このコラムは、株式会社エル・ティー・エスのLTSコラムとして2018年12月に掲載されたものを移設したものです。
LTSでは、これまで数年に渡って海外スタートアップ/テクノロジー企業を視察・ディスカッションを実施してきました。今回のセミナーでは、これまでのグローバルのテクノロジー企業とのディスカッションやプロジェクト経験を基に、日本企業へのAI/テクノロジー導入を取り巻く課題・今後の可能性について紹介しました。
今回はセミナーの内容を前編と後編の2回に分けてご紹介します。前編では、海外企業の視察・ディスカッションから感じたトレンドと海外のスタートアップと協業する際に注意したいポイントを、後編ではテクノロジーを上手く活用していくために必要な人材と人材の育成、組織に求められる変化について紹介していきます。
AI活用がソリューションの前提に
2015年から2018年の4年間に渡り海外企業の視察・ディスカッションを繰り返す中で様々なトレンドや変化がありました。その中からいくつかご紹介すると、まず大きな変化として、大半のスタートアップ企業では、どのアプリケーションやサービスにも“AIがある”ことが前提でビジネスの組み立てがされており、AIの技術が注目され始めた時よりも各業務領域に特化したアプリケーションが増えてきている印象でした。
デジタルマーケティングでは、3年前は各ソリューションにAPIが付いていて、外部サービスとの連携や機能の組み込みを簡単に行うことができるという点を訴求しているベンチャー企業が多い印象でしたが、昨年からは“つながる”ことと、各ソリューションにAIが付いていることは前提で、そのデータをどう活用していくかがテーマとなっていました。
またRPAでは、ツールが出てきた当初は自動化(人よりも圧倒的にコストが削減できるという点)が注目されていましたが、今年になるとAIと連携をすることで自動化機能を拡張できる点や、PCの自動化だけでなくモバイルの自動化など、自動化の多様性に注目が集まっています。
海外ベンダと協業する際の注意点
既日本企業が海外スタートアップ企業と協業する際に、大きく分けて「日本市場ファーストではない」ことと「日本と海外のビジネスの差異」の2点をあらかじめ理解しておくことが必要です。
日本市場ファーストではない
日本市場のとらえ方
- スタートアップとの協業は英語圏が中心
- 欧州やイギリス、オーストラリアでは言語コミュニケーションの壁がなく案件がスムーズに進むため、日本企業よりもハードルが低い
- ツールのインターフェースが日本語用にカスタマイズされていないことが多く、言語の壁がある
- 2017年に中国が国別のAI投資額において米国を超え、中国の市場規模の大きさがスタートアップとして魅力も大きく注目が高まっている
日本と海外ビジネスの差異
投資判断の軸
- 日本企業は計画と予算ありきで、予算内でできることを実施
- 海外企業はある程度の予算はありつつも、上手く進めば追加、目標達成できていないならストップなど、成果に応じたて柔軟な投資を行う
- 日本企業の投資の考え方を踏まえると、AIのような導入後徐々に効果が出てくる投資に対して、どの時点のAIの性能を基準にROIを判断するのかが難しい
- AIの特性を加味すると、日本企業のIT投資の考え方を変えていかなければ積極的な投資は難しい
契約・サービス品質の前提
- 日本企業が当たり前と考えているサービス品質を求めても対応できない
例)AIエンジンは海外企業が持っているサーバーを使うのが前提で、国内への移設に応じてもらえない
例)海外スタートアップでは細かいログ管理をしていないため、日本企業が求めるレベル感との差が生じている - 学習したAIなどの知財はどこの企業に属するのかなど、契約関連が非常にシビア
プロジェクトの進め方・役割分担の前提
- 日本のIT人材の特徴として、約7割※がベンダ企業に所属しておりユーザ企業には約3割しかいないため、IT導入プロジェクトはベンダ中心で進行するスタイルが多い
- グローバルの企業は、IT人材の所属割合が日本と逆で、ユーザ側にIT専門家がいるという前提で対応してくる
- ユーザ側にもベンダ側と対等な立場で案件を進められるITの専門家が必要
日本企業も自社に不足しているテクノロジーをビジネスに取り込みグローバルで競争力を獲得していくためには、国内問わずテクノロジーベンダと協業していくことが求められます。
後編では、テクノロジーを活用するために日本企業に必要な変化と人材、人材の育成についてご紹介していきます。
ライター
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