年だと聞いていました。そのため、協力隊の任期である2年間休むとなると退職せざるを得ないのではと考えていました。一方で協力隊が終わった後の人生を考えた際に、日本のみならず世界の社会課題を解決するような仕事をしたいと思うようになり、LTSでそれが実現出来ればと思っていました。

そんな中で当時の上司と1on1で今後のキャリアについて話をしたところ、親身に応援して下さり、人事部長の行道さんに相談してみるようアドバイスをもらいました。まずは、お酒が入った席での相談を試みたところ「とても素敵じゃないですか」と言っていただき、後日改めて相談した結果、ちょうど会社としても制度の見直しを検討していたタイミングということもあり、休職扱いでの参加を認めていただけることになりました。

―――LTSの社員や、LTSへの入社を考えている方へのコメントがあればお願いします。

就職活動中に採用担当であった太田さんに将来のビジョンを相談する中で「池田さんがやりたいこと、全部LTSで実現できそうですよ」と言ってもらい入社を決意しました。今回の挑戦を周囲の人に相談した際、誰もが私の挑戦を前向きに受け止め、実現に向けたサポートをして下さいました。

実際にこのように休職という形で温かく送り出していただき、改めてLTSに入社を決めた決断は間違ってなかったと思いました。一年後、帰国した際にはパワーアップした姿で会社に恩返し出来るよう残りの期間もサハラ砂漠の砂埃に負けずに頑張ります!

ちなみに、ガーナのクリスマス・お正月はごちそう(ヤギ肉・ネコ肉・ネズミ肉等)を食べ、教会でオールをするというような過ごし方でした。お正月明け、既に学校が始まっているのですが、例年以上に早い乾期入り+生徒数が増えたことで休暇前に学校の貯水槽の水が尽きてしまいました。生徒は毎日往復20分×3セット、水源まで水を汲みにいかねばならず、水がないから生活が出来ないという理由で生徒が学校に戻ってきません・・。

私自身、水の確保に毎日頭を悩ませているそんな年明けです・・。日本では、強烈な寒波が流れ込んでいるとのことですので、体調等崩されませんようご自愛ください。


次回以降、池田さんが提出くださるガーナからのお便りをご紹介いたします。とても刺激的で興味深い内容です。お楽しみに。


エディター

大山 あゆみ(LTS コンサルタント)

自動車部品メーカーにて、グローバルで統一された品質管理の仕組みの構築・定着化を支援。産休・育休を経て、CLOVER Lightの立ち上げ、記事の企画・執筆を務める。現在、社内システム開発PJに携わりながら、アジャイル開発スクラムを勉強中。Scrum Alliance認定スクラムマスター(CSM)、アドバンスド認定スクラムマスター(A-CSM)、Outsystems Delivery Specialist保有。(2023年12月時点)