「繁栄し続けるコミュニティーには、しっかりとした教育インフラが存在する」「人を採用し育てられる会社でなければ、LTSは100年企業になりえない」との覚悟を決め、LTSは2008年に新卒採用を開始しました。
当時50名足らずの社員数に対し、新入社員18名が参画。現場からは不安の声も上がったそうですが、当時のビジョン「日本初、世界に通用するプロフェッショナル・サービス会社として、100年以上輝き続ける」を土台に、大きなチャレンジに取り組みました。
現状に満足していない、もっと成長していきたい、と思っているからこその悩み
太田:
2008年卒の新卒1期生・2009年卒に新卒2期生が参画した矢先、リーマンショックの影響を受け、2012年卒まで新卒採用活動を停止した時期がありました。空白の世代が生まれた影響は小さくなく、経営陣の皆さんからは「どんなに苦しい時期であろうと、新卒採用は止めずに歩もう」という言葉を伺うようになりました。経営のテーマの中に、“採用”を常に中心に置いてくださっている。こういうところが、LTSらしいところかなと思います。
その新卒採用も、近年大きな変化の時期を迎えています。 2008年当時50名だった組織も、今では“2030年にアジアでブランド力のある会社を創っていこう”というビジョンを掲げ、2030年にはグループ全体で3000名を超える規模感を目指すステージに成長してきました。将来の話や組織の規模感だけでなく、これまでの道のりで、東証一部への上場や、シナジーの効いた事業拡大が複数進んだことなど、様々な成長がありました。そうした背景から、採用における人材像やメッセージは大きなメジャーチェンジを必要としている感覚が非常に強いです。
上野:
学生さんを取り巻く外部環境も大きく変化したと思います。私が就活していた2008年当時、コンサルティング業界は一応人気業界ではあったものの、情報量はまだそれ程多くありませんでした。2007年にiPhoneが登場して、それ以降スマホが普及しましたが、今のようにネットで口コミを調べて、SNSも活用して…という就活スタイルはそれまで一般的ではなくて。それがいまや、コンサルに関する情報が溢れていますし、新卒の就職先ランキング等を見ていてもコンサルティング業界の人気が過熱していることが見て取れます。また、業界内の主要企業が事業成長を求めて採用意欲旺盛なこともあり、これらは採用戦略上見逃せない変化です。
太田:
他業界・他業種企業が採用職種にコンサルタントを打ち出すことも増えました。
聞いている限りビジネスモデルに変化はないようですが、金融や人材系の採用競合が「コンサルティングを始めました!」と発信していて、学生さんも「そこでもコンサルできるなら」と決断していく場面があります。営業等の職種であってもコンサルタントという言葉が選択されていて、言葉に宿るイメージばかりが先行してしまっている現実も感じます。
上野:
私たちの世代までは、コンサルタントといえば転職して就く職業というイメージもあり、周囲からは「なぜ新卒でコンサルティング会社に入るの?」という反応だった記憶があります。でも今は「とりあえずコンサルティングに行けば安心」という雰囲気があるようです。
このあたりは時代の違いを感じますね。事業や仕事内容についても、自分の場合は「よく分からないけど、なんか面白そう!」と思って入社を決めましたが、コンサルタントを目指している今の学生さんは全然違うようです。大学1,2年生の時からコンサルティング会社に関する情報を得ていて、ゼミや授業でそういう企業の人とも接点持っていて、SNS等の情報に触れた上で、コンサルティング会社を選んでいるんです。だいぶ様変わりしたな、という印象は持っていますね。
太田:
そうですね。そうした背景からか、学生さんと会話していて感じるのは「コンサルティング会社はどこも同じではないか」「そうであればとりあえず大きい有名なところが安心なのではないか」という反応の多さです。時代の不確実さから仕方のないことかもしれませんが、安定・安心についての関心が高まっているように思います。不安を押し込める必要はありませんが、仕事の面白さや良い社会に繋がる仕事に携われるかといった観点でも、学生さんが納得できる考えを示していく必要を感じています。
上野:
改めて今、会社のフェーズや外部の環境を見てみると、採用戦略をもう一度練り直す必要があるなと感じます。特にLTSという、価値を生み出す源泉が“人”の会社においては、“経営戦略=採用戦略”が同義です。これまでは過去の成功体験や、うまくいっているイメージの中で過ごしてきてしまっていたところがありましたが、中期経営計画をしっかり議論して、ミッション・ビジョンを確認して、改めて「素晴らしい人材を採用することがLTSの成長の最重要課題」という流れに会社がなってきたということだろうなと思います。 これまで通りの採用規模であれば、何か大きなことを変える必要はないかもしれません。ただ、私たちが目指しているのは2030年の社員数3000名・アジアでブランド力のある会社という姿だからこそ、採用にもっと真剣に向き合って取り組まないと、というモードになっているんですよね。現状に満足していない、もっと成長していきたい、と思っているからこその悩みです。
ミッションやビジョンがあり、それを社員みんなが一貫して語れていることの強さ
上野:
採用のメッセージを考える中では「この会社って何だろう」と改めて考えさせられています。お客様とは違い、ビジネス経験を持たない学生の皆さんに“LTSは他の会社と何が違うのか”を感じてもらうのは、別の視点が必要で、本当に難しい作業だなというのを改めて感じています。
その中でも、ミッションやビジョンがきちんとあって、それを社員みんなが一貫して語れていることの強さをとても魅力に感じています。加えて、LTSでは個人の成長を語る場面のメッセージが、コンサルティング会社にしては長い時間軸だな、と思います。私たちは目線がいつも10年先なんですよ。10年というスパンの中で経験してコンサルタントとして一人前・一流目指して成長していく、簡単ではないけどそういう一流のビジネスパーソンとして成長していくのっていいよね、というお話をしています。よく他のコンサル会社で「3年で一人前」と言われますが、そんなに甘い世界ではないし、本当に3年で一人前になれるような仕事であればそれはコンサルと名のついた別の仕事です。お客様の経営の課題を解決するという、非常に難易度が高くて価値の大きな仕事を目指すのであれば「3年でここまでできればOK」ではなくて「10年くらいの時間軸で目線を高くしつつ、じっくり一歩一歩成長していきましょう」そういう地に足付いた捉え方を、しっかり受け取ってくれる学生さんにメッセージを届けたいと思っています。
太田:
そうしたミッション・ビジョンを土台の1階とすると、2階・3階の位置づけになるメッセージの種は、以前より明らかに豊かになってきているのですが、どの切り口を魅せていくべきか悩むこともとても増えました。
上野:
多様なメッセージを出して、何か1つでもいいからその人の心にちゃんと届いて、LTSを選んでもらえるようにしたいですね。
強力なファーストインプレッション、若手役員が新卒に直接語る効果
太田:
役員として上野さんには、去年の最終選考で、結構な回数を対応いただきましたね。今年は選考だけではなく、説明会にも加わっていただいていて、特に3~4月あたりは毎週のように来ていただいていました。なので、上野さんが声を枯らしてしまった原因は採用にあるんじゃないかとおもっていますね…(笑)。(※この対談の際、上野は声が枯れ気味でした)
上野:
自分の感覚としては、採用はショータイムですよ(笑)。今年の3月くらいから、説明会や座談会で出させてもらうようになると、色々感じることがあったり、もっと言葉を磨いた方がいいかなと考えたりするようになりました。
太田:
価値観や言葉そのものが学生さんに届いている手応えは勿論ですが、アンケートを見ていると「この会社は採用に本気なんだなと思った。」という反応があります。これは人事部員だけで行っている中では無かったもので、個人的には「届けたいものが届いた!」と心の中でガッツポーズしています。
上野:
嬉しいですね。今私が出ている説明会は、本当の入り口の入り口なんですよ。そこでの自分の中のゴールは、“興味を持ってもらって選考に進んでもらう”ということ。これを念頭において、3つ意識しています。
1つ目は、LTSのミッション・ビジョンだけでも覚えてもらうということ。2つ目は、話している私の雰囲気が「なんか楽しそうだな」と思ってもらうということ。3つ目は、候補者である学生さんの関心が様々だからこそ、たくさんのメッセージを伝えて、響くところを見つけやすくすることです。
太田:
2つ目については、印象深い回があります。上野さんがお客様との打ち合わせ直後に説明会参加くださって、「ついさっき、すごく嬉しい打ち合わせがあったんです!」と高揚感を持ってお話されていた回は、学生さんの言葉として「お仕事を本当に楽しんでいらっしゃることが伝わってきて、すごく魅力的な会社、仕事なんだろうと思いました。」という声がありましたね。オフラインと変わらない、熱の伝播を感じました。3つ目の、たくさんのメッセージを伝えるというところ、毎回様々なお話をいただいていますね。
上野:
いろんなエピソードをあえて沢山伝えています。何か1つでもその人が気になっていることに響くといいな、と思うからです。海外の話、ベンチャーの話、コンサルの話、ワークライフバランスの話…それが、ある人にとっては「この会社、海外の仕事にもチャレンジできるんだ」とか、「この会社、コンサルティングだけじゃないんだな」、「この会社だったら、戦略やれるんだ」と引っかかりができて、とにかく1つでも残れば次にいけるかなと。そういう雰囲気作りが、説明会における私のパートの役割だと思うんですよね。
太田:
結局、LTSがその候補者にとってユニークな存在になるには、候補者に好意を持って特徴を2つ、3つと覚えていってもらうことが欠かせません。特徴も、1つだけなら他の会社でも同じことが言えるかもしれませんが、2つ3つ4つと掛け算で加わっていくと、いつの間にかその会社がその候補者にとって特別な存在になるのだと思います。
そういう面から見ても、候補者にとっての可能性の拡がりを、序盤の説明会で役員の方が熱く示してくださるというのが、新卒採用にとっては非常に心強いです。そのインプレッションを上野さんに担っていただいているんですが、本当にすごいんですよ。みなさんに見ていただきたい。わたしは毎回オブザーブで入らせてもらっていますが、ほんと役得だなあと思いながら聞いています(笑)。すごく入社したくなりますよ。
上野:
そう言ってもらえて嬉しいです。その先の訴求は、今まさに太田さんと作戦立案中ですね。ここから本当に大事になるのが、実際に現場でサービスを提供している社員の皆をどこまで巻き込んで、局地戦をどう展開していくかというところです。まさにこれから考えていかなければいけない課題ですね。
…後編へ続く
ライター
自動車部品メーカーにて、グローバルで統一された品質管理の仕組みの構築・定着化を支援。産休・育休を経て、CLOVER Lightの立ち上げ、記事の企画・執筆を務める。現在、社内システム開発PJに携わりながら、アジャイル開発スクラムを勉強中。Scrum Alliance認定スクラムマスター(CSM)、アドバンスド認定スクラムマスター(A-CSM)、Outsystems Delivery Specialist保有。(2023年12月時点)